留守番 つまんないな。ほんとにつまんない。もう一万回ぐらい文句言ったけど、つまんないのはつまんないんだから何回「うるさい」って叱られたって黙ってられない。ま、その文句を言う相手も、とっくにどっか行っちゃったから、流石に今はもう黙ってるけど。一人で騒いだってつまんないし。つまり、やっぱつまんない。
今日はお留守番だってさ。お留守番ってさぁ……。怪我したのはボクの責任だし、置いてかれたのはしょうがないけどさ。ついて行って足手まといだろうし。それよりは残ったほうがいいってわかってるよ。ボクはそういうとこ物分りがいいんだよね。そう何度も言ったのに、ちっとも分かろうとしない! だいたい、そろそろ長い付き合いなんだから言わなくったって分かるべきだよね。
だってのに、この仕打ち。
「ハァ……」
ため息をついたら、培養液にでっかい泡が浮かんで視界が波打った。
泡は目の前のガラス質の外殻にぶつかって、平べったいスライムのように潰れてから上に浮かんでいく。それを目線で追うのは、つまらなくはない。どうせそれぐらいしかやることないし。
騒ぐのをやめたのはこれも理由の一つだ。培養液の中で騒いでも、あんまり外には聞こえない。他の居残り組にも聞こえないんじゃ虚しすぎる。そもそもボクがいくら騒いでも、外に出してくれそうなヤツは今日は残ってないか。なんだってこんな仕打ちを受けなきゃいけないのか、ほんとに全然わかんない。
――修理中の身で何を言ってんだ。回復するまで大人しくしてろ。
って何度も言ってたけどさ。これはいくらなんでも厳重すぎる。このメンテナンスポッドは今回のボクの怪我の程度には有り余るほどの高性能な回復機能があって、さらに外側から厳重に鍵がかかっている。あんまりじゃないかな。
鍵、あと少し回復したら内側から壊せないこともないけど、試されてるみたいでなんかヤダ。備品壊して弁償もしたくないし。
レッドが心配性すぎるのがいけないんだよね。多分そういうことだと思う。帰ってきたら「もっと大人になりなよ」って言ってやらなきゃな。それから他には、なんて言おう。動けないから考えるぐらいしかやることないや。「おかえり」と一緒に言うこと、いっぱいある。