Don't keep me waiting(俺、何かしたか……?)
今日はやけにイサミに見つめられる。熱視線の言葉が相応しく、いつでもどこでも突き刺さる視線に俺はイサミが見つめてくれる嬉しさ以上に気恥ずかしさで落ち着かない。
何か言いたいことでもあるのだろうかとイサミを見つめ返しても、「よぉbro! どうかしたか?」と訊ねてみても、イサミはCOOLな顔で「いや……」と首を横に振るばかりで、なのにやはり俺を見つめ続けてくる。あまりに露骨な視線に周囲も気が付いていて、ヒロには「いつもと立場が逆だな」と笑われてしまったし、ヒビキは「あんた、流石に見すぎ」とイサミを小突いていた。
普段からついついイサミを目で追っては「そのうちルーテナントに穴が開くぞ」と言われている俺は、熱視線を送られる心地がどんなものかを痛感する。何かと注目されやすいイサミは視線に慣れているようで、俺が見つめたところでどこ吹く風といった調子であるとはいえ、少しは意識して控えた方がいいかもしれない。……出来るか出来ないかは別に置いといての話にはなるが。
(いや、本当になんなんだ?)
今もイサミは俺の隣で俺を熱心に見つめていて、小さな瞳に捕らえられた俺は平常心のふりをするので精一杯だ。
見つめられるような心当たりがないから余計にそわそわしてしまう。視線で穴が開けられるというなら今すぐ全身に開いて欲しい。そうすれば、このむず痒さから少しは解放されるかもしれない。
「っ、イサミ」
「なんだよ」
なんだよはこちらの台詞だと言うのに、イサミは俺から視線を逸らさないまま平然とした顔。無垢な瞳がいっそ腹立たしい。
ああ、クソッ……君って本当に可愛いな!
「そんな熱心に見つめられたら、キスしちまうぞ?」
シャイな君のことだから「悪い」と赤面して視線を逸らすだろう、そう思っていたのに。
ぱっと雲の切れ間から光が差し込むみたいにイサミが嬉しそうに笑う。
「遅いんだよ」
そう言って、俺の服の裾が指先で摘ままれて、俺の平常心は遥か彼方に飛んでいったのだった。