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    rinne_bl

    @rinne_bl

    ※投稿作品の転載・複製・改変・自作発言は一切禁止です※
    二次創作文字書きです。
    オル光♂、ウツハン♂など。
    オリジナル設定、捏造強めです。

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    POIPOI 21

    rinne_bl

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    蒼天で精神限界になった作者が幻覚を見るために書いたオルシュファン生存ifのオル光♂小説。
    https://poipiku.com/959220/7334380.html【前】
    https://poipiku.com/959220/7424403.html【中】
    こちらの続きです。
    ※3.0ネタバレを含みます
    ■ヒカセン設定
    名前:ルカ
    ミコッテ/男/吟遊詩人

    #オル光
    olLight
    ##蒼想スターチス

    蒼想スターチス【後】 ざわつく胸を抱え、アルフィノは夜の帳が下り始めた皇都を足早に通り抜けていく。神殿騎士団本部の扉をくぐり、駐屯していた兵士に声をかけるとすぐにアイメリクのもとへ通してくれるという。事前の約束もない面会の申し出を取り付けてくれることに若干の申し訳なさを感じるが、今はありがたい。

    「アイメリク卿!突然申し訳ありません。ルカについて、神殿騎士団に何か情報が寄せられていませんか?」
    「アルフィノ殿、どうされたのです」

     落ち着いた声で諭されて、頭に上っていた血がすっと引いていく。一つ大きく呼吸をして、話の順序を組み立てた。

    「……すみません、取り乱しました。実は、ルカの武器が忘れられた騎士亭に置き去りにされていたようなのです。それからリンクパールで連絡を取ろうにも繋がらず、何かよからぬことがあったのではないかと……」
    「なるほど、それで神殿騎士団に。残念ながら、こちらに彼に関する情報は何も――」

     アイメリクの言葉に無駄足だったかと落胆しかけたとき、執務室の重厚な扉のノック音が響いた。

    「お話中失礼します。総長、緊急の報告が」

     入室してアイメリクに耳打ちするエレゼンの騎士を眺めていると、アイメリクが視線をこちらへ向けた。

    「まさに丁度、といったところだな。英雄殿の行方について情報があった。君、アルフィノ殿にも話してくれ」
    「はっ、先ほど人さらいにあったという子どもが駆け込んできました。彼によると、賊らに英雄殿を呼び出すために人質として捕らえられたと。英雄殿自身が交渉に現れ、子供は身柄を開放されましたが、その後英雄殿がどうなったのかは不明とのことです」

     胸をざわつかせていた嫌な予感が的中したことにアルフィノは唇を噛んだ。ルカならばそこらの賊が束になって襲ってこようと蹴散らすのは簡単だろうが、人質を取られていればそうもいかない。おそらく、武器を置いてくるように指定されたのだろう。それでも、せめて知らせてくれたら陰ながらでも支援できたのに。
     オルシュファンが守りたかったものは自分が守るのだと、執念じみた思いを滲ませ、どこか思いつめたようなルカの表情を思い出す。

    「それから、こちらが現場に残されておりました。アルフィノ殿、こちらは英雄殿の物で間違いありませんでしょうか?」

     そういって差し出されたのは、ルカが愛用するターバンだった。軽やかに攻撃を躱す度、鮮やかな羽飾りが翻ったのをよく覚えている。受け取るとごわついた手触りと鉄臭さが鼻を突き、それがこびり付いた血によるものだとすぐに理解した。不安と焦燥感が胸の底をジリジリと焦がす。あのルカが、頭にそれ程の傷を負ったのだろうか。いや、敵の返り血かもしれない。どちらにしろ穏やかでない事態なのは確かだ。

    「……ルカは、今のイシュガルドの騒動を裏で糸を引いている人間がいるのではと睨んで調査をしていました。真っ先に思い当たるのはその件です」

     心当たりを話すと、アイメリクは隣に立つ騎士に目配せをし、騎士は敬礼して執務室を出た。人払いをしたということは、どうやら当たりのようだ。

    「ルカ殿はさすがの勘の鋭さだな。お察しの通り、直近の騒動は裏で企てた者がいる」
    「ではやはり、クーデターを企む者たちがルカを攫ったと……?」
    「ああ、かの英雄が自分たちの尻尾を掴もうとしていたら、呑気に構えてはいられまい。その線が濃厚だろう」

     頷いたアイメリクは卓上の紙束から一つを抜き出し、それを眺めつつ口を開いた。
     
    「先の暴動に加わった平民たちだが、一部の者に薬物使用の疑いがあがったのだ。強いものではないが、感情の抑制をなくし、判断力を低下させる興奮剤のようなものだ。シュガルドでは使用も取引も禁止されている。取引の裏が取れれば首謀者を間違いなく捕らえることができるだろう。問題は、全員が薬物を摂取した覚えはないと主張していることだ」
    「嘘をついている可能性は?」
    「もちろんありうる。しかし、彼らはみなとある集会に参加していたのだ」
    「集会……?」

