ペイル・ブルー・ドット キン、とジッポを開く音が無音の室内に響いた。
咥えた煙草の先に火を付け、深く息を吸う。存分に肺を煙で満たしてから、また吐いた。敢えてゆっくりと、時を焦らすように行ったその行為は、ともすれば激情に駆られそうになる銃兎自身の為であった。銃兎はこの場所へ、怒鳴りに来た訳でも、喚きに来た訳でも、ましてや喧嘩をしに来た訳でもない。黒を基調に統一された室内の奥、壁に飾られた”不撓不屈”の文字。そのすぐ傍に、一振りの日本刀。あの刀が模造刀ではないことはとっくの昔から知っていた。
左馬刻の事務所で、この部屋の主は持ち主の為の革張りのソファに腰掛けて、行儀悪く足をデスクに乗っけていた。銃兎の一連の行動を見やると、とっくに火を付けていた煙草を吹かす。そして、「機嫌悪ィな、じゅーとぉ」と呟いた。
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