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    導入部分だけ 苦しみというものについて考えるとき、大倶利伽羅はある一人の男を思い出す。
     その男と出会ったのは雲の多い、風が強い夜のことだった。雲が途切れ月明かりの下に佇む男のことを思い出すと、大倶利伽羅の奥底で瘡蓋に覆われた傷が痛むような気がした。あのとき確かに大倶利伽羅は苦しみの中にいて、そこから抜け出せそうにはなかったし、抜け出す気も起きなかった。自暴自棄になっていたのだろう。大倶利伽羅にとっては忘れられない苦い思い出のひとつである。あの頃の話を加州清光がいまだに掘り起こすのは、そんな大倶利伽羅の心境を理解してのことだと理解している。
     あの男が大倶利伽羅の傷を癒やしたのかと問われると、それはどうなのだろうかと首を傾げる。あの男はただ通り過ぎるだけの存在だった。大倶利伽羅があの男になんらかの影響を与えることもなかった。あの男と出会わなくとも、おそらく時間が大倶利伽羅の傷を癒やしたことだろう。
     ただ、大倶利伽羅は覚えている。あの日、あの夜、大倶利伽羅が顔を上げた瞬間、目を丸く見開きこちらを見ていたあの男を、きっと大倶利伽羅は自分が折れるまで忘れることはないだろうと思った。
     雲に途切れた合間から見えた満月と、同じ瞳を持つあの男のことを。
     
     掲示板に貼り出された当番表を見ながら、大倶利伽羅は肩を落とした。大倶利伽羅はこの一月まともに出陣の機会が与えられていない。その原因に心当たりがなければ審神者や近侍に詰め寄ることもできただろうが、大倶利伽羅にははっきりとその原因がわかっていて、尚且つ改善の見込みがないことも理解していた。
     一月前の出陣から、大倶利伽羅はまともに刀を握れていない。
    「伽羅ちゃん、ちょっといい?」
     自室へ戻ろうと廊下を歩いていたところに、光忠から呼び止められる。
    「そろそろ衣替えの時期でしょう。今のうちに色々と用意しておこうって加州くんと話をしていてね。春と秋で顕現した刀も多いから不足している分は揃えておかないといけないし。手が空いてるなら、そこらへんの在庫の確認してもらっていいかな。僕は蔵の方を片付けておきたくて」
    「ああ」
     手は空いている。大倶利伽羅はずっと出陣がないし、遠征があっても回数は多くない。内番は交代制で、昨日畑当番だった大倶利伽羅に次が回ってくることはしばらくない。それを光忠も理解しているはずで、けれどこうやって一応は手が空いているかと確認してくる。
     気を使われているのだと、嫌でもわかる。
     それを指摘することなく、大倶利伽羅は続ける。
    「そっちは午後から遠征だろう。蔵の方も俺がやっておく」
    「そんな、悪いよ」
    「去年、暗い中で作業して棚に頭をぶつけて切っていただろう。俺なら暗い中でも目が利く」
    「ちょっと、それ忘れてよ! 本当に恥ずかしかったんだから!」
     光忠が真っ赤になって大倶利伽羅の肩を叩いてくる。とはいえ、そう簡単に忘れられるような出来事でもない。頭だからそれなりに派手に血が出て、その血痕を掃除したのは大倶利伽羅である。
     蔵には電気は通っておらず、基本的に扉を開けて作業する。一応入り口にランタンが置かれているが、すぐ済むだろうとわざわざ点けるのも面倒で、そのまま入り口の明かりだけを頼りに作業することが多い。あのときは確か、蔵の奥に閉まっていたクリスマスツリーを取り出そうとしたのではなかったか。どこへしまい込んでいたのか忘れ手分けして探していたのだが、見つかったよと興奮気味に話す光忠のその言葉が悲鳴に変わったのはすぐのことだ。棚の下の段、奥の奥にしまわれていたツリーを取り出そうとして頭をぶつけて切ったのだ。
