守りたい兄様と守られるだけが嫌な弟 うわぁん、と上がった子供の泣き声に、フィンは顔を上げた。声のした方を見てみれば、フィンが物色していた出店とはちょうど反対側の露店の前に、大男と少女が立っている。大男の顔は真昼間のマーチェット通りにふさわしくなく酒で赤く染まっており、少女は腕の中のぬいぐるみを抱きしめて大声で泣いていた。
そんな二人の田間に落ちているのはアイスクリームだ。アイスを下に、コーンを上にして地面に落ちたそれはもう食べられたものではないだろう。加えて、男のズボンのすそには白い染みがついている。
不味いぞ、とフィンは背中に冷や汗をかいた。酔っ払った男の脚に、アイスクリームを持った少女がぶつかってしまったのだ。
「この、クソガキ!」
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