俺の初恋がマブの番!プロローグ
大学の講義を終えて、行きつけの古びた喫茶店に入ると人目のつかない一番奥の席へと向かう。ここの店は珈琲を一杯注文しただけで何時間居ても文句を言われないからよく利用する。注文を聞きに来た年老いた店主が「いつものですか?」と訊ねてきたので頷いた。ノートパソコンを開いて株の動きをチェックしているとポケットに入れていたスマートフォンが振動し、取り出せば表示されている名前にうげっ、と思わず声を漏らした。
出たくないが出なかったらあとが面倒。仕方なく、通話をタップした。
「もしもし、何」
『あっ、一。久しぶりね、元気にしてた?』
「何だよ、要件あんなら早く言えよ」
『ホントにもう…、母さんの声聞けて嬉しいとか言って欲しいわ』
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