     光忠にとってあれは早く忘れたい、忘れてもらいたい恥ずかしい思い出なのだろう。
     それが、少し羨ましい。
     そうやって笑い話にできるような失敗だったなら、良かった。
    「それじゃあ頼んだよ。今日は帰らないけれど、明日のおかずは伽羅ちゃんの好きなものにするから」
    「別に、どうでもいい」
     子供じゃあるまいに。
     大倶利伽羅は光忠に背を向けて歩きだし、今日の予定を組むことにした。最初に、今年春から顕現した刀の確認。新しい布団を購入するにも、今ある布団を打ち直しするにも、ある程度時間がかかる。火鉢や炬燵が必要ならそれも確認しておかなければならない。非番であってもやるべきことはたくさんある。そのことに、ほっとする。
     本当にやるべきことがなくなったら、ただの刀に戻してもらうしかない。その方がいいとも自分でわかっている。けれど。
     ——逃げるだなんて、許さないからな。
     赤い瞳がそれを許さない。強く強く、大倶利伽羅を睨みつけるその瞳から逃げることなどできそうにはない。
     若い男の審神者を主とし、加州清光を近侍に据えるこの本丸は、開かれて三年ほど経つがそれほど大所帯というわけではない。鍛刀が積極的に行われるようになったのもこの一年のことで、それまでは気まぐれに刀を顕現させる程度だった。大倶利伽羅が顕現したのも、去年の秋である。歴史を守るためというのにはあまりにもゆるやかな運営方針にこれでいいのかと呆れることもある。
     蔵へ向かう最中、遠く、門へと向かう加州清光の姿が見える。大和守とともに歩くその足取りは軽快で、不調を抱えている様子は一切ない。ほっと大倶利伽羅は胸を撫で下ろし、首を横に振る。当たり前だ。重傷を負い手入れ部屋に入った加州は、次の日の朝には元気に部屋から出てきたのだから。その身体に傷ひとつ、残っていやしない。
     動けないのは大倶利伽羅の方だった。大倶利伽羅だけだった。
     あの日、誤って加州を斬ってしまい、自分の刀もまともに握ることのできなくなった大倶利伽羅だけだった、
     
     本丸の蔵には二種類ある。備品をしまうものと、食糧をしまうものだ。芋などの収穫が始まる前に食糧庫は整理しておかなければならない。定期的に掃除はしているものの、居住区域に比べればどうしたっておろそかになってしまう。農具なども置いているから毎日出入り自体はしているのだが、重い鉄製の扉を開けてしばらく空気の入れ替えをすることにした。天井近くにある蜘蛛の巣を取り、棚の埃を払う。収穫用の籠に破損がないか確かめ、どうしても駄目そうなものは捨てることにした。去年、栗の収穫をした際に、籠の底に穴が空いていることに気づかなかった光忠が歩くたびに大変なことになっていた。あれも笑い話で済ますことのできる失敗のひとつだ。
     外へ出て一息吐く。少し汗のかいた身体に秋の風が心地いい。無為に自室で過ごすよりは気分転換になったかもしれない。
     戦うことのできない刀剣男士になんの意味があるのか。その問いを何度も繰り返しては、苦しんでいる。刀解を望んだが、当事者である加州に逃げを許されなかったから、ただ置物としてここに在る。せめて遠征などで役に立とうにも、有事の際に刀が握れないのであれば仲間を危険に晒してしまう。
     大倶利伽羅は自分の手を見下ろす。ここ最近、刀を握っていない役立たずの手。
     ひとりきりで戦えたらよかった。そうすれば誰も傷つけずに済んだ。
     そう主張するにはなにもかもが遅い。傷つけてしまった今となっては、ただの言い訳にしか聞こえない。
     震える手で顔を覆う。どうすればいいのか、答えはいまだに出せそうにない。
     
     どれほどその場に佇んでいただろう。
