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    Nel

    @BengnuihDia

    織歌だったりネルだったり空沢だったりする虚無(Nel)。

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    Nel

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    3個並行して書いてるライチルの1つ。

    チェンジリング ライチル進捗 目が覚めるとチルチャックが大きくなっていた。
     どこかでチェンジリングを踏んだのか、おそらくトールマンであろう姿に。
     おそらく、というのは前回トールマンになった時と今回とで外見年齢が違うからだ。だから、もしかしたらトールマンではなくトールマンに近い他の人種なのかもしれない。
     前回はトールマン年齢で五十代前後だったチルチャックだが、今のチルチャックはライオスとそこまで変わらない姿をしていて、トールマン換算で凡そ三十歳前後。ほぼチルチャックの実年齢と変わらない見た目をしている。

    「俺達は姿が変わってないから、チルチャックだけが踏めたような小さなフェアリーリングだったのかもしれないな」

     眠っているチルチャックを見つめながらライオスはマルシルとセンシに呟き、その額に手を乗せる。

    「やっぱり熱が出てる。水を汲んで来よう」

     チェンジリングによる肉体の変化にはインフルエンザの時のような痛みと熱が伴う。
     胞子を洗い流すのは彼が目覚めて体調が戻ってからにするとして、身体を冷やすための水と、汗で流れた分を補給するための水が必要だった。
     革の水筒と煮沸用の片手鍋を持って立ち上がり、行ってくる、と云おうとした瞬間。

    「ライオスよ、ただの水を飲ませるより塩と砂糖、柑橘類の汁を加えて経口補水液の代わりになるものを飲ませた方が良い。わしが準備をするから、お前さんは着替えの方を頼む」

     センシがライオスを制し、わしやマルシル、イヅツミではトールマンサイズのチルチャックを着替えさせることはできん、と革袋と鍋をその手から取る。
     確かにその通りだと思い至り、分かった、と頷き荷物の中から今のチルチャックが着れそうな自分の服を探す。
     そうしていると、センシはマルシルとイヅツミの方を向き、「マルシルは火の準備を。イヅツミはわしを手伝ってくれ。飲み水と身体を拭くための水が要る」と彼女たちにも指示を出した。

    「うん。すぐに準備するね」

     マルシルはすぐさま石畳に熱を熾すための魔法陣を描きつけるが、イヅツミは「うぇ、何で私が……」と嫌そうな顔をした。
     しかしセンシも随分とイヅツミの扱いに慣れてきたのか、それでは今夜は一人で眠るのだな。さすがに熱を出したチルチャックの寝床に潜り込ませるわけにはいかない。多少寒くても我慢するのだな?」と云って、ならば仕方ない、と大仰に溜息を吐いて見せた。

    「え、」
    「当たり前だろう。チルチャックは今熱があるのだぞ? それに身体にはチェンジリングの胞子がついている。同じ場所で眠るだなんて言語道断」
    「それは困る! 迷宮内は私には寒くて一人じゃ寝られない!」
    「では今日はマルシルのところへ入れてもらいなさい」
    「夢見が悪いと云ったはずだ!」
    「ならばチルが早く回復するよう手伝いをするのだ」
    「うー……」

     何度か押し問答を繰り返しながら、チルチャックという抱き枕兼湯たんぽを失うのは死活問題とイヅツミはしぶしぶ革袋を受け取る。そして鍋を持ったセンシと共に水場へと向かった。
     装備は全滅したところである程度回収したし、自分の下着以外にも何着か自分の服やシュローの服があったためそれで何とかしようと思ったのだが、シュローよりもライオスの方が身長が高い。尚且つ、トールマン? になったチルチャックはさらに身長が高かった。

    (丈が不格好になりそうだなぁ。まあ無いよりはマシか)

     身体中にびっしりと浮いた汗と冷や汗を布で拭い、破れた服の残骸を取り除いてライオスの予備の服を着せる(身長はライオスよりも高いが、やはり前回の時と同様ガリガリであばらが浮き、服の残骸を取り除くために抱えた身体は軽かった)。
     その際に、ちらりと右の臀部に魔術紋のようなものが見えたが、専門じゃないためよく分からない。マルシルを呼ぼうにも場所が場所なため一旦保留にする。目が覚めたチルチャックに聞いてみてからにしよう、と。
     そうして着せ終えると、身幅が薄いため胸や腹部分はスカスカのブカブカだが袖や足はつんつるてんで、不健康さが際立った。
     鍵師の仕事のために絞っているとは云っていたが、もっと食べさせたが良いのでは? と不安になってしまう。主に内臓機能とかが。

