大嫌いは大好きボクはリーバル。魔法使いアストルのひとり息子だよ。
すてられてるところを拾われて育てられてたんだけど、厄災ガノンとかいうタマゴに足が生えたやつがあらわれて、それを崇めはじめたアストルの教団に生贄にされそうになったんだ。
でも退魔の騎士っていう人がボクを助けてくれたんだ。
真っ黒なもやもやを斬ってくれて、大丈夫?って聞いてくれたんだよ。
でもねボクはガノンの呪いをうけて、思ったこととは逆の言葉が出たり嫌なことを言うようになっちゃったんだ。
だからボクはありがとうって言いたかったのに
「たすけてなんて言ってない」
って言っちゃった。そばにいた他の騎士さん達は嫌な顔をしてきたけど。退魔の騎士さんはボクの頭を撫でて「ケガがないならよかった」って言ってくれたんだ。
その後ボクはアストルがガノンの本体を持って逃げちゃったから一人きりになっちゃって、泣きじゃくってたら退魔の騎士さんがボクを抱っこして言ってくれたんだ。
「うちの子になる?」って
言葉を出したら嫌なことを言っちゃうから頷いたら、また頭を撫でてくれたんだ。
アストルと一緒の時はこんなことはなかったから、すごく嬉しかった。
このお話はね、ボクが退魔の騎士リンクを好きになって呪いが解けてしあわせのお話なんだよ。
ボクがリンクと暮らし始めてから一年。お城につとめてるリンクはボクと暮らすために城下町にお家を建ててくれたんだ。アストルのジメジメしてて暗くて変な釜とか変な骨とかが刺さったお家とはおおちがい!
いつもポカポカ陽気のお日様が入ってきて、一番日当たりがいい場所にボクのハンモックをつけてくれたんだ。
料理もアストルが作ったわけのわからない紫のドロドロじゃなくて唐揚げとかムニエルとかたくさん作ってくれるんだよ。
お城でお仕事がある時は早く帰るけど、たまに任務で帰ってこない時もあって、そんな時はさみしいけど…。
でもさみしくないようにってメドーぬいぐるみを買ってきてくれたんだ。
だからボクは大丈夫。
ボクはリンクが大好きなんだ!
けどね、ボクはリンクに大好きがつたえられないんだよ…
だってね。
だれもいない部屋、かがみのまえでいつも練習するんだ。
「リンクなんて嫌いだよ。ボクに近寄らないでほしい」
ほらね。ボクは嘴を開いたら勝手にイヤな言葉を言っちゃうんだ。
だからボクはリンクにもだれにもしゃべらない。
そのかわりお手伝いはいっぱいするよ!リンクのおふとんがふかふかになるようにお洗濯して干して。リンクのご飯が一番好きだけどおそい日はボクが作るんだ。
お部屋もピカピカにして、お隣のおばあちゃんのお手伝いもしに行くんだ!
いつかもし、本当の家族やアストルみたいにボクを捨ててもいきていけるように弓も練習して、的を全部当てられるようにもなったし、それから…
「さっさとリンクから離れたいよ。こんな家出て行きたい」
なんでボクはちゃんと話せないのかな。
いつかちゃんと、リンクに好きが言えたらいいのに。
暗くなりかけた空を見上げてボクはすこしだけ泣きそうになった。
リンクが家に帰ってきたのはお月様がだいぶ上った時間、お帰りなさいと言うとただいまと笑顔で頭を撫でられた。
今日もなにもなかった?
うん
唯一ちゃんと話せるあいさつと返事をして、リンクが着替えてる間にごはんを温める。
簡単なものしかまだつくれないけど、リンクはいつもおいしそうにたべてくれた。
イヤなことしか話せないって気がついて、それがこわくて話さなくなってからはリンクもそれを受け入れてくれた。
周りはボクをたまにイヤな目で見てくるけど、リンクだけは違う。あとお隣のおばあちゃんも。
だからボクは言葉にはできないけどちゃんとリンクに好きを伝えるんだ。
「リンク」
「ん、おいで」
ごはんを食べて寝る時間。ボクはハンモックにはいるまえにぜったいリンクのベッドにはいりこむ。
膝にのって嘴をよせて、頰に擦り寄っておやすみなさいをする。
街を歩いてる時、リトの女の人が男の人にしてたこと。
アストルが見てた変な本と似たようなことしてた。アストルは子供がみるものじゃない!って言ってたけど、リンクがくれた本には大好きをつたえることなんだって書いてた。
だからボクはいつもリンクにこうしてだいすきを伝えるんだ。