     日が沈むのが早くなってきた。心地よかった秋風は次第に冷たさを増していた。風邪をひいてほかの誰かの手をこれ以上煩わせるわけにもいかない。大きく息を吐き、蔵の扉を閉めに行くことにした。空気の入れ替えには十分すぎるほど時間が経っている。
     そう踏み出した瞬間、なにかを蹴飛ばした気がする。足になにかが当たったのだ。石の感触ではない。目を凝らして周囲を見渡す。夕陽に反射したそれをようやく見つけ拾い上げると、女物の髪飾りのようだった。
    「乱のか」
     硝子なのか石なのか、大倶利伽羅には判別できなかったが、そういったものがいくつか使われている。土台である金具は錆びており、ずいぶん前からここに落ちていたのかとも思ったが、それにしては汚れが少ない。長い間ここに放置されているなら土汚れがつきそうなものだ。
     あとで乱に確認してみようと、ポケットに髪飾りをしまう。空は夕から夜へと移り変わっていた。
     
    「ボクのじゃないよ」
     あっさりと、乱は否定した。
    「でも、誰のだろ。大切にされてるのか、されていないのか、ちょっとちぐはぐだよね」
     乱は大倶利伽羅のてのひらの上にある髪飾りを覗き込む。
     髪飾りは傷だらけで錆もあるが、汚れ自体は少ない。今も使われているようには見えないが、かといって粗雑な扱いを受けているようにも見えない。
    「壊れたものを、大事に持っているままのような」
     乱の指摘に、そうかもしれないと大倶利伽羅も思った。なにかがあってボロボロになってしまったものを、捨てられずに持っているままのような。
    「主さんのだったりして」
    「それはないだろう」
     この本丸の審神者は男性だ。女装をしているような様子もない。
     わかっていないなあ、と乱は指を振る。
    「ずばり、昔の恋人とか。自分を振った恋人を忘れられずに持っている、みたいな」
    「おい」
    「というのは冗談として」
     どこまで本気なのだか。
     大倶利伽羅の手から拾い上げて、乱は照明に翳す。きらきらと、髪飾りの石が反射している。
     自分たちも道具であるから、なにかしら思うところがあるのだろう。今はもう、使われている気配のない物に対して。
    「一回主さんに聞いてみたらどうかな。今日はもう寝てしまったと思うけれど」
     主のもの、という発想がまったくなかったために乱が出陣から帰還するのを待っていたら真夜中になっていた。確かに、話を聞くとするなら明日にするべきだろう。
    「お前が聞いておいてくれ」
     そう踵を返そうとしたところ、無理やり腕を掴まれる。おい、と睨みつけるが、乱も気にした様子はなく大倶利伽羅の手に髪飾りを握らせた。
    「駄目だよ。これ、大倶利伽羅さんが拾ったんじゃん」
    「俺でなくとも」
    「気まずいからって、ボクに押し付けるのはやめて」
     直球の指摘に、大倶利伽羅は推し黙る。
     刀を握ることができなくなった大倶利伽羅に対ししばらくの休息を言い渡した主とは、それ以来まともに顔を合わせることができない。
     まともに戦えない刀剣男士に、戦場に立つ資格はない。
     主はどちらかといえば大倶利伽羅を慮っていてのことだとはわかっていたが、無力感が大倶利伽羅を苛む。気まずさから大倶利伽羅は主がいる前では顔を上げなくなった。主も大倶利伽羅には気持ちの整理をする時間が必要と判断したのだろう。大倶利伽羅の不遜な態度を指摘することもなく、ただ待っているように見えた。
    「まだ、駄目そ?」
     大倶利伽羅の手を、乱が撫でる。子供に見えても、戦うことのできる手だ。
    「わからない」
     正直に、大倶利伽羅は答える。
     自分が再び刀を握れるようになるところを、大倶利伽羅は想像できなくなった。それほどに、遠いものになってしまった。
