⚠️チの夢5(酒場の店員)パーティー内恋愛禁止だからチルチャックさんがよく行く酒場の店員になりたい。
なじみでそこそこ気心知れたライオスパーティーの一部が打ち上げでやってきた。「いらっしゃいませ」って声をかけると「おう」とか言って手を上げてくれるチルチャック。実は一回目で顔を覚えてくれたらしく、たまに街中で会っても声かけてくれる。
テーブルに案内してオーダーを取ったらまたすぐ調理場に戻るんだけど、なんか少し寂しい気がしてしまう。
チルチャックさんは今回の戦利品の市場価格だとか何とか難しいことも言ったりしてるけどライオスはにこにこしながら酒飲んだりしてるし、マルシルはデザートメニュー見てるし、ファリンはもくもくとピザとか食べてて誰も話を聞いていない。
相変わらず自由な人たちだなーと思いながら店主に言われて、料理を運んだりお酒を運んだりしていると何やらライオスさんたちがえらく盛り上がっている様子。
「すみませーん」
呼ばれたので紙とペンを持ってテーブルへ向かうと、なんだかものすごく皆の視線を感じる。
「ご注文はどうしますか?」
誰も何も注文しないのでとりあえず聞いてみると、おずおずとマルシルさんが近寄ってくる。エルフって近くで見ても綺麗だなーと思っていたら「あの」って声をかけられるので反射的に返事をした。
「変なこと聞いてもいい?」
「はい?」
「好きな人とかいる?」
何を言うのかと思ったらそんなことを聞かれて、びっくりしてしまう。
「好きな人? ですか」
改めてマルシルの顔を見ると目が爛々と輝いていて、すごく楽しそう。期待されているところ悪いけどそんな人居ないしな……と思い視線を逸らしたところでチルチャックとばっちり目が合ってしまう。
マルシルさんの輝きとは真逆でチルチャックはげんなりした顔をしているので、「チルチャックさん……?」と思わず名前を呼ぶと耳元からキャーって歓喜の声が上がる。
びっくりしたまま固まっていたら、私を見つめる丸い双眼が更に大きく丸くなって視線の逃げ場がなくなってしまう。なんとなく生ぬるい空気になって心もとなくなっていたら、自分を見つめていたチルチャックさんがにたりと笑った。その笑い方があまりよくないもののような気がして思わず後退りすると、声をかけられる。
「いいんだな?」
「? ご注文ならいつでも……?」
何が? と思いつつ疑問系でとりあえず返すとまたマルシルが楽しそうに歓声を上げる。ライオスは楽しそうに笑うだけだし、ファリンはずーっと食べてるしで誰も何も教えてくれない。
「じゃあ予約な」
にひっと笑ったチルチャックはこっちを見つめて悪い顔をしている。何が何やらわからないままファリンに頼まれた追加のグラタンとキッシュをメモして席から離れようとすると視界に紙切れが差し出される。
「チルチャックさん?」
「予約って言っただろ」
追加の注文なら今言ってくれればいいのに。押し付けられるまま紙切れを受け取って調理場で開くと、三日後の日付と時間、デートスポットで有名な場所が書かれていてその日はもうチルチャックさんの席へオーダー取りに行けなくなるね。