いつかその身を焦がすまで この本丸の鶴丸には欠陥がある。人に触れられないというのがそれである。
「とまあ、こんな有様になるわけだ」
嫌な驚きを与えたいわけではないんだが、と鶴丸は爛れた肌を見せた。白く美しいはずの肌は、ひどい状態だった。
遠征先で、鶴丸は迷子だった子供の手を引き、肩に乗せて親を探させた。無事に子供を保護者へ引き渡しができてから、鶴丸は顔を顰めて水で肌を冷やしたいと訴えたのである。
「氷があればよかったんだが、この時代には無理だろう」
本丸に戻るか、と尋ねれば、鶴丸はあっさりとそうだなと頷いた。刀を握れないのは困る。任務遂行に支障が発生してしまうのは致命的だ。
「まあ、これについちゃ、手入れしても治らん。自然治癒に任せるしかないんだ。かと言って迷子の子を放ってはおけんだろう。きみに迷子の相手は無理だしな」
からからと鶴丸は笑うが、やはり痛みはあるのかその顔が引き攣っている。
「人間に触れたときだけなのか」
「ああ。刀剣男士は人間ではないからな。何度か試してみたさ。ただ、」
「ただ?」
「刀剣男士は人に近付いてしまう。心を得るとな」
だから、本丸にいる何人かには触れられないんだと鶴丸は語った。あいつらは、ちょいと、人間寄りのなにかになってしまったから、と。
「きみは、その辺、安心だろう。俺に積極的に触れようとはしないし」
きっと人間に近づくこともないだろうさ。
そう、信頼しきった顔で鶴丸は笑った。