来栖暁に育てられたあけちごろうくんの話そう言われて暁さんと一緒に向かったのは、何の変哲もない賃貸マンションだった。
先導する暁さんがポケットから取り出した鍵を差し、扉を開けて中に入る。
ベッドや机、冷蔵庫、調理器具、洗濯機など。人間が生活するために必要最低限の家具は全て揃っている1LDKの間取りの部屋。
しかし、そこに誰かが生活している気配はなかった。
「ここ、誰かの部屋?」
「ああ。今日から吾郎が住む部屋だ」
「…え?」
あまりにも当たり前のように言うから、聞き流しそうになった。
「どういうこと?引っ越すの?それにしては…」
狭すぎる。
初めて会った日、彼は僕が自分と同じくらいの高さまで背が伸びると言っていた。実際に今の身長は暁さんと大差ない。そんな180cm間近の男二人が暮らす部屋にしてはこの間取はあまりにも無理がある。
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