     イシュガルドでは教会によって日常的に集会が開かれている。正教の教えを説き、悩みを聞き、集う人々がよりよい生活を送れるよう教え諭す場である。主には正教の教えを説くものであるが、教会や司祭によって内容に差異があり、食べ物が配られることもあるという。

    「なるほど。教会からの配られる食糧に薬物を混入させれば、気づかれることなく多人数に摂取させることができる……そうやって平民を焚き付け、暴動を起こさせた。であれば、その教会の司祭が深く関わっているのでは?」

     話の中で得た情報で推理を組み立てるアルフィノに、アイメリクは目を伏せ首を振った。
     
    「集会を開いた司祭への尋問はすでに行っているが、関与を否定している。それに、配給の食糧は複数の貴族からの寄付で賄われている。教会側が無関係だった場合、それ以上出処を探るのは難しい」

     手詰まりを感じ、アルフィノは悔しさに手の中のバンダナを握りしめた。ゴリッ、と手のひらに食い込む硬い感触に違和感を覚え、くしゃくしゃに丸まったそれを広げた。

    「襟章……?」

     包まれていたのは繊細な意匠が施されたバッジだった。大きさからみて襟につけるものだろうか。

    「それは?ルカ殿のものだろうか」
    「いえ……しかしどこかで見た覚えが……」
    「ふむ……ルカ殿のものでないとするなら、彼を攫った賊のものだろうか。手がかりになるだろうと密かに奪ったのかもしれない」

     手の中にあったそれをつまみ上げ、目の前に翳す。ランプの光に照らさしだされたその文様は確かに覚えのあるものだった。
     
     どこで見たのだろう、そう前ではない気がする。繋がりがあるのは恐らくウルダハの商人だ。ウルダハに立ち寄ったのはナナモ女王陛下の回復を聞いた時で――。
     
    「ロロリト……」
    「何か気づいたのか?」

     記憶を遡り、たどり着いた人物の名が無意識に口からこぼれ落ちた。かすかな呟きを拾い上げたアイメリクに肯定を返す。

    「これはウルダハでも有数の大商会、東アルデナード商会の紋です。そしてその会長ロロリトは……私たちに女王殺害の濡れ衣を着せた人物でもある」
    「なるほど、なかなか因縁のある人物のようだ。しかしそれほどの大物が手掛ける商会とは……難儀だな」

     アイメリクは新たな難問が立ちはだかったとばかりに溜息をついた。しかし、勝算はあると見込んでいる。ロロリトは辣腕の商人だが、ウルダハの政治を担う砂蠍衆の議員でもある。他国の禁制品を取引してクーデターを助長させたなどと外聞の悪い話は本位ではないはず。

    「私が行きましょう。話のあてはあります」
    「……大丈夫なのか?」

     その眼には心配の色が浮かんでいた。かつて己を陥れた人物を前に冷静に渡り合えるのかと。もちろんあの強大な権力を持つ冷徹な商人に臆するところはある。しかしルカの命がかかっているのだ。
     
    「はい。必ず取引の証拠をつかんできます」

    これは私にしかできない戦いであると己を奮い立たせ、アルフィノは腹を決めた。

      
     ――――――――――


    「貴殿もまったく強情なことだ」

     薄暗い石造りの倉庫に呆れたような声が響く。イシュガルドで救国の英雄と呼ばれた男は腕を天井から垂れ下がった鎖に繋がれ、こちらの声掛けに焦点の合わない目を向けた。全身に呵責の痕が散らばり、無事な皮膚の方が少なくなるほど痛めつけても未だ支配できていない。
     どれほど痛めつけ、薬で正常な判断を奪ってもなお精神を保っている。その自我の強さに薄気味悪さを感じつつもあった。

    「まさか助けがくるのを待っているのかね?フォルタン家か貴殿を庇い立てると……実に愚かだ。四大名家同士が本気で事を構えることはない。少し考えればわかるだろう?そんなことをすればイシュガルドは割れる。いかに情の深いフォルタン伯といえ、四大名家の均衡を崩すようなことはすまい。これでわかったかね?助けなど来ないと」
    「…………」
    「……チッ」
     
     揺さぶりをかけようとそう告げるが、どうでも良さそうに一瞥して目を閉じる様子に苛立ちを覚え、倉庫から立ち去る。

     もしや精神干渉に何らかの耐性があるのだろうか。かの英雄はテンパード化しないが故に、蛮神討伐が可能なのだと気聞いたことがある。そうだとしたらとんだ時間の無駄だ。神殿騎士団に嗅ぎつけられては面倒だ、もう殺してしまおうか。山奥にでも放置しておけばモンスターどもが綺麗に食い尽くしてくれるだろう。

