勘違い「サンポ、ゴム持ってたりしない?」
「は…え、まあ一応持ち歩くようにはしてます、けど」
「さすが!今それ、使っても良い?」
この少女は突然何を言い出しているのか、サンポは混乱した。太陽がまだ頭上で燦々と照っているというのに、あまりにも大胆すぎる。
確かにそういうことは最近ご無沙汰だったし、ちょうど周りにも誰もいない。屋外だということが少し気にかかるが、こんな裂界の近くまでわざわざ来るような物好きは自分たちくらいだろう。
「何ブツブツ言ってるの?持ってるなら早く出してよ」
「…ええ、貴女のお望みのままに」
こうもお強請りされてしまっては期待に応えないのは無作法というもの。少女の小さな顎を掴んで、唇を───
寄せようとしたところで、頬に強烈な一撃。
「…っばか!き、急に何」
「それはこちらのセリフですよ!僕はお姉さんのお誘いを受けようとしただけです!」
「は…?」
サンポの言葉に星の顔が怒りと羞恥の入り交じったような赤に染まる。
「ゴムってそういうゴムじゃない!暑かったから髪括りたかっただけ!っ何考えてんの…!」
顔色を変えるのは今度はサンポの番だった。穴があったら入りたい、それだけが頭に浮かぶ。
「………すみません。その、僕が勝手に舞い上がってしまって…」
「別にいいけど…。ほら、そこまで落ち込まないでよ。私が悪いみたいじゃん」
それに、と星がサンポの耳に顔を寄せながら続ける。
「そっちのゴムも後で必要、だから」