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    kamliner

    @kamliner

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    kamliner

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    シャピロ教官の執務室から変な声が聞こえるのを忍が聞いてしまうSS

    理不尽 前略、藤原忍はシャピロの教官用執務室の前で硬直していた。
     呼び出されるのはいつものことで、入室後に行われる予定の長い説教を恐れている訳ではない。ドアノブに手を掛けられない理由は他にある。それが——

    「…は…ぁ、…! うぅ……ぁ…っ」

     この声だ。
     紛れもなく自分の上官の声だと分かるのだが、発せられるものは普段の尊大さとはかけ離れている。
     苦しそうとも切なそうとも取れるような、吐息混じりの声。聞く者が聞けば、艶かしさが——いや。忍は何度目かの想像を首を振ることで打ち消した。
     しかも、問題なのはこれだけではなかった。

    「シャピロ、もっと息を吐いて力を抜け。怪我したくねぇだろ」
    「はぁっ……貴様が…下手なだけだろう…!」
    「ふっ、それだけ口が利けるならまだ余裕がありそうだな、……っ」
    「、ぁっ…! ふ、ぐうぅ……っ!」

     もう片方の声色は、自分の同僚である司馬亮。シャピロの声とは対照的に彼を諭す余裕があるようだったが、時折力を込めるように息を詰まらせる。その度にシャピロの声が一際高く上がり、辛そうに喘いだ。

    「何だ——あんた、初めてだったのか? 簡単に受け入れるから、てっきり……」
    「ぅ…煩い、ッ…! 分かっているなら、少しは遠慮を……ぁ、っ…は、ぁ…ッ!」
    「(……これってやっぱり……)」

     ごくり、と生唾を飲む音すらドアの向こう側へ聞こえてしまいそうだ。聞いてはいけないと頭の片隅では思うものの、金縛りにあったように身体が動かず、耳を塞ぐことも忘れていた。
     その時。

    「……シャピロ、部屋の外に誰か居るぞ」
    「っ…何…?」
    「見てくる、ちょっと待ってろ」

     まずい。亮の人間離れした察知能力を考えていなかった。
     慌ててその場を離れようとしたが、突然動かされた四肢は脳の指示に従わず、足がもつれて対面の壁に突っ込んだ。
     その背後で無情にもドアの開く音がする。

    「……忍? 何してるんだ、こんなところで」
    「藤原?」

     体勢を立て直した忍を前に、亮が問い掛ける。その姿は上半身裸。更に彼の背後ではシャピロが制服の上を脱ぎ、神経質な彼には珍しくシャツを乱してソファに座っている。忍にすればたまったものではなかった。

    「そ…それはこっちのセリフだ! そっちが呼び出しといて何やってんだシャピロ」
    「何だ、あんたが呼んだのか」
    「呼びたくて呼んだ訳ではない。先日の違反の報告を命じただけだ」

     着衣を整えたシャピロも亮の隣に歩み立つ。
     忍の慌てぶりとは対照的に、二人は普段通りとは言い難い着衣状態のまま呑気に話し出した。その光景はいっそシュールな様子にも見えたが。

    「なるほどな。まぁ、でもちょうどいい」
    「……何がだよ」
    「来いよ、お前もやってやる」
    「」

     当たり前のように言う亮の誘いに忍が目を見開く。一瞬で顔に血が集まり熱くなるのが分かったが、そんなことは言っていられない。

    「だっ誰が…俺にそんな趣味はねぇよ」
    「そうか?」

     忍の怒鳴り声を意に介さず、亮が続ける。その横でシャピロの眉がぴくりと僅かに上がった——気がした。

    「そりゃ悪かったな。まさか、整体を趣味で選ぶ奴が居るとは思わなかった」
    「整た………何?」

     続けられた言葉に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。整体?

    「い…いやいやいや! 整体って…」
    「修行中に覚えたんだが、シャピロが書類仕事で身体を痛めたらしいんでな。見かねてここでやってたんだ」
    「何でテメェは脱いでんだよ」
    「知らんのか? 施術する側も全身運動なんだ、結構暑いんだぞ」

     短時間のうちに何度も青くなったり赤くなったりを繰り返した忍の顔は、さっきからもうずっと真っ赤だ。
     知らねぇよ、と叫びたくなったのをぐっと堪える。最早そこを突っ込んでも意味が無い。代わりに、堪えきれずに別の悪態が口を突いて出た。

    「紛らわしい真似してんじゃねぇ おかげで俺はてっきり———」

     バシッ——言い終わるよりも先に、左頬に痛みが走る。
     亮は何も動いていなかったが、隣に立つシャピロの右手が振り抜かれているのを見て、この平手が自分を打ったのだと理解した。
     拳でなくて助かったと一瞬思ったのは、殴られ慣れている者の悲しい性か。

     何故、とは思わなかった。シャピロの顔が忍と同じくらい赤く染まっていたからだ。それが羞恥なのか極度の怒りなのかは分からないが。
     忍のした“誤解”の正体を察したのが理由であることは明白だ。
     ジンジンと痛む頬を押さえ、ふと心に過った。失礼な思い込みをしたのも、言わなくて良いことを口走ったのも事実だ。
     そうは言っても、他人を呼びつけておきながらこんなところで整体なんて、思い付くはずが無い。
     こんなの、いくらなんでも——
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