    「大丈夫だよ。いざってときには、ボクがちゃあんと守ってあげるから。なんたって、ボクは大倶利伽羅さんの先輩だからね」
     そう笑う乱は、この本丸で一番最初に鍛刀された刀だ。この本丸において、近侍である加州清光に次いで強い刀。
     大倶利伽羅を守る理由に、大倶利伽羅が無力だからではなく自分が先輩であるからと主張できる、そんな刀だった。
     
     眠れない。
     布団の中で何度か寝返りを打ったが決して訪れない眠気に嫌気が差し、大倶利伽羅は布団から抜け出した。夜が明けたら主に話しかけなければならないという憂鬱さが眠気を遠ざけているのだろうというのは、内心理解している。
     水でも飲むかと部屋の外へ出る。秋に差し掛かった夜は空気が冷たい。風が強いのか、空の雲が早く流れていく。ぼうっとそれを眺め、ふと思いついて再び蔵へと向かうことにした。散歩するにはちょうどいい距離だ。明かりはないが、打刀の大倶利伽羅は多少夜目が利く。
     主が蔵を訪れることは滅多にない。
     基本、出不精なのだ。運動不足であると日頃から言っているので、乱をはじめ短刀たちに尻を叩かれここ最近は本丸周辺をジョギングしているようではあったが、食糧庫がある場所は足場がよくないためジョギングには向かない。この髪飾りは、本当に主のものなのだろうか。そもそもジョギングするのに持ち歩くようなものでもない。
     審神者という立場のせいもあり、主に女っ気はない。そもそもの出会いの場もほぼなく、審神者になる前もそういう存在がいたかはわからなかった。あまり以前の経歴について主が語ることはないし、大倶利伽羅もあまり興味はなかった。
     審神者と刀。ただ、それだけの関係。
     だからこそ踏み込めないし、踏み込まないでいてくれる。刀を握れなくなったという大倶利伽羅の心境を、ただの人間である審神者が理解できるはずもない。ただそっと、見守るだけで済ませてくれている。
     ありとあらゆることについて、この一月、大倶利伽羅は気を遣われてばかりだ。

     この時間の蔵には、当然ながら人気は一切ない。
     振り返る。遠く、明かりが見える。審神者や刀剣男士が住まう本丸の中心部からこの蔵までの距離はそれなりにあるから、主がここまで来るのはやはり不自然に思えた。
     大倶利伽羅はポケットから髪飾りを取り出す。あまり、高級な品であるようには見えない。市販品だろうか。夜目は利いても流石に暗い中だから、はっきりとは見えない。
     その瞬間、風が強く吹いた。
     目に砂でも入ったのか、痛みが襲う。髪飾りから思わず顔を上げた瞬間、今まではいなかった影が見えた。
     雲が途切れた月明かりに照らされたその影は、白い衣を身に纏っている。幽霊かなにかのようにひどく気配の薄いその男は、大倶利伽羅がよく見知ったものだった。
     金色の瞳を見開いて、その男——鶴丸国永は大倶利伽羅を見つめている。
    「——ッ!」
     腰に手を伸ばし、舌打ちする。刀は部屋の刀掛けに置いてある。そうでなくとも、大倶利伽羅は今満足に刀を握れない。
    「お前は、誰だ」
     低く、大倶利伽羅は問う。その姿も瞳も、大倶利伽羅は知っている。かつて、同じ家に長く共に在った刀だ。けれど。
     ——この本丸に、鶴丸国永は顕現していない。
     明らかにこの本丸にとっての異分子を、見知った仲といえど放っておくわけにはいかない。
     警戒を隠しもしない大倶利伽羅に対し鶴丸はわずかに後ずさったが、大倶利伽羅の手の中にあるものを認め、指を差した。
    「そ、それ!」
     動揺のせいか、うまく舌が回っていない。
    「返してくれ! 俺の、俺のなんだ。大切な、ずっと、探していた」
