合図を待っている らーめん屋が布団に入ってきて、すぐに暑くなってきた。布団から出るかどうかで悩む。
どうやったらンなのことになるんだか知らねーが、らーめん屋は熱の塊みたいなモンで、近くにいるだけで暑い。
「最近は朝方が寒いから、寝冷えしないようにな」
とか言いつつオレ様にこのもこもこの鬱陶しーヤツを着せやがったせいもある。着せやがったのは、もちろんらーめん屋だ。
同じようにもこもこを着せられたチビが、らーめん屋の向こうでぐだぐだ喋っている。布団がめくれる音。チビが布団に入るためにもぞもぞ動いてて、ゆるい音、ゆるい振動、少し上がった布団の温度、丸まったオレ様の隣に座り込んだらーめん屋の太ももに額を当ててると、色々なものが伝わってくる。
「タケルは寒くないか?」
「全然……むしろちょっと暑くないか? このパジャマ、準備してくれたのは嬉しいんだけど……。そこに引っ付いてるソイツ、頭まで布団かぶってよく我慢できるな」
「?」
声が出た。なんとなくムカつく。布団を出ようか、悩む。でもねみぃ。
「この季節は油断すると簡単に風邪ひくぞ。ほらほら」
らーめん屋がちょっと遠ざかった。チビとなんかゴソゴソやってる。バタバタうるせー。らーめん屋は布団の中にチビを押さえ込んで、布団かぶせてる、らしい。チビが抵抗してる。らーめん屋が冗談言って笑ってる。布団から頭出すかどうか、悩む。うぜーから。
「おやすみ、タケル」
そう言ってしばらくしてから、らーめん屋が戻ってきた。さっきよりオレ様の方に寄ってる。布団の中でらーめん屋の太ももがオレ様の額にぎゅっと当たっている。さっきよりも、だ。暑い。チビがあっち側でらーめん屋にくっついたせいでオレ様がワリを食って狭くなってる。でも、しょーがねー。
暑いのに、慣れてきた。ねみぃ、けど……。
「漣。漣にも、していいか?」
らーめん屋が呼んでる。だから、これもしょーがねーから、頭だけ布団から出した。
布団から出したのは頭だけだ。眩しいから顔は布団の中。らーめん屋が笑ってオレ様の前髪をいじってやがる。くすぐってー、むずむずする。
「おせぇ」
「あはは。漣も、おやすみ」
笑ったりくすぐったり、オレ様を待たせんじゃねーっつーの。いつ来るんだよ。見えねーからわかんねー。やっぱ、布団から全部出りゃよかった。
考えてるうちにらーめん屋のくすぐったい気配が近づいてきて、額に口を押し当てられた。そんだけ。寝る前の……キス……何回されても意味わかんねーけど、らーめん屋が言うには、そういうモン、らしい。