詰め合わせ・ハワイ等でバカンスを楽しんで欲しい

「なんでプロ野球選手ってオフはハワイでゴルフするんですかね」
「怪我が少ないスポーツ且つ使う筋肉が近い且つステータスを自慢しやすいから、じゃないか？あと、ハワイは暖かい」
「なるほど……」
「お前もいつまでも俺のお下がりのゴルフセットじゃなくて新しいやつ買ったらどうだ？」
「え？嫌ですよ。クリス先輩のが良いんです」
「そうか？（まんざらでもない）」
「ここに『滝川』って名前書いてあるのがいいんですよね、ステータス自慢に見せびらかすのが」
「……」




・のんびり散歩して欲しい

今日はクリス先輩も俺もオフ日だ。
天気もいいし、たまにはのんびり散歩でも……と外へ出たのは良いけど。
「なんかこう、ウズウズしますよね」
走り出したくなる。
「走ったら単なるいつものランニングだろう……」
「そうなんですけど……じゃあ、先輩なんか喋ってくださいよ」
「無茶振りすぎないか？」
散歩のイメージとしては、季節の空気を感じながら談笑しつつ歩く感じなんだけど。
クリス先輩と談笑。
「そんなに難しく考えるな」
「え？」
「別に話なんかしなくてもいいんだ、ゆっくり歩こう……」
「……」
そういえば、こんな雰囲気前にもあった。
あれはまだ青道だった頃。
先輩と他愛もない話をしながら歩くの好きだったなあ。
懐かしい。
今もこうして、先輩と並んで歩いていられるなんて。
幸せ以外に言葉が浮かばないな。
「クリス先輩」
「ん？」
「好き、ですよ」
「……」
「……」
「……」
「……ん？」
なんだか先輩の歩みがめちゃくちゃ早くなっていく気が。
「えっ、ちょ、先輩！？のんびり散歩は、」
これは競歩では。
「早く帰るぞ」
「さっき『ゆっくり歩こう……』て言ってたじゃないですか！」
「お前が悪い」
「ええー」

結論。
昔と違ってだいぶせっかちになりました。




・二人暮らしで予想外の積雪、その後の行動が見てみたい

関東を襲った記録的豪雪。
交通機関はすべて麻痺、暫くは家から出られないことになった。
「だから言ったじゃないですか、実家に帰れって」
怒ったような、いや困ったような顔で御幸が言った。
「そうは言うが、お前一人に雪掻きをさせるわけにはいかないだろう……」
「前の道は区で掻いてくれるし、家くらいはなんとかなります」
「さっき屋根の雪被って埋まっていたくせに……」
「うっ」
引っ張り出せたら良かったものの、亡くなったりすることもあるのだ。
大雪というのは侮れない。
しかし、慣れない雪掻きは疲れる。
照り返しも酷いし、寒いのに汗をかいてきた。
「ふー……」
御幸に付けさせられたスキー用のゴーグルを外す。
「先輩！風呂入ってください」
「ありがとう」
「ちゃんと温まってくださいね」
「わかった」
御幸は風呂から出たばかりだし、今日はもう無理はしないだろう。
玄関までは道も作れた。
あとはまた考えるとして、とにかく温まりたい。
俺は急いでバスルームへと向かった。




「はあ……」
熱めの風呂は体の芯まで温めてくれて気持ちよかった。
「出たぞ」
台所の御幸に声をかけると、甘いかおりがする。
「あ、おしるこ飲みます？」
「飲む」
「余ってた餅入れたんで」
目の前には御幸特製のおしること漬物。
もちろん、二人分。
これを飲めるのだから、残った甲斐があったというものだ。
「うま……」
湯気の向こうで御幸が笑う。
大雪は侮れない。
けれど。

（たまにはいいものだ……）






・おにぎり屋の新メニューが気になります！（クリ御？）あとバレンタインの特別メニューとか…(*´ω`*)

去年は迷走したバレンタインデーが今年もやってきた。
（おにぎり屋でバレンタインとか関係ない気もするけど、商売として便乗したい気持ちもある）
とりあえずスーパーで大袋のチョコレートは買ってきたから、ひとつずつあげるとして。
「それだけじゃあなあ……」
インパクトに欠ける。
おにぎりをハート型にしようとか考えたけど、やっぱり握り方にこだわりがあるし形が変わると味も変わる気がする。
「あ！」
じゃあ、海苔をハート型にすればいいんじゃないか？
確か100均で海苔パンチなる型抜きの機械を見たことがある。
「よし」
一つはハート型の海苔、もう一つは抜いたあとの海苔。
そうすればどちらもハートだし無駄にはならない。

方向性が決まってほっとした俺は、いそいそと100均へ向かった。



✱✱✱


「で、これが試作なんですけど」
「かわいいな……」
バレンタインデーも迫ったある日、俺は御幸に呼び出されて店にいた。
御幸は仕事に対してとても真面目だ。
追求心も強い。
完璧主義とも言える。
「ハート型に抜いたあとの方は、ハートに桜デンブを入れてみました」
「うん……」
見事にピンクのハートだ。
かわいい。
凄くかわいいが。
「……食べにくい」
「え？」
「あ、いや！食べてしまうのが勿体無いな」
「おかわりたくさんあるので」
「ははは」
そういうことじゃない。
苦笑いを押し殺すようにおにぎりを一口食べる。
甘さとしょっぱさがちょうどいい。
「美味いよ」
「よかった」
「……」
御幸が作ったハートを、何人のやつが食べるのだろう。
確かに美味しいけれど。
（なんだか、少し苦いな……）




バレンタインデー当日。
ハートに抜かれたおにぎりは、こっそりクリスにのみ出されたのでした。

「やめたのか？」
「面倒なんで」

御幸の心は御幸のみぞ知る。