     その言葉に嘘はないように思えた。
     必死に大倶利伽羅に対して訴える鶴丸は、あちこち土だらけだ。おそらく、膝をついてなにかを探していた。それだけでなく、転んだのだろうか、顔も汚れている。
     大倶利伽羅は悩み、警戒を緩めないまま鶴丸のもとへと歩み寄り手を差しだす。その手のひらの上にある髪飾りをそっと持ち上げて、くしゃりと鶴丸は顔を歪ませた。
     泣くだろうか、と思った。
     自分の手の中に大事そうに抱え込み、鶴丸は俯きその表情を隠す。なにかを噛み締めるかのように、鶴丸はしばらくそのまま動かなかった。
     はあ、と大倶利伽羅は大きく息を吐いた。まるでこちらが悪者ではないか。
    「お前は、いったいなんだ。どうしてこの本丸にいる。この本丸に鶴丸国永は顕現していないはずだ」
     改めて、問い直す。
     まずなにをしても、事情を知らなければならない。この本丸に紛れ込んだのなら、主にも突き出さなければならないだろう。その結果、この男がどうなろうとも、本丸に害を為すなら見過ごすわけにはいかない。それくらいしか、今の大倶利伽羅にできることはない。
    「俺は、ここの審神者の妹に顕現された刀剣男士だ。この髪飾りの持ち主だった子だ」
     顔を上げ、案外あっさりと鶴丸は答えた。
    「妹……?」
    「嘘じゃない。彼に聞いたっていい。彼との付き合いはきみより長いぞ。どういえば信じてもらえる。彼の生年月日とか、好き嫌いでも答えればいいか。さつまいもは焼きよりも蒸しの方が好きとか」
    「それは俺も正解を知らない」
     妹がいるだなんて聞いたことはないが、そもそも大倶利伽羅はあまり積極的に審神者と話をする方ではない。それに——。
     この髪飾りの持ち主「だった」。過去形だ。今はその妹とやらはいないのだと、薄々察することができる。どんな事情かは知らないが、そう話したくない事柄に思えた。近侍である加州や、乱などはもしかしたら存在を知っているのかもしれないが。
    「ちょいと、事情があってしばらく世話になっていた。説明がややこしいし、もともと政府の施設に移る予定だったから俺みたいなやつがいることは内緒にしておこうと決めていたわけだ。変に気を遣わせるのも悪いし、説明するにも面倒で。ただ、暇で散歩していたら髪飾りを落としてしまって」
     鶴丸の視線は再び髪飾りに移る。
    「この数日、ずっと探していたんだ。昼間はこの本丸の刀剣男士に見つかっちまうから出歩くわけにいかないし」
     夜目が利かないのにずっと手探りで探していたのか。
     きみが見つけてくれて助かった。心底ほっとしたように鶴丸はそう言った。
    「本当に馬鹿をやった。普段、出歩くことはないんだが、あと少しでここを去ると思うと気が緩んでな。俺の手元に残しておけるのは、今、これしかないのに。今しか——」
     鶴丸は言葉を区切り、首を横に振った。
    「これ以上はやめておこう。今、この瞬間、俺のあることが大事なんだ。きみのおかげだ」
     大倶利伽羅が警戒したことをわかっているだろうに、それについて触れることなく鶴丸は微笑む。心から感謝した様子に、逆に大倶利伽羅は居心地が悪くなった。
    「礼をしたい。茶でも淹れよう。どうせ、寝られなくて歩いていたんだろう。俺が住んでいる小屋へ案内するから、着いてきてくれよ」
     背を向けて歩き出す鶴丸に、大倶利伽羅は少し悩んだが大人しくついて行くことにした。寝られないのは事実であるし、この鶴丸のことが気になる。本当に主のもともとの知り合いなのかどうか、確かめるには結局、夜が明けるまで待つしかないのだ。

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