    「旦那様、神殿騎士団総長のアイメリク様がお見えです」
    「私は忙しい。お帰り願え」
    「そ、それが……対話に応じないなら強行突入も辞さないと……」
    「なんだと?」

     まさか嗅ぎつけたというのか。しかし英雄の拉致は件の商会の伝で雇った傭兵にやらせた。そうそう繋がりを辿れるとは思えない。考えていても埒が明かないか。苛立ちを振り払い、神殿騎士団の者を応接室へ通すように伝えた。

     
    ――――――――――

     
     応接室の豪奢なソファに腰掛けたアイメリクと、その後方に立って控えるアルフィノと1人の神殿騎士は、遅れて入室した中年の貴族に礼をした。
     
    「これはこれはアイメリク卿、満足なおもてなしもできず申し訳ない。事前の約束もなしに他人の館に招き入れてもらえるとお思いとは、さすが教皇の血を引くものという自負をお持ちのようだ、して今日はどのようなご用件かな」
    「いいえ、どうぞお構いなく。断りもなく押しかけたご無礼については、後日改めて謝罪申し上げる。……貴公が我々の調査に、正しく応じていただけるのであれば」

     居丈高にアイメリクの正面のソファに腰かけ侮蔑を込めた視線を投げかける貴族に、こともなく嫌味を受け流したアイメリクは毅然と言い放った。

    「……なんだと?」
    「貴公が行ったこれらの取引についてご説明願いたい。ご存知であろうがこれらの薬品は、イシュガルド内での取り扱いが一切禁止されている」

     貴族はアイメリクが取り出し机に広げた書類を一瞥すると、馬鹿馬鹿しいとばかりに首を振った。

    「はあ……なにを言い出すかと思えば、そんなもの事実無根にきまっているだろう。大方、わが一族を陥れようとした者が吹聴したのだろう。神殿騎士団とはそのような下らない噂に振り回されるのが仕事かね?」

     嘲笑する貴族にアイメリクは一つ溜息をつき、後方に控える騎士に目配せをした。それを受けた騎士が数枚の羊皮紙をアイメリクに手渡す。それが卓上に並ぶと、貴族の表情が強張りみるみる青ざめていった。

    「馬鹿な……なぜそれを」

     卓上に並べられたそれらは、貴族の署名が記された明細書だった。

    「貴殿と取引をされた東アルデナード協会の会長、ロロリト殿にご協力いただき、取引の証拠としてご提出いただきました」

     アイメリクの後方に控えていたアルフィノが口をはさむと、信じられないといった表情で貴族が見つめてくる。不敵に笑ったアルフィノの脳裏によみがえるのは、かの大商人とのやりとりだった。

     
    ――――――

     
    「お忙しい中お時間をいただきありがとうございます。ロロリト殿」

     遡ること数日、場所はウルダハの東アルデナード商会の客間。アルフィノは緊張を張り付けた笑みで押し殺して、かつての仇敵と対峙していた。

    「ふん……暁の小僧め、クリスタルブレイブの件か?」
    「いえ、本日は別件です。お忙しいでしょうし単刀直入に申し上げましょう」

     東アルデナード商会の紋章が入った襟章を取り出し、ロロリトの正面のテーブルに置く。
     
    「これは東アルデナード商会の紋章で間違いありませんか?これを付けていた商人の取引について、お調べ頂きたいのです」

     襟章の隣に一枚の書類を並べる。使われた可能性のある薬品の一覧だ。ロロリトはアルフィノが差し出した襟章と書類を一通り眺めたあと、侮蔑するように溜息をついた。

    「確かに、我が商会の紋に間違いないが……なぜ儂がそのようなことを。我が商会に何人の商人が所属していると思ってる?暇だと思われているのであれば心外だな」
    「ロロリト殿、誤解しないでいただきたいのですが、これはお願いではなく忠告です」

     嘲笑するように歪んでいたロロリトの口元が引きつる。あえて強めの言葉を選んだことで注意を引くことができたようだ。

    「かの国がどういった状況にあるのかご存知でしょうか?」
    「……教皇が亡くなり新しい指導者が立ったと聞くのう。それに伴いエオルゼア三国との国交を回復したとか」
    「ええ、ですがそれは表向きの話。新しい指導者……アイメリク・ド・ボーレル子爵への反発は強く、規模は小さいですが暴動も起こっています。そしてイシュガルドに流れ込んだこれらの薬が、暴動を煽るために使われた可能性があるのです。これらはかの国では禁制品とされており、取引が発覚すれば処罰は免れられないでしょう」

     禁制品の取引を告げると、侮蔑するようだったロロリトの雰囲気が一変し、考え込むように腕を組んだ。やはり、配下の商人の独断だろうという読みは間違っていなかったようだ。ロロリトは悪辣だが賢い。その彼が他国の禁制品の密輸などしないだろう。少なくともすぐに我々にわかるようなやり方では。
     
