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    れなこ

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    れなこ

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    カカイルワンドロ「倦怠期」
    倦怠期を恐れて変わろうとするせんせと、甘やかしたいkksさん。

    「よし! なかなか美味そうだな」
    イルカは卓袱台の上に並んだ料理を眺め、満足げに頷いた。
    豚肉と大根の煮物にサバの塩焼き。どちらも少し焦げてしまったが、それはそれで手作りの味らしくていいだろう。食欲をそそるいい匂いだ。茄子の味噌汁もあるし、白米も数分前に炊けた。あとは恋人が帰ってくるの待つだけ。
    イルカだって料理が出来ない訳ではない。一人暮らしも長いのだから、一通りの事は出来る。でも、こうやって恋人の為に作るのは初めてだった。あの男は、一体どんな顔をするだろう。

    それは昨夜の事。
    中忍仲間との飲み会で、一人が同棲中の彼女と上手くいってないと嘆いていていた。アルコールが入っている所為もあるのか、机に突っ伏してもう終わりだと騒ぐ男に、「ただの倦怠期だ」「乗り越えたらまた上手くいく」と皆が宥めたり励ましていた。

    イルカには付き合って一年半経つ恋人がいる。
    気が付いたら同棲状態になっていた。
    はたけカカシ。
    里屈指の強い忍で、ビンゴブックにも名を連ねる有名人。
    漠然と憧れのような気持ちを抱いていた人に告白され、付き合うことになった。だが、未だに平凡な自分のどこがよかったのかは分からない。カカシに聞いても「全部」なんて、蕩けた声と顔で言うから、全然わからない。
    だけど今まで大きな喧嘩もなく、仲良くやっている。

    自分達に倦怠期はあっただろうか?
    帰り道、酔いが回った頭で考える。

    (うん、ない。)
    今でもカカシの姿を見かけたら、遠目であっても胸は高鳴る。イラつくどころか忙しい任務の合間に食事の支度や掃除をしてもらって申し訳ないくらいだ。

    (でも待てよ)
    ふと気が付く。
    イルカはそうでも、カカシの方はどうだろうか。
    どちらかと言えば自分はズボラだし、洗濯はため込むし掃除も適当。カカシが任務でいない日は食事も作らずにカップ麺で済ませている。素直に甘えるのも苦手で可愛げもないときたら、いつ愛想を尽かされてもおかしくない気がしてきた。
    相手の告白から始まった関係とはいえ、今やカカシがいない生活なんて考えられない。
    一気に酔いが覚めた。

    早速、イルカは三日間の任務から戻って来る男のため、食事の用意をすることにした。
    数分前に「今から帰る」という式もきた。そろそろだろう。冷蔵庫から白菜の漬物を取り出していると、玄関の方から音がした。

    「おかえりなさい!」
    「ただいま」
    三日ぶりに見る恋人は少しくたびれていたが、イルカの姿をみとめると、ふにゃりと柔らかい笑みを浮かべた。
    焦った様子でサンダルを脱ぎ、額当てを放るカカシ。
    伸びてきた手に捕らえられ、痛いくらいに抱きしめられてしまう。
    「イルカせんせ、会いたかった」
    「大げさですよ」
    たった三日離れてただけじゃないか。と、笑い飛ばそうとしてハッとする。
    いつもと同じじゃだめだ!
    カカシと同じようにとはいかないが、自分の気持ちも返さなければ!

    「俺も、会いたかったです」
    男の背にそっと手を回してみると、体温がグッと近くなる。
    恥ずかしい。めちゃくちゃ恥ずかしい。火が出そうなほど顔が熱い。
    だけど、想いは言葉にしないと伝わらない。

    「今日のせんせは素直だね」
    耳元で聞こえる声は弾んでいて、さらに暑くなる。ドキドキと心臓の音がうるさい。
    抱きしめられたまま耳朶を甘く噛まれて、変な声が出た。それに気をよくしたらしい男は口布を下ろし、耳の下から鎖骨に向かって啄んでくるのだが――。
    「あ、メシ! 食いますか? 俺作りました!」
    このまま流されてはダメだ。思い切り肩を押して叫べば、カカシは口を薄く開け、目を丸くする。
    「せんせが?!」
    力いっぱい叫ぶから、そんなに驚く事かと苦笑した。でもそうだろう、いつもカカシに甘えっぱなしだ。
    「はい。お口に合うか分かりませんけど」
    イルカの言葉にカカシは今に進み、感嘆の声を上げる。
    「美味しそう……。でもどうしたの?」
    「いや、カカシさんに頼りっぱなしっていうのも悪いなって思って」
    「気にしなくていいのに」
    卓袱台の上に並ぶ料理を見て瞳を輝かせる恋人。その表情を見ただけで作ってよかったと思うのは、さすがに気が早すぎるだろうか。

