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    rinne_bl

    @rinne_bl

    ※投稿作品の転載・複製・改変・自作発言は一切禁止です※
    二次創作文字書きです。
    オル光♂、ウツハン♂など。
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    rinne_bl

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    TwitterのFF14飯テロ企画「#光と共に食卓を」に参加させていただだいた作品です。
    ドラゴンヘッドでカレーを作る冒険者のお話をメドグイスティル視点で。

    #オル光
    olLight

    お肉ゴロゴロのカレー「メドグイスティル、かまど1つ貸してくれるか」

     そういって調理場の勝手口から私に声を掛けてきたのは、我らが主オルシュファン様の大切な客人であり、何度もこの地の危機を救ってくれたミコッテ族の冒険者だった。

    「冒険者さん!いらっしゃい!空いてる所好きに使っていいよ!」

     冒険者さんが危機を脱してドラゴンヘッドを立った後も、オルシュファン様と通じ合うものがあったのか、友人としてよく訪ねてくるようになった。とくに最近は『鞄の整理がしたい』などと言って、鞄に眠ったままになっている食材を使って料理を作ってくれる。
     最初は遠慮していたけど、彼曰く『余った食材をいつまでも持っていても鞄が狭くなるだけだから』とか『宿代のつもりで』と言って粘るので好意に甘えさせてもらっている。何より、彼が作る料理は大変に美味しい。

    「今日は何作るの?」
    「カレーだ」
    「きゃーっ!やった!みんなに知らせないと!」

     雪の家で彼らを匿っていた頃からいろいろと料理を作ってくれていたけれど、スパイスの扱いが得意だという冒険者さんのカレーは、奥深い風味とコクがあって一味違う。そして体の奥からポカポカと温まって厳しい寒さも忘れてしまうのだ。

     ウキウキと早足で鍛錬所に向かい、打ち合いの音に負けないよう声を張り上げる。

    「みなさん聞いてください!今夜は冒険者さんのカレーです!」
    「なんだと!?」
     
     鍛錬所で声をかけるとざわざわとどよめきが起こり、オルシュファン様の顔がパッと輝いた。普段から元気な人だけど、冒険者さんが絡むといっそう嬉しそうな顔をする。

    「よし、皆聞いていたな?今日の鍛錬は厳しくいくぞ。腹を空かせておかねばな!」
     
     張り切るオルシュファン様に応えるように、うおおお!と雄叫びが上がる。冒険者さんのカレーと聞いただけで士気が上がるのだから、冒険者さんの作るカレーは偉大だ。

     厨房に戻ると、冒険者さんは鞄から取り出した食材を調理台に広げていた。
     
    「オルシュファン様、お腹を空かせるためにいつもより厳しくいくって張り切ってたよ」
    「そりゃ大変だ。メイン食材はさっき仕留めた猪なんだが、みんなオルシュファンに扱かれているだろうから、大きめに切って贅沢にいこう」
    「最っ高……大きいお肉ゴロゴロのカレーなんて美味しいに決まってる……!」

     見慣れない食材に、これは何処で採ったの?と聞けば聞いたこともない場所がポンポン出てくる。野菜の下処理をしながら、食材を通して聞く旅路も冒険譚のようで、これは調理番の役得だな、と笑みを浮かべた。きっとオルシュファン様も知らないだろう。

     巨大な寸胴鍋に、こっくりとした色のカレーがなみなみと満ちている。温かな湯気とともに漂うスパイシーな香りに、口の中で涎が溢れそうだ。
     深皿にこんもりと盛ったライスにカレーを掛けると、とろりと照りのあるルウがライスに染み込み、食べ応えのあるサイズの肉や野菜がごろごろと転がる。名前も聞いたことのない野菜もいくつか入っていたけど、冒険者さんの作ったものなら味に間違いはないからわくわくしてしまう。

