ハンナ生い立ち3.5 補足 7歳半で事件を起こしたとき、ハンナのことがクラーク家にも噂になる。並外れた力を持つ子どだとわかった瞬間、本家の人たちが養子に入らないかと複数人声をかけてきた。それまでハンナを魔力を使えない分家の出来損ないだと言っていた人たちが、その才能をクラーク家の為に生かすべきだと、手のひらを返して両親に詰め寄った。
そんなこともあって、両親はクラーク家とは縁を切り、逃げるように他国へと渡った。フォスターと名を変え、人間のいない地へと移り住んだ。
ハンナのことを見破った上官は、ハンナのことをずっと探していたそのクラーク家本家の一人だった。
クラーク上官は人間でありながら、自ら功績を立てて連合軍で上の階級にのぼりつめた実力者だった。人間を下にみる魔族がいたら、力で黙らせるような人だった。
人間の魔界での地位を上げるためには、人間自身の力を示す必要がある、というのが上官の考えだった。彼にとってハンナは利用価値のある駒だった。
─純粋な力だけでいえばこの私を超えるかもしれない。なぜ魔族に虐げられながらその力を示そうとしない?
クラーク上官は不思議で仕方なかった。その力は我々人間の栄誉のために振るうべきものだ。彼女はそのためにクラーク家に生まれたクラーク家の財産だ。彼は、ハンナの両親がクラーク家からその財を奪って逃亡した罪人という認識をしていた。
ようやく見つけたハンナが力を使うことを拒んでいることを知って、上官はひどく残念がった。説得を試みるも、ハンナは聞く耳すら持たなかった。説得が効かなければ力ずくでも、と思っていた矢先に、ハンナは軍を辞め姿をくらませていた。
クラーク上官は自らの持てる全ての力を使い、ハンナを追った。
しかし、上官がハンナを捕らえるより早く、ハンナはハッカーナビの基地へと辿り着くことができた。
Q.そんな人が連合軍にいるのに、連合軍に入ったのは迂闊すぎない?
A.ハンナは連合軍と言っても下っ端の下っ端。魔界全体ある基地の一つで雑用をしていたに過ぎない。軍の出世街道とは関係のない役職で、そこでいくら仕事を立派にこなしたとしても、功績になるわけでもない。そもそも階級すら与えられてない仕事だった。
そんなハンナの存在が上官にバレるなど、大手会社の代表取締役が1子会社の清掃員の身の上を知るのと同じようなもの。しかもハンナは幼少期から成長し、名前と経歴を詐称している。存在が認知されることも本当はないはずだった。
ハンナが魔法を使っても、普通ならクラーク上官ほどの地位にいる人に届くほどの噂ではないはずだった。現場は混乱していたし、ハンナが魔法を使ったことは周囲の数人が気づいたかどうかくらいだ。
ハンナの誤算は、たまたまその戦場を指揮していたのが、クラーク上官と懇意にしていた士官だったということ、ハンナが行方をくらませてから長い年月が経っているにも関わらず、クラーク上官はそのアンテナを高く張リ続けていたのを知らなかったことだ。
クラーク上官は、酒の席で何気なくその士官が言った言葉を耳ざとく聞きつけ、僅かな手がかりからハンナへと辿り着いた。