    「ふむ、なるほど。我が商が他国の禁制品を密輸するような組織と思われるのは大変に遺憾であるな。直ちに調査の上、厳重に対処するとしよう」

     アルフィノは表情に出さず内心で悪態をつく。ロロリトは禁制品の密輸を身内の処分だけで収めたいようだ。しかしそれでは駄目だ。ルカの救出のためには取引の証拠が必要なのだ。
     
    「それだけでいいと思いますか?」
    「……なんだと?」

     一段低くなったロロリトの声に緊張で空気がひりつく。ぐっと唾を飲み込み、平静さを心がけて言葉を繋げる。ここが正念場だ。

    「神殿騎士団の調査が進みクーデターの首謀者が捉えられれば、取引相手も割れるでしょう。仮にそれが東アルデナード商会だったとしたら?クーデターを助長させた薬物を持ち込んだ商会のトップが、ウルダハの国政を担う人物だったら?イシュガルド側はどう感じるでしょうか」
    「…………」

     押し黙るロロリトの口元がへの字に曲がり、不満気な様子で考え込んでいる。重い沈黙の後、苛立ったため息が聞こえた。

    「……ならば、そなたはどうするのが最善だというのかね?」
    「!……そうですね、イシュガルドに恩を着せてやれば良いのではないでしょうか」
    「ほう?」

     アルフィノの提案はこうだ。
     
     『この取引は配下の商人の独断であり、商会としてはこの取引は本意ではなく甚だ遺憾である』という考えを表明し、取引をした商人を証拠とあわせてイシュガルドに突き出すのである。こうすることで身内の不始末を許さない誠実な組織として、イシュガルド側の心象も良くなるというおまけ付きだ。
     ロロリトが銅刃団を抱え込み堕落させていることを知ってるアルフィノからすると、そんなことを口に出すのは腸が煮えくり返るような心地だが、これも方便だ。ロロリトを乗せることさえできれば何でもいい。

    「ふん、暁の小僧が言うようになったではないか……。よかろう、調べがつき次第イシュガルドに証拠を送ってやる」
    「……!ありがとうございます」
    「せいぜい上手く使うことだな」
     

     ――――――

     
    「ちなみにこの取引をした商人は東アルデナード商会直々に告発があり、すでに神殿騎士団が身柄を抑えている。貴公はこれらの取引が正当なものであるというなら、その弁明を」

     貴族は言葉を失ったようにはくはくと口を開閉させた後、言葉なく項垂れた。その姿からは入室した時の尊大さは見る影もなく、追い詰められた罪人のそれだった。アイメリクが背後の騎士に合図を送ると、二人の騎士が貴族を連行していった。

    「では、我々は屋敷の捜索に入る。アルフィノ殿は、英雄殿が見つかったときに備えて待機していてほしい。おそらく彼も何等かの薬物を盛られている可能性が高い」
    「……わかりました」
     
     アルフィノが神妙な面持ちで頷くと、アイメリクは外で控えていた神殿騎士団の指揮を取るため退室した。そして班分けされた騎士たちが屋敷に踏み入る中、神殿騎士に扮したオルシュファンも、逸る心を抑えて続いていった。
      


     ――――――――――――


     
     ここへ連れてこられてからどの位経ったのだろう。

     陽の射さない倉庫で行われる呵責は時間の感覚を狂わせ、何日もここに囚われているような気がする。それでも体に対する加虐だけならまだ耐えられた。冒険者なんてやっている位だから痛みには耐性がある。だが薬がもたらす幻覚はどうにもならなかった。
     歪んだ視界に、恐怖を煮詰めたようなおぞましい物が映る。見えない何かが肌を這い回る。あるはずのないものが見える、感じることは精神的に相当なダメージだった。自分の感覚を疑いだすと全てが不安に思えてくるのだ。
     
     本当は、もう相手の洗脳に堕ちているのでは。ここで耐えていると思っているのも、自分が都合よく見ている幻覚なのでは。もしあの貴族が操るままに仲間を傷つけていたら、あいつが愛した国を手にかけていたら。

     そんなことになる位ならもうここで――

     一度頭をかすめた影はどんどん膨らみ、最後の手段までもが脳裏に過ぎったとき、焦がれてやまなかった声と、鮮烈な銀の光を見た気がした。


     ――――――――――


     その光景を見たとき、オルシュファンは血が沸き立つような怒りを覚えた。騎士たるものいかなる時でも冷静であれと教え諭されてきたが、幼い頃から心に刻み込まれきた訓示が一瞬にして消え去るほどの激しい怒りだった。

     一纏めにされた手首を天井から吊るされ、生命の躍動に満ちていた肉体は目を背けたくなるほど無残に痛めつけられていた。

    「ルカ、ルカッ!しっかりしろ!」

     傷に触れないよう、といっても触っても平気な場所がわからないほど傷だらけの体を、そっと下ろし毛布で包むが、その間ルカは身じろぎ一つせずぐったりと身を任せたまま、虚ろな目だけがふらふらと揺れ動いている。やはり薬物を飲まされているようだ。

