夢のむかしの 月の光に闇がゆっくりと溶けこんで、あたりは海の色になる。
のばしてみれば指のさきまで青に染まる。寝台に眠るひとの姿も水のなかにあるようで、そのさまにすこしみとれた。
深海くんがすきそうじゃの、つぶやけば窓辺のあたりから笑う声がした。
「千秋はこの時期がんばりすぎるから目を離さないようにしないとってよく言ってるのにね。働かせすぎって怒られるかな」
言葉のうちには昔馴染みの気安さがにじむ。子どもの頃はおたがい体が弱くてよく病院で顔を合わせていたと、そういえばいつか守沢から聞いたことがあった。
と、頭の隅をふいとよぎるものがある。
ふむと口元に手をやれば、こちらの様子に気づいたらしい、英智がふふと笑ってみせた。
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