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    ジャンルもCPも雑多な腐女子

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    パチョマク
    加筆して再掲です

    #マッ腐ル
    mcdonalds
    #パチョマク

    パチョマク短文「――というわけで歴史は図にすると覚えやすいんだ。まとめると、中心となる事件を紙の中心に書く。そして関連する語句を放射状に繋げていく。どんどん分岐していくように」

     アドラ寮の談話室は午後の光に溶けていた。マックス・ランドの声も豊かに広がっていく。勉強の方法を尋ねてきた女子生徒は聞き漏らすまいという顔だ。

    「――紙が大きいと一瞬で把握できなくなるから、気をつけて」

     マックスはなにかと頼りにされる青年である。1人の生徒が声をかけ、話に興味をひかれた生徒が加わって、最後は大所帯に……なんてことも多かった。多かったのだ、最近までは。相談はされるがみな早々と切り上げてしまう。
     マックスそのものが理由や原因ではない。理由あるいは原因はマックスの隣に座っている。アドラ寮の生徒たちから困惑と奇異の眼差しを受け、しかしそれらには何も返さない。彼は感情を見つけにくい眼球をマックスに定め、よく言えば意欲的で、よくない言葉を用いると偏執的に観察している。赤い髪が特徴のオルカ寮の麒麟児。最古の十三杖の一本に選ばれた異才カルパッチョ・ローヤン。
     一応の和解を果たしてから、気がつけば近くにいるようになったのだ。視界の端に赤い髪を見つけて、思わず声をかけると人の輪から遠いところに立つようになった。声をかけ続けるうちに距離が狭まって今や隣に座っている。

    「ありがとうございます! あの、マックス先輩」
    「お! どんどん質問していってくれ。あとは……勉強を誰かに教えると自分にも沁み込む。やってみて」
    「その、あの、勉強……勉強もなんですけど……」

     女子生徒はうつむいて、少し迷ってから顔を上げた。
     ここしばらくの間、カルパッチョはマックスへ己が興味すべてを注いでいた。つまり、マックスに目線を合わせるとカルパッチョも視界に入ってくる。

    「あ、やっぱいいです。ありがとうございました!」

     女子生徒は顔をひきつらせてしまった。顔と同じように、去っていく手足の動きも硬い。

    「圧をかけるなって。この前も言っただろ? 真顔で見つめられたら怖がる人も多い」
    「別に見てない」

     カルパッチョが首をわずかに傾けると、赤い髪が片目を覆った。愛嬌のある仕草だが微笑ましさは薄い。瞳に探究の炎を強く宿すくせに、光はどこか乏しいのだ。

    「僕はアンタ……センパイしか見つめてないけど。センパイをよく知りたい」

     マックスは一瞬怯んだ。炎の奥に獲物を追い込む獣性がゆらめいた――そう感じてしまった。痛みを感じないとはいえ自身にためらいなく刃を突き立て、傷がもたらす苦しみを容赦なく他人に移す戦法。カルパッチョと相対して意識を失う少し前、マックスは確かにうっすらと笑う口元を見た。

    「センパイ? どうかした?」

     カルパッチョの声は平坦だが、瞳はマックスの心のうちをはかりかねて揺れている。

    「あー……いきなり眠くなっただけだから気にするな。この部屋暖かいだろ。昨日の夜は勉強も長めにしてたしさ」

     マックスは眠気を払うふりをした。本当に消えて欲しいものは別にある。
     カルパッチョの謝罪は本心からのものだった。だから受け取ったし、今もカルパッチョがそばにいていい。怖くはないはずだ。談話室の空気は暖かいのだから、体の内が冷えるのも指の先が震えるのも、マックスの気のせいにすぎない。
     カルパッチョに笑みを向けると、双眸はまぶたとまつ毛の下に隠れてしまった。顔もうつむいていく。

    「食欲と睡眠欲、排泄欲が満たされた感覚は移らない。そうだったら役に立てたかもな。……人の……いや」

     言葉は半分くらい自分へ投げかけたもののようでどんどん小さくなっていった。最後のほうは体の中へ落ちたようだ。彼は迷って惑っている。
     カルパッチョの情緒は――痛みを感じ、心の強さというものを知って育まれはじめている。
     マックスの凍える腹や胸、わななく指先に泡が弾けるような軽い衝撃が発生し、冷気だって温められていく。衝撃は頭へ運ばれてスッとおさまった。

    「ローヤン君は役に立ってる。て言うとあれだな……僕はローヤン君にそばにいてほしい。君が僕を知りたいなら、僕も君を知ってみたい」

     カルパッチョは指を握り込んだ。
     彼の頭に手を置くか迷い、結局肩に落ち着かせる。思ったよりも体が跳ねたので、頭だともっと驚かせたかもしれない。いい判断だったようだ。

    「それに! かわいい後輩を見守って手助けすることがよい先輩になれる一番の近道だからね。寮は違うけど、迷惑じゃないなら――先輩風を吹かせてもいいかな?」
    「後輩……かわいい……知りたい……」
    「その、ダメだったりとか……だとちょっと」
    「アンタのこと。よく見て、全部知ってもいいなら構わない」

     カルパッチョはうつむいたままだが、耳は赤い。マックスの口角は自然と上がり、頬は力みを失う。
     
    「よろしくな! カルパッチョ」

     呼びかけを変え、肩をバンバン叩くとカルパッチョの耳は髪に負けないくらい強く濃く色づいた。
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