マメシュファンSS 教皇庁から帰ってきた後、ルカは狂ったように戦いに明け暮れていた。『自分がもっと強ければ』そんな後悔の念に駆られ、半ば八つ当たりのように手あたり次第に魔物を蹴散らしていく。そしてボロボロになった体を引きずり、気絶するように眠りにつく。そんな日が続いていた。
「酷い面だな」
「……ほっとけ」
ステファニヴィアンから依頼のあった機工兵器改良の素材を渡しにスカイスチール工房に行くと、工房の主が苦笑しながらそう言った。
「あー……もしお前が良ければだが、こいつも連れていってくれ」
そう言って差し出されたのは、忘れようもない盟友の姿をした魔導人形だった。その姿を見ると泣きたくなるほどに胸をかき乱されるが、貰わないという選択肢はなかった。歩き出すと一生懸命に後ろをついてくる小さな姿に何とも言えない気分になるが、次の依頼をこなすため再びクルザスの雪原へと向かう。
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出された依頼を片っ端から引き受け、魔物の群れに突っ込んでいく。疲労で足がおぼつかないが、まだ足りない。この程度でへばっているようでは何も守れない。
膝をついて乱れた息を整えていると、少し離れた場所にいた魔物が様子を伺いつつもじりじりと近寄ってくる。舌打ちをして力の入らない脚で立ち上がろうとすると、目の前に割り込んだ影があった。それは小さな剣と盾を構えた盟友姿のマメットだった。
「……ッ!!」
その姿が彼の最期の姿と重なって咄嗟に体が動き、渾身の一撃で魔物を仕留めた。振り返ってその姿を確かめ、傷のないことにほっとすると、力が抜けてふらりとよろめく。しっかりしろ、俺はもっと強くならなきゃいけないんだ。そう言い聞かせて次の標的を探しに行こうとすると、また小さな姿が飛び出してくる。まるで自分を行かせまいとするような姿に、頭にカッと血が上った。
「こいつ……!」
いや、マメットにいら立ってどうする。持ち主が立ち止まっていたらその周囲を自由に動き回るよう設定されているだけだろ。そう思い進路を変えようとすると、また行先を阻むかのように立ちふさがる。……本当にそうなのか?
自分を背にして周囲を警戒するように盾を構える姿がいじらしく、なんだか毒気を抜かれてしまった。
「はぁ……わかったよ。今日はもう終わりだ」
武器を仕舞うとそれを肯定するかのように拳を握る姿に、本当にただのマメットだろうかと疑わしくなってしまう。次ステファニヴィアンに会ったらどういった仕様なのか聞いてみよう。
ーーーーEndーーーー