撫でられてるとき 円城寺さん、もしかして俺とコイツのこと犬か猫だと思ってんじゃねーか……? コイツのことはともかく、俺がかわいいとか、よくわかんねぇ……。
腑に落ちない。というかむず痒い。なんて反応したらいいのか、わからない。かわいいな、って円城寺さんが言うたびに、そんなことねぇ、と俺が言っても円城寺さんは相変わらずの笑顔で、
「自分にとってはそうなんだ」
と答えて取り合わない。そして俺の頭をそのままその大きな手のひらで撫で続ける。
……やっぱ、猫とか犬だと思われてるよな。だとしたら撫でる手が止まらないって気持ちは、少しわかる。俺もチャンプを撫でてると、いつも止め時がわからなくなる……。手触りいいし、あったかくて柔らかくて……。
「お前さんたち、最近髪サラサラだなぁ」
「俺はそういうのよくわかんねぇけど、円城寺さんが買ってきたあのシャンプーが良かったんじゃねーか。他に心当たりもないし」
だとしても俺の頭が撫でて気持ちいいってのとは違うと思うんだが。
わかんねーけど、やめて欲しいわけじゃない。どっちかっつーと、もっと……いや、それは……。
でも猫相手だと、ずっと撫で続けてるわけにもいかねぇんだよな。しばらく撫でてると、急に噛みつかれたり引っかかれたりする。
「いたっ。れーん、もう嫌か?」
コイツは円城寺さんに顔を撫で回されつつ、その手が口の近くに来たところを狙って指に噛みついていた。円城寺さんが困った顔してんのに、コイツはひとしきり噛み続けてから、口ん中に指入ったまま、
「んなこと言ってねー」
ってモゴモゴ言っている。コイツはやっぱり犬か猫かもしれない。
「なに笑ってんだ」
「別に」
俺は笑ってるつもり、ねえけど。円城寺さんは、やっぱり笑ってる。
「かわいいな」
何もしてねぇのに、また言われた。