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    れなこ

    おもにkkir🍆🐬

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    れなこ

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    今週中にpixivにアップできるかもって思ってたんですけど無理そうな気がしてきたので最初の部分を。まだ始まってないkkir。

    書き途中。日が沈むとそこそこ涼しいが、それでもじんわりと汗がまとわりついて不快だ。イルカは持っていたペンを机に置き、畳の上にあったうちわ手繰り寄せる。
    この中忍寮は冬は隙間風が吹いて寒いくせに、夏は夏で熱い。窓を全開にしているのに全然風が入ってこない。
    いいかげんエアコンを買うべきだろうか。だけど資金と電気代が……。うだうだと考えながら寝転んでいると、窓辺から微かに固い音が聞こえた。
    「こんばんは」
    聞き覚えのある低い声。窓枠の上に男がいた。

    弾かれたように起き上がったイルカは、背筋を伸ばして正座する。里では珍しい銀色の髪。額当てで左目を隠した覆面忍者といえば、木ノ葉の里に住む皆が知っている。はたけカカシだ。
    今は教え子の上忍師をしている縁があるが、受付でやり取りをするのみでプライベートな交流は一切ない。それなのに、どうしてこんなところにいるのだろう。
    「何かご用でしょうか?」
    「うん」
    意を決して声をかけるが、間伸びした口調で一言返ってくるだけ。
    一方的に緊張感を覚えながら、イルカはカカシの言葉を待った。
    (用があるとすれば……)
    中忍試験の御前会議でイルカがカカシに食ってかかった事だろうか。だけど、あれはイルカの謝罪で一応の決着がついたはずだ。それとも、ナルトとサスケが第三試験の本選まで通った事で、何か言いたい事でもあるのだろうか。
    カカシ視線は強い。イルカは顔を上げることが出来ず、すぐ近くの畳を見つめていた。たたでさえ暑いのに、握った拳から汗が滲み始めた頃、男はブーツも脱がずに部屋に降り立つ。しゃがみ込むと、視線を合わせようと顔を覗き込んできた。
    近い。
    受付でやり取りする時は間にカウンターを挟んでいる。それがない今、手を伸ばせば肩に触れられる距離にいるのはどうにも心許なかった。
    カカシの