パチョマク短文「――というわけで歴史は図にすると覚えやすいんだ。まとめると、中心となる事件を紙の中心に書く。そして関連する語句を放射状に繋げていく。どんどん分岐していくように」
アドラ寮の談話室は午後の光に溶けていた。マックス・ランドの声も豊かに広がっていく。勉強の方法を尋ねてきた女子生徒は聞き漏らすまいという顔だ。
「――紙が大きいと一瞬で把握できなくなるから、気をつけて」
マックスはなにかと頼りにされる青年である。1人の生徒が声をかけ、話に興味をひかれた生徒が加わって、最後は大所帯に……なんてことも多かった。多かったのだ、最近までは。相談はされるがみな早々と切り上げてしまう。
マックスそのものが理由や原因ではない。理由あるいは原因はマックスの隣に座っている。アドラ寮の生徒たちから困惑と奇異の眼差しを受け、しかしそれらには何も返さない。彼は感情を見つけにくい眼球をマックスに定め、よく言えば意欲的で、よくない言葉を用いると偏執的に観察している。赤い髪が特徴のオルカ寮の麒麟児。最古の十三杖の一本に選ばれた異才カルパッチョ・ローヤン。
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