大切な時間ユキには赤い薔薇がよく似合う。白い肌に、絹のような銀髪。赤い薔薇が映えるその美貌は毎日見ても飽きる事はない。
「っ!」
薔薇に触れようとしたユキが反射的に薔薇から手を離した。
「ユキ!?大丈夫!?」
「大丈夫だよ、薔薇の手入れをしようと思ったんだけど、棘が少し当たっただけだから」
「でも、血が……!」
ユキの指先から微かに血が流れ出す。
「すぐに治るよ。僕達は吸血鬼だからね」
「でも……」
……ゴクリ。
自然と喉が鳴ってしまったのを見てユキは楽しそうに口を開く。
「どうしたの?そんなに見つめて。ふふ、飲んでみる?」
「だ!大丈夫!!」
手を顔の前で振って全力で否定する。ユキの血はできるだけ飲みたくない。だって、なんか変な気持ちになっちゃうんだもん……。
「ほら、遠慮しなくていいよ」
ユキが僕の唇に指を当ててくる。
「ユキ……」
「ほら、舐めて」
「っ!」
遠慮がちにユキの指先を舐めて咥内に招き入れると、血の味が広がって自然と血を吸い始める。
チュパチュパと時折音が鳴ってしまうのが恥ずかしい。まだ数える程度しか血を吸った事がないから。
「んっ、はあっ、ゆ、ひ……っ」
「っ…、エロ……」
ユキが微かに呟いて、熱を孕んだ瞳で僕をみてゆっくりと顔を近付けて耳元で囁く。
「ねぇ、モモ。僕の食事にも付き合ってよ」
「っ!」
ユキの言葉に顔が熱くなるのを感じる。僕が頷くと、ユキは満足そうに微笑んで僕の手を取って歩き出す。
向かう先はきっとユキの寝室。
これからもずっと続くユキとの甘い時間に慣れることは無いかもしれないけれど、大切に大事にしていきたい。
ユキに貰った掛け替えのない時間だから。