    (後でセンシに相談してみよう)

     そう思っていたところに、水を抱えてセンシとイヅツミが戻ってきた。
     チルチャック用の経口補水液の代用品を作ると同時に片手鍋に湯を沸かし、布を浸して硬く絞ってもう一度チルチャックの顔、手、足、身体と順番に拭いていく。それが終わるとセンシからカップを受け取り、上半身の下に荷物を挟んで上体を少しだけ起こさせ、カップを口元へ。喉が液体を嚥下するのを確認しながら、少しずつ少しずつ中身を飲ませる。
     間に自分たちの食事を挟んだり、身体を拭いたりをしながら、何度かチルチャックに経口補水液を含ませた。
     しかし。

    「一向に熱が下がらないな」

     前回は一晩かけて身体が変化し、変化が終われば熱も下がった。けれど身体が他種族へと変化した後もチルチャックの熱は引かない。それは何故か。

    「う……うぅ……」

     魘されるチルチャックはぐったりとしていて、こうなってくると感染症や別の病気を疑った方が良いような気さえしてくる。そんなことを考えながら、額に乗せていた手拭いを水で絞って再びチルチャックの額に乗せる。
     それを難しい顔で見ていたマルシルが、ねえライオス、と口を開いた。

    「チルチャックから魔力の流れを強く感じる。前回はそんなことなかったのに……。これって本当にトールマン? 似てるけど他の種族ってことない?」

     そりゃトールマンだってファリンをはじめとした魔術を使える人は沢山居るよ。でも今のチルチャックからは種族限界値の更に上……私にも匹敵するか、それ以上の魔力を感じるの。もしトールマンだったとしたら、魔力が濃すぎて身体に害が出るレベルのね。どちらにしろ、今のままじゃ身体の方が先に限界が来ちゃう。だから熱が下がらないのかも。
     うる、と大きな瞳を潤ませて、チルチャックが死んじゃったらどうしよう、と寿命や死に一等恐怖心を抱く彼女はズズ、と鼻をすする。
     その話を聞いて、ライオスは「あ……」と声を出した。

    「マルシル、そのことで君に聞きたいことがあったんだ。最初は回復したチルチャックに先に確認を取ろうかと思ってたんだが、全然回復しないからどうしたものかと思っていて……」
    「え?」
    「その、身体が変化したチルチャックを着替えをさせた時にうっかり見てしまったんだ」
    「何を?」
    「チルチャックの身体に、魔術紋のようなものがあった」
    「はぁーーーー!? えっ、えっ? 何でそれを先に云わないの? 普通・・は身体に魔術紋なんてっ……! っ、場所は何処? 確認する」
    「いや、確認するって云うと思ったから黙ってたんだ。……その、多分チルも見られたくないだろうなって箇所だったから」
    「……? それって?」
    「臀部だよ。普通に嫌だろう? たとえパーティーメンバーとはいえ女性に尻を見られるのは」

     しかも今彼はハーフフットではなくトールマン(推定)だ。
     チルチャックだけでなく、マルシルの方にだって抵抗があるだろう。

    「ゔっ……ゔぅ゙ん゙…………お尻、かぁ……」

     見るべきか、見ないべきか。
     魔術紋らしきものを確認したいと思う気持ちと、確認のために仲間の尻をみるのか? という気持ちの間で悩むマルシル。
     その後ろから、話を聞いていたのかセンシがにゅっと割って入り──

    「身体に魔術紋のような模様じゃと? まるでタトゥリスタ病みたいではないか」

     と口を挟んだ。

    「タトゥリスタ病?」

     はじめて聞く病の名だ。ライオスとマルシルは共に首を傾げながらセンシの方を向く。

    「そうじゃ。とある種族の他種族との混血児だけに発症する病、とされておる」

     純血種には発症しないため、長らく原因不明とされ多くの者が死んでいった。今のチルチャックのように、高熱に魘され、衰弱した結果に。いつまで経っても熱が引かないのはもしや、と。

    「その種族って何? 薬とかあるの? ねえ、センシ!」

     飛びかかるような勢いでマルシルが詰め寄り、センシの手を掴む。
     もし本当にチルチャックがタトゥリスタ病になっていたらこのまま死んでしまうのではないかという恐怖に駆られて。

