「れい、あの、起きてください」
小さく、優しい声が聞こえる。あぁそうだ、今日は久しぶりに休みが被ったから、どこかに出かけようかと話していたんだった。そこまでなんとか考えて違和感に気づいた。
声が小さい?あの渉が?
何かあったのかとガバッと起き上がって渉の方を見た。少し、顔が赤い気がする。熱を測るために渉の額に自分の額を近づけたところで、渉の手によって遮られた。
「もう熱測りましたから…!」
「そうかえ?それで、何度なんじゃ?」
「えっと、……さんじゅうななどごぶ、です」
「ふむ、疲れが出たのかのう」
37.5度。躊躇いつつも口に出されたその体温は、微熱と呼べるほどの温度であった。
ひとまず渉の頭を撫でて横になるように促す。食欲はあるだろうか。もしかしたらまだ熱が上がる可能性もある。薬とゼリーなど食べやすいものでも買ってくるか、と考えていると申し訳なさそうな声が聞こえた。
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