キル・ミー・ベイベー【序】「よぉ凪」
「なに、玲王」
白宝高校、昼休みの屋上。
雲一つない快晴の下、凪はスマートフォンに夢中だった。物好きな視線ひとつだって投げかけてくれない。
つれない。
けれど、玲王はめげない。
勝手知ったる梯子を登り、凪が寝そべるところまで歩いていく。そして彼の頭を挟んで見下ろすと、白い髪の毛はふわふわと動いて、スマホを動かす手が止まった。
指の動きが完全に停止するまで待って、玲王は満足げに息を鳴らした。
「なぁぎ」
こうなった時の彼はしつこい。
声は甘ったるくて、それでいてワントーン高くって、吐息を含んでいるから耳に届くまでにはかすれている。なのに決して有無を言わせないだけの圧があって、玲王と一緒になったクラスメイトは、みんなこぞってこの声に囁かれたいと願ってしまうほどの美声であった。
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