あの時遠くに行けてたら 今日は暖かい春の陽射しと気温。三田は休憩でとある川原に座っていた。誰も来ないだろうと思っていたら、思わぬ誤算に遭う。
「あれ、三田さんじゃないですか! お隣すみませんね」
「お、おい! 勝手に……」
誤算の正体は相鉄で、程よい距離に腰掛けた。暫くはのんびり天気の話とか春だとか話していたが、やがて川の流れる音と風の音だけが二人を包む。
先に裂いたのは、相鉄のほうだった。
「三田さん、どーですか。直通が増えて」
「どーもこーも面倒ごとが増えてしゃーねぇ」
「まぁでも確かに、ここまで賑やかになるとは思わなかったですね、僕も」
背景は違えど、直通を切られたことならある相鉄と三田。本来ならばあまり深くは語りたくないだろう。
「実は、お相手のことをよく知りたくて勉強してて、三田さんの過去も知って」
「――で、可哀想ってか?」
嘲笑うかのような三田に対し、相鉄は真剣な面持ちだ。
「いえ、違いますね。だって、僕も昔に止められたことありますんで、ホントに申し訳ないですけど仲間がいたんだなって思いました」
同情かと思いきや、三田の知らない相鉄の過去。返す言葉を失くしていると、相鉄は明るくお礼を伝えた。
「直通に関しては僕以上のトラウマがあるのに、繋がってくれてありがとうございました」
「おい、お前だって」
「僕は大丈夫です。だって時代のせいですから。それに、もしあのまま繋がっていたら今とは違う未来があったわけで、今のような賑やかな平和はなかったかもしれない」
「たられば言ってもしょーがねぇよ」
「そのたらればも面白いじゃないですか。じゃ、僕は戻りますね」
強がりではなくニコッと笑って、その場から軽く走っていってしまった。
「俺も、ボーッとしてらんねぇな」
三田のほうもゆっくりと立ち上がり、前を向いていた。