    「すまない……もっと早くに見つけるべきだった……」

     あまりにむごい姿に怒りが沸き起こる。巻き込まれただけなのに命を懸けて戦い、この国の誰もが千年なしえなかった未来への道を切り開いた彼が、どうしてこのような目に合わなければならないのだろう。

    「…………オル、シュ」

     弱弱しく掠れた声に意識を引き戻される。意識を取り戻したのかと彼を見下ろすが、その目はうつろなままだった。いや、そもそも今自分はオルシュファンの姿をしていないのだから、彼が認識するはずがないのだ。

    「……生きて、たのか……」
    「ルカ……」

     ルカが茫洋と虚空を見つめながら、弱弱しく呟く。名前を呼んでもまるでこちらが見えていないかのように、ぼんやりと視線を向ける先にはオルシュファン・グレイストーンの幻覚が見えているのだろう。

    「……ずっと、会いたかった。あんたに、伝えたかったことがあるんだ……」

     言葉の届かないもどかしさに唇を噛むオルシュファンをよそに、ルカは彼だけに見えるオルシュファンに語り掛ける。

    「俺は……俺も、あんたが好きだ…………あのとき……ドラゴンヘッドであんたが気持ちを伝えてくれた時、答えられなかったのがずっと……心残りだった。……だって、あんたが居なくなってから気づいたんだ……はは、馬鹿みたいだろ」

     大切な秘密を語るかのように目を細め、けれど泣き出しそうに声を震わせるルカに、胸が張り裂けそうだった。私はここに居る、そんな幻影ではなく私を見て欲しい。と、そう言えたらどんなにいいだろう。今はその時ではないとわかっていても、自分への想いを虚空に吐き出すルカを見るのは耐えがたかった。
     
     密封された袋から薬品に浸した布を取り出し、ルカの鼻と口を覆う。貴族の男が所持している薬品が幻覚や興奮作用があるとわかったとき、念のためにと渡されていた鎮静剤だ。とろりと瞼がおちた顔は穏やかな寝顔そのものだった。今はただ、悪夢も体の痛みも忘れて安らかに眠ってほしい。その間に、すべての騒動には決着をつけよう。そしてその後で……。
     
    「すべて終わった後で……もう一度、その言葉を聞かせてほしい」

     覆っていた毛布ごと傷だらけの体を抱え上げ、部屋を後にした。



     ――――――――――



     ルカが目を覚ますと、そこは見慣れない病室だった。長いこと寝すぎた後のように、頭に霞がかったようにぼんやりしている。ひどく出来の悪い悪夢を見ていたような、現実と夢の境界が不明瞭でふわふわとした覚束なさがある。

    「目が、覚めたんだね」

     気だるい首を動かして声の方に目を向けると、泣きそうに目元を歪めて笑うアルフィノが見えた。掠れた声で名前を呼ぶとグラスに注いだ水を差し出された。体を起こして喉に流し込むと染み込むように心地よい。

    「悪い……迷惑をかけた」
    「…………ルカ、私は怒っているんだ」

     泣きそうな顔をキュッと引き締め、拳を握りしめたアルフィノに目を見張った。仲間には常に論理的で、クリスタルブレイブのことがあってからは尚更思慮深く、怒気をあらわにすることも無かったというのに。

    「武器も持たず、連絡もせず、ひとりで呼び出し先に向かうなんて無謀すぎる。……君に頼ってもらうには、私ではまだ足りないのだろうか」

     ぐうの音も出ない正論に罰が悪く視線を落とすが、最後の呟きは途方に暮れた迷子のようで、咄嗟に否定の言葉がでた。
     
    「そんなことはない、アルフィノにはいつも頼りっぱなしだ。特に、俺は政治やら経済やらはさっぱりだからな」
    「ならどうしてっ」
    「今回、イシュガルドにこだわるのは俺の勝手な感傷だ。それで仲間に迷惑はかけられないだろ」
    「……それなら、私だって……フォルタン家やアイメリク卿には返しきれないほどの恩がある。イシュガルドを救いたいのは私も同じだ。何より……私は、君を支えたいんだ」

     痛切な思いを目に浮かべたアルフィノは、ベッドの傍らに膝をつきルカの手を取った。華奢な手が傷だらけの硬い手を包み込む。

    「クリスタルブレイブに裏切られたあの日、吹雪の中私の手を引いて歩いてくれただろう。実はね、ウルダハを出てからドラゴンヘッドに着くまでのことをショックでほとんど覚えてないんだ。でも、君が繋いでくれた手が温かかったことだけはよく覚えている」