    一口食べるごとに美味しいを繰り返すカカシに笑いながら食事を終えた。
    こんなに喜んでくれるのなら、毎日は無理でも週に何回かは作りたくなってしまった。



    「カカシさん」
    風呂を済ませ、愛読書を片手にベッドの上でくつろぐ男に声をかける。
    イルカも風呂を済ませた。濡れた髪のまま大股で近寄り、カシの膝の上に腰を下ろした。
    ここからどうすればいいかなんてわからないが、とにかく自分から積極的に甘えに行かなくては。いつもカカシからの手を伸ばしてくるのを待っているだけなのだ。何か変えないと飽きられてしまう。
    首に腕を回し、キスをしようと顔を近づけるが――。
    「せんせ! ちょっと!」
    「……いやでした?」
    鼻先が触れたところで止まる。帰って来た時はシたそうだったが、今は気分ではないのだろうか。任務の後で疲れているのかもしれない。
    それならば仕方がないと膝の上から降りようとするが、腰を掴まれていて動くことが出来ない。どういうつもりかと男の顔を見ると、困惑した表情を浮かべていた。
    「嫌じゃないよ。嬉しいよ」
    「なら……」
    「でも、今日変じゃない? 俺がいない間に何かありました?」
    首にかけたままのタオルで髪を拭いてくれる手は優しい。
    「えっと……」
    いきなり今までにない行動をしていたら、カカシだって不思議に思うだろう。だけど、友人の倦怠期の話を聞いて不安になったなんて言えない。思わず目を逸らせば上忍の強い力で顎を掴まれ、目を合わせるしかなくなった。
    「もしかして、浮気?」
    「するわけないだろ!」
    「でも、男が優しい時ってやましい事がある時だってイチャパラに……」
    (そう言うアンタも男だろう?!)
    ツッコミよりも誤解を解きたくて首を大きく横に振る。
    「浮気なんてしてません!」
    大きな声で言い切れば、カカシは自嘲気味に笑う。その表情に、胸がひどく痛くなった。
    「じゃあ、好きに人でも出来た? 別れたい?」
    イルカの頬に添える指は微かに震えている。すかさず手を重ねた。
    「……俺は、カカシさんに嫌われたくなくて」
    「え?」
    「だって、メシの支度も掃除も、カカシさんにやってもらってばっかりじゃないですか。洗濯だってたまにしかやらねえし。あと、全然可愛くもねえし……。こんなんじゃいつか嫌われちゃうんじゃないかって、怖くなったから……」
    カカシは自分にはもったいないくらい出来た恋人だ。未だに己を選んでくれた理由はわからない。だけど、ずっと傍にいたいのだ。その為にも、想いを伝える努力をしなければ。
    恋は一方的なものでも、愛は双方向からなるものだ。二人で大切に育てていかないと、簡単に枯れてしまう。
    俯いて拳を握りしめる。耳の近くで大きなため息が聞こえて、思わず大きく肩が震えた。
    「せんせは可愛いよ。可愛すぎて困るくらい」
    言葉の意味が分からなくて顔を上げた瞬間、強い力で抱きしめられた。
    「別に、料理も掃除も洗濯も、全部俺がやるのに」
    何がおかしいのか、カカシは笑いを堪えながら呟く。
    「カカシさんの方が忙しいのに、そんな事させられませんよ」
    「ありがと。せんせがごはん作って待っていてくれて、すごく嬉しかった」
    「カカシさん……」
    額に羽のようなキス。こそばゆくて声が出た。
    カカシはイルカを抱えたままベッドに倒れると、そのまま覆いかぶさる。顔中にキスの雨を降らせながら、今にも溶けてしまいそうな笑みを浮かべた。
    「イルカせんせ、すき」
    真っ直ぐな瞳。視線を絡ませたまま頷いた。
    「……俺も」
    「うん?」
    先を促すような返事。恥ずかしくても、最後まで伝えなくてはーー。
    「…………すき」
    やっぱり口にするのは恥ずかしくて、吐息のような声になってしまった。だけど男の耳にはちゃんと届いたようで、何度も音の鳴るキスをしてくれる。お返しのように顔中にキスをおくれば、カカシはくすぐったそうに笑い、おでこをグリグリと押し付けてきた。
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