    「正確に云えばタトゥリスタ病は病ではない。混血を想定していなかったために起きた悲劇というのだろうか。本来の種族『レーヴァテイル』が持つ『レーヴァテイル質』と、人間の持つ『人間質』の相性が悪く、生命力を喰われている状態なのだ」
    「レーヴァテイル……?」
    「そうじゃ。太古の昔、兵器として生み出された人造の種族。道具として作られた種が人間との交配をするとは思っていなかったのだろう」
    「じゃあチルチャックはどうなるの? このままだと死んじゃうの?」
    「待て待て、落ち着くのだマルシル。何百年も前にダイキリティという延命剤が発見されておる。チルチャックがチェンジリングでレーヴァテイルになっておるのなら、ダイキリティを探して投与すれば三ヶ月の猶予はできる」
    「三ヶ月?」
    「さよう。混血のレーヴァテイル……第三世代と呼ばれる者たちは三ヶ月に一度延命剤を投与し続けなければ今のチルチャックのようになって死ぬ」
    「……ッ!」
    「そして純血のレーヴァテイルと混血のレーヴァテイルでは驚くほど寿命が違う」
    「寿命……」
    「純血種は大凡百五十年、混血は正しく延命剤を投与し続けて四十まで生きられるか分からん。投与のタイミングが遅れれば命取りになるし、一度も投与しなかった場合、二十歳まで生きることはできん」
    「そんなっ!」
    「チルチャックの年齢は二十九。レーヴァテイルになっておるなら一刻も早く延命剤を投与すべきじゃ」

    「ちなみにセンシ、延命剤の投与方法というのは?」
    「ダイキリティという鉱石を表皮に浮いた紋様に近づけると体内に吸収される、らしい」
    「らしい、とは?」
    「なにぶん、本物に出逢ったことがないからな。しかし昔重延命剤ダイキリティ軽延命剤トランキリティはこの迷宮の中で見たことがある。特徴的な鉱石じゃから、いくらわしでも見間違いようがない」
    「ではそれを探そう。可能性があるのなら早い方が良い」
    「そうじゃな。そして、見つけたらライオス、お前がチルに投与しなさい」
    「俺が……?」
    「この場で最も適した相手はライオスしかおらん。間違ってもわしやマルシル、イヅツミはやってはいかんのだ」
    「それは、どういう……?」
    「延命剤の投与とは基本的に恋人や伴侶が行う」
    「え?」
    「家族や上司、義務的関係にある者以外が行う場合もあるが、そうでない場合は性交に匹敵する意味合いを持つからじゃ」
    「せっ……!?!!?」
    「この場合、適任なのはパーティのリーダーであるお前さんだけだ。さて、わしはマルシルとイヅツミを連れて延命剤を探して来よう。ライオス、チルチャックの傍についててやってくれ」
    「わ、分かった」

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    Nel

    PROGRESS前にサークルにちょろっと冒頭だけ投げた【落暉街の花魄】(大学生一護とルキアが空環の街に行く話)とは別のパターン。
    私が折ってしまったフラグを強制的に元に戻して欲しくて書こうと思った話。空環市散策して千年マートとか行って欲しいな、って。
    BGMは『空環神社』『空環ノ地圖』『道行きは迷い道』『ヨウサリカ』『不在ノ駅舎』あたりで。
    捻れの街にて(仮)「なー、一護ォ~~【空環駅】って知ってるか~?」

     早い者は受験も終わった高校三年の三学期。自由登校になったとある冬の日のことである。
     久々にいつもの面子が揃っていたからか、啓吾はふとそんな話を振った。

    「空環駅? なんだそりゃ……この辺じゃ聞かない地名だな」

     県内か? と首を傾げながら観光地か何かだろうか、と思考を巡らせるも、やっぱりそんな地名に聞き覚えはなかった。
     すると、啓吾はやっぱ一護でも知らないか~と少しだけ残念そうな声音で云い──

    「空環駅ってのはネット怪談とか都市伝説っぽいヤツ! 少し前に流行った【きさらぎ駅】みたいな!」

     と人差し指を立てて見せた。

    「怪談?」
    「そそそ。黄昏時に空座駅から下り方面の電車に乗って暫くすると、たまに迷い込んじまうことがあるんだと! なんでも、嵯峨野っていうススキ野原に出たら、急に『次は~空環駅~空環駅~』ってアナウンスが流れて停まることがある……とかなんとか?」
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