     いつもより厳しい鍛錬を終え、くたくたの兵士たちが香りに誘われるように食堂に入ってくる。ちなみにオルシュファン様は、冒険者さんがいる時は自分の隣の席を当然のように冒険者さんのために確保するので、彼らが揃って食事をする時はいつも隣同士だ。
     
     食器の立てる音、互いを労う会話、賑やかな笑い声、そして『おいしい』という言葉。それらを聞く度に料理人で良かったなと思う。この暖かい空間で味わう食事は、きっと厳しい戦いの糧になるだろう。だからオルシュファン様はなるべく揃って食事を取ることを大切にするんだと思った。

    「待ちわびたぞ…!」

     山盛りにカレーを乗せたスプーンを、大きく開けた口で頬張るオルシュファン様を、冒険者さんはじっと見つめている。他人が自分の料理を食べる瞬間って気になっちゃうよね。わかる。

    「――美味い!最高にイイカレーだ!」
    「それは良かった」

     眩いばかりの笑顔を浮かべるオルシュファン様に、冒険者さんは安心したように口元を緩め、自分のカレーに手をつけた。私もそれを見てカレーを口に運ぶ。

     熱々のそれを頬張りはふはふと熱を逃がすと、奥深く複雑なスパイスの風味が鼻に抜ける。溶け込んだいろんな野菜の旨味が辛味を包み込み、ライスと一緒に噛めばもっちりとした歯ごたえに穀物と野菜の甘みが加わって喉に落ちていく。
     後を引く爽やかなスパイスの香りに、更に食欲を掻き立てられ、二口目はごろっとしたお肉を口に運んだ。ずっしりとボリューム感のあるそれはほろりと解け、柔らかな繊維となった肉とルウが絡み合う。獣肉特有の臭みは感じないのに、赤身のどっしりした肉の旨味が野生を感じさせた。濃厚な肉の旨味がスパイシーなカレーの風味と合わさり、今度は柔らかなライスの甘みが恋しくなる。

    「特に肉が最高に美味いな。柔らかで、旨味が強く、臭みもない。何の肉だ?」
    「だろう?こいつは来る途中で仕留めた猪だ。特性のスパイスを揉みこんで酒に半日漬けてある。それから仕留め方や捌き方の善し悪しで味も変わってくるから、肉にはこだわってるんだ」
    「お前が仕留めたのか……!どのようにやったのだ?」
    「ふっ、当然脳天に一発だ。獲物が苦しんで暴れるほど肉の味が落ちるからな。弓使いの腕の見せ所だ」

     自慢げに語る冒険者さんに、更にオルシュファン様の顔が輝く。料理に温められて赤みのさした頬と相まって、まるで子供のようだと微笑ましく思うが、年上の上司をそう表現するのは失礼だと顔には出さない。

     幼少の頃から冷遇されてきたことを思えば、子供のように憧れや好意を素直に示せることというのはとても得がたく、胸にくるものがある。微笑ましいと心の中で思うくらいは許されたい。

    「お前の作るカレーは面白いな!毎回材料が違うから今回は何が入ってるだろうとわくわくする」
    「カレーは何を入れても美味いからな。ちなみに今あんたが食ったのはトードの肉だ」
    「ぐっ!?口に入れた瞬間に言うな!だが、ふむ……言われなければわからんな……そして癪だが美味い」

     複雑な表情をしながらも、オルシュファン様の食べる手は止まらない。それを見て悪戯が成功したような顔で冒険者さんは笑っていた。

     ここが極寒のクルザスだなんてまるで嘘みたいに、みんな額に汗を浮かべて顔を扇ぎながらカレーを食べ進めている。体の内側に熱が灯るようで、元気が出てくる気がする。そう感じるのは私だけじゃないのかもしれない。だって皆いつもより疲れているはずなのに、食堂は活気に満ちている。だから皆冒険者さんのカレーが好きなんだろうか。

     気がつけば空になった皿と、お腹の容量にちょっとだけ悩む。

    「私もおかわりしちゃおっと」

     ――End――
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