書き途中。日が沈むとそこそこ涼しいが、それでもじんわりと汗がまとわりついて不快だ。イルカは持っていたペンを机に置き、畳の上にあったうちわ手繰り寄せる。
この中忍寮は冬は隙間風が吹いて寒いくせに、夏は夏で熱い。窓を全開にしているのに全然風が入ってこない。
いいかげんエアコンを買うべきだろうか。だけど資金と電気代が……。うだうだと考えながら寝転んでいると、窓辺から微かに固い音が聞こえた。
「こんばんは」
聞き覚えのある低い声。窓枠の上に男がいた。
弾かれたように起き上がったイルカは、背筋を伸ばして正座する。里では珍しい銀色の髪。額当てで左目を隠した覆面忍者といえば、木ノ葉の里に住む皆が知っている。はたけカカシだ。
今は教え子の上忍師をしている縁があるが、受付でやり取りをするのみでプライベートな交流は一切ない。それなのに、どうしてこんなところにいるのだろう。
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