     あの日、オルシュファンを頼ってキャンプ・ドラゴンヘッドに行くと決めたものの、アルフィノは茫然自失として人形のように立ち尽くしていた。そんなアルフィノの手を引いて吹雪の中を歩き、食べようとも寝ようともしない彼に無理やり食事を取らせ、膝に寝かしつけて夜を過ごした。キャンプ・ドラゴンヘッドについた瞬間気が抜けて熱を出したのも懐かしい話だ。

    「絶望の底にいた私に寄り添ってくれたのはタタルと、オルシュファン卿と、そして君だ。そんな君が重荷を抱え込んで一人で傷つくのは嫌なんだ。君個人の感傷だろうと構わない。君の背負っているものを、一緒に背負いたいんだ」

     声を震わせながらも真っ直ぐに伝えられる思いに胸が締め付けられる。オルシュファンが死んでから、アルフィノもタタルもずっと寄り添おうとしてくれているのを知っていた。しかし自責や後悔の底の深く沈んだルカには、その優しさを受け取る余裕すらなかった。
     こみ上げる感情に目の奥が熱くなり、俯いたままぽすりとアルフィノの肩に額を預ける。アルフィノははっとしたように半歩後ずさったが、そろそろと背中に手を回した。

    「……誰かに責めてほしかった。オルシュファンが死んだのはお前のせいだ、お前がもっと強ければこうはならなかったって。だけどみんな優しいから、誰もそんなこと言いやしない。だから俺が、一番俺を許せなくて、この身を削ってイシュガルドに尽くせば少しは償った気になるんじゃないかって」
    「それで……自分を囮にするようなことを?」

     こくりと頷くと、回された手にぐっと力がこもった。

    「…………私も、もっと自分に治癒の技があればとずっと悔いていた。だから安直に君に自分を責めるななんて言えない。でも……それでも、君が自分の身を犠牲にしようとするのは悲しいよ」

     視界の端にアルフィノの頬を伝う雫が見える。自分の独りよがりの贖罪と、自分のことを思ってくれる仲間のどちらを取るかなど、考えるまでもない。
     
    「……俺は、色んなモノが見えなくなってたらしい。こんな俺でもちゃんと気に掛けてくれる奴がいるって今ならわかってる。悪かった、もうあんな真似はしない」

     顔を上げてそう言うと、アルフィノは涙を拭い晴れやかな笑顔で頷いた。

     

     ――――――――――



     新雪の積もった峠道には一人分の新しい足跡が残されている。はらはらと降る雪の中でもくっきりと残されたそれは片道分のみで、その持ち主がまだこの先にいるだろうと予測させる。

     件の貴族を捕縛した後、証拠品の押収やごっそり抜けた派閥の穴埋め、中止されたの式典の再開に、それに先駆けた都市軍事同盟との演習の準備に、と神殿騎士団は目の回る忙しさだった。
     神殿騎士団内部の大掃除に大きく関与したオルシュファンも、もちろん後処理に忙殺されていた。入院していたルカの見舞いに行くことすら出来ないほどに。彼が退院したことを聞き、オルシュファンは大慌てでフォルタン家に滞在しているアルフィノにルカの所在を聞きに行った。旅立たれては次に顔を合わせられるのがいつになるか、わかったものではない。

     アルフィノを訪ねると腰を抜かして驚かれたが、事情を説明すると喜ぶような怒っているような、はたまた泣きそうにも見える複雑な表情になった。

    「私からも申し上げたいことは山ほどありますが……まずはルカに会ってやってください。彼が一番、あなたのことに心を痛めていたから」
    「ああ、勿論。そのために貴殿の元へ参ったのだ。彼は今どこに?」
    「彼は――」

     キャンプ・ドラゴンヘッドの北、雲海に浮かぶ皇都がよく見える峠の上。小さな石碑の前に膝をつき、祈りを捧げる姿があった。どれほどそうしているのだろう、肩はうっすらと雪が積もり、微動だにせずその場に居たことがわかる。静かに佇む姿はまるで彫刻のようでもあった。

     静謐なその光景に声をかけるのを躊躇っていると、突風が慰霊碑に添えられていたニメーヤリリーの花束をさらっていった。皇都を隔てる雲海の淵にあるこの場所は、時折こうして強い風が吹く。雲海に散っていく花を見送る姿が寂しげで、ふと名前を呼んでしまった。

    「――ルカ」

     張り出した耳がピクリと揺れ、彼が恐る恐ると振り返る。その顔は驚愕に染まっていたが、それはやがて敵意と嫌悪へと変わっていった。

    「…………誰だ、お前」

     その唇から放たれた声に言葉を失う。彼はいつもぶっきらぼうながら、その声は静かで温かかった。まるで別人のように冷たく鋭い声に、怯みながらも続けるが、それは無残に打ち払われる。
     
    「何を、私は――」
    「オルシュファンだなんて言わないよな?あいつは死んだ、ここに来るはずがない。で、お前は誰なんだ?あいつの姿で俺の前に出てくるなんて、いい趣味しているな?」

