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「アスラン・ザラです。本日はよろしくお願い致します」
オーブ式の敬礼をビシッと決めると、目の前にいる強面の男はふっと口角を緩めた。アスランとしては毎度背筋が伸びる思いだ。
彼ーーレドニル・キサカを前にする度に、アスランの中で緊張感が走り抜ける。口の中が乾き始めたのを唾を飲むことで回避しながら、「あの……」と切り出した。
「本当に自分が教官役を務めても良いのでしょうか?」
「そんなに臆することはないだろう。きみは優秀なパイロットだ。我がオーブ軍の戦力の底上げとして、やはり実績を積むのが一番だからな」
「……それは、そうですが」
アスランとしても、キサカの言うことは理解できる。軍人に最も必要なのは経験で、その経験を積むには実戦が一番なことも。そしてできれば自身より強い相手に挑むことで、今の自分に何が足りたいのかを実感できるだろう。
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