     ルカが背負った弓を取り、矢を番える。能面のように表情のない顔に目だけが爛々と輝いていて、肌を刺すような殺気に冷や汗が流れた。 彼の敵意を真正面から受けるのは初めてだった。それは冷たく、鋭い。彼との距離は十数ヤルムは離れているのに、喉元にひたりと刃を突きつけられているような気さえする。

     ルカから以前、暁が敵対するアシエンという敵に仲間の体を乗っ取られたことを聞いた。そういった常識外れの相手と戦っているのであれば、死んだ友人の姿で惑わそうとしていると取られてもおかしくはない。逆の立場ならオルシュファンも大切な人の死を愚弄されたと激怒しただろう。

     彼の敵意をそう理解したオルシュファンは、ゆっくりと両手を上げた。

    「……聞いてほしい、私は紛れもなくオルシュファン・グレイストーンだ。訳あって死を装っていたのだ。アイメリク卿に聞けば確かだとわかるだろう」
    「…………」

     わずかに瞳を揺らしたルカは、片手に矢を番えたまま耳につけたリンクパールに手を伸ばした。

    「……アイメリク、今目の前にオルシュファンを名乗る人間が居るんだが、どういうことだ?あんた何を知っている?」

     剣呑な声で通信を飛ばすルカの目が、相槌を返す度に困惑にゆらゆらと揺れる。通信を終えると弓を持った手を下ろし、オルシュファンを見つめた。その顔には困惑の中に僅かな期待が見え隠れしている。

    「本当に…………オルシュファン、なのか?」
    「ああ、そうだ」
    「…………っ」

     はくりと言葉にならないものを吐き出すように、ルカの唇が震える。手から滑り落ちた弓が地面に着く前に走り出した彼は、そのままオルシュファンに抱きついた。その勢いを受け止めきれず、ルカに押し倒されるように雪の中に倒れ込む。

    「っ、と……」
    「このっ、馬鹿野郎!!」

     ぱたぱたと降ってくる水滴に顔を上げれば、逆光を背負ったルカが顔を歪ませて大粒の涙を降らせている。

    「俺がっ!俺が、今までどんな思いで……ッ!俺があんたを死なせたから、だからっ!」

     激情のまま吐き出される言葉は支離滅裂で、闇雲に振り下ろされる拳が胸を叩く。鍛えた冒険者の拳は痛烈なものだったが、悲痛な表情と声のほうがよほど胸に刺さった。

    「っ、お前を庇ったのは私の判断だ。自分を責めることは――」
    「それでも!!」

     オルシュファンの言葉を遮り、血を吐くような叫びが静寂を揺らした。

    「俺がもっと強ければ!あんたは死ななかった!!」

     叩きつけられた拳が胸元の服を握りしめ、力を込めすぎて震えている。項垂れて隠れた口元から、噛み殺した嗚咽が漏れる。その痛ましい姿に手を伸ばさずにはいられず、体を起こして震えるルカを抱きしめた。――彼の中で、自分の存在がそれほどまで大きくなっていることに一瞬感じた暗い喜びは、今は目を背けておくとしよう。
     
    「お前がどれほど強くなろうと、すべてを救うことはできないのだ」

     子どもに言い聞かせるように語った言葉に、腕の中のからだがビクリと震える。だがそれは真理だ。どれほど戦略を練り、指揮を上手く回し、連携を取っても、死傷者の数をゼロにはできない。それをオルシュファンは痛いほど知っている。前線の指揮官として、何年もその無情と向き合ってきた。

    「わずか一歩分の立ち位置で、数イルムの剣筋のズレで、人の命運は決まる。そんな命運など人がどうこうできるものではあるまい。だがこうして私はどうにか生き延びることができたし、お前を守ることもできた。今は互いの命があることをただ喜んで良いのではないか?」

     俯いた背を撫でながらそう言うと、暫く嗚咽だけが雪の中に響いていた。やがて涙に濡れた顔が上げられ、くしゃくしゃに歪んだままコクリと頷く。それに安堵して頬を流れ続ける雫を苦笑しながら拭ってやる。

    「ほら、もう泣くな。お前に泣き顔は似合わんと言っただろう」
    「っほっとけ……勝手に出てくるんだから、仕方ないだろ」

     ずずっと鼻をすすり、乱雑に顔を拭ったルカに改めて向き直る。

    「とはいえ、お前を騙していた以上経緯は説明せんとな。なかなかに込み入った話となる、場所を移したいのだが……」
    「なら、久しぶりに雪の家を使わせてもらうか」

     立ち上がったルカに続き、峠道を下る。まだオルシュファンの生存は公にされていないため、顔を晒してキャンプ・ドラゴンヘッドに入っては大騒ぎになる。外套を深く被り、ルカに続いてキャンプに入る。衛士にルカが声をかけると、二つ返事で雪の家へと通された。自分がいなくなった後も、彼がこのキャンプの一員として迎えられている様子を垣間見て胸の奥が温まるのを感じた。

     暖炉に火を灯し、温かい紅茶も入れた。長話の準備は整った。

    「……さて、聞かせてもらおうか」

     暖炉の前に椅子を引いたルカが腰掛け、真っ直ぐに見つめてくる。その向かいに同じように椅子を引いて、紅茶を一口啜り口を湿らせる。

    「そうだな。あの教皇庁の後――」


     
     ――――――――――



    「はぁ…………とりあえずは理解した」


     未だ夢ではないかと疑っていたたオルシュファンの生存に、それを裏付ける舞台裏の出来事を聞いてようやく現実だと認識できた。それと同時に、徒労感とモヤモヤとしたやるせなさに頭が痛くなりそうで、頬杖を着いた手でこめかみを強く揉む。
     
    「理解はしたが、納得はしてないぞ」
    「そうだろうな」
     
     苦笑するオルシュファンを眉間に皺を寄せて睨みつける。彼の代わりにイシュガルドを守ると決めた悲壮な決意も、散々痛めつけられたことも、更に言えば暁の仲間たちに説教され肩身の狭い思いをしたことも、オルシュファンが死を偽ったせいで負ったしなくてもいい苦労だった。そう思うと一発どころか、最大限の自己強化バフをかけた上であらん限りの攻撃を叩き込んでやりたくなる。

     しかし、窮地にあったアイメリクのためと思うと怒りのぶつけ先を見失う。
     
     彼の配下である神殿騎士団に失脚を望む者が潜み、さらにどこまで根を伸ばしているかもわからない。敵と味方の区別もつかないような状況で、絶対的に信頼のおける人物がマークされることなく動き回れるのは大きなアドバンテージになる。それは組織に疎いルカにもわかる理屈だ。そしてそれは正体を知られていないことが大前提で、事実を知る人間は最小限に留めるべきということも。

     ぶつけ所のない怒りに大きくため息をつき、刺々しい空気の中すっかり冷えた紅茶を流し込む。冷たくなっても損なわれないイシュガルドティーの香りがすっと鼻を通り抜けた。
     

     
    …………まぁ、いいか。
     
    「よし、とりあえず1回殴らせろ」
    「……そうだな。甘んじて受けよう」

     椅子に腰掛けたままのオルシュファンの前に立ち、目を瞑り歯を食いしばった彼の頬に渾身の平手を叩きつける。スパァン!と鳴り響いた子気味良い音に、蟠っていた胸のモヤモヤが少しは晴れた気がした。

    「これでチャラだ」
    「いいのか……?正直骨の一本や二本は覚悟していたが……」

     満足気に鼻を鳴らすルカに、拳がくるものと身構えていたオルシュファンが呆気に取られる。

    「あんたが生きていて、俺も生きている。それで充分だろ」
     
     オルシュファンが生きていることの前では、徒労に終わったあれこれなど些細な問題でしかない。燻った鬱憤などは今の平手で十分だ。竜詩戦争は終結し、アイメリクは議長を続投し、クーデターを企てた貴族は捕まった。これ以上ないほどの大団円だ。
     
     先に向けられたオルシュファンの言葉をそのまま返すと、ぽかんとした表情が擽ったそうな微笑みに変わった。


     
    ――――――――――
     
     

    「…………ところで、お前は私に言いたいことがあるんじゃないのか?」
    「言いたいこと?」

     どこか落ち着かない様子のオルシュファンに問いかけられた言葉に心当たりがなく、ルカは首を捻った。

    「無茶をしたことに対する謝罪……?いや、それはお互い様だろ」
    「……お前をあの屋敷から救い出したとき、自分が何を言ったか覚えていないのか」
    「んー……あの時は記憶が曖昧で……」

     屋敷に捕らえられていた時は薬のせいもあって現実と幻覚の違いもわからず、何を口走ったのかも覚えていない。酷い悪夢から目覚めたら病室だった、というのが体感だ。そう答えるとショックを受けたように頭を抱えるオルシュファンにわけがわからないと顔を顰める。

    「いや、覚えてなかろうと本心に変わりはあるまい……お前の気持ちを知った以上、手をこまねいている必要もないだろう」
    「何の話だ。勝手に納得するな」

     酷く落ち込んだかと思えば勝手に何かの結論を出したオルシュファンに不気味さすら感じる。俺の何を知ったというのか、というか俺は何を口走ったんだ。

    「ふふ……覚悟しておけよ、我が友」
    「だから!何の話だ!人の話を聞けよ!!」

     開き直ったオルシュファンに熱烈に口説かれたルカが陥落し、かつての告白の返事をもう一度言わされるのは時間の問題である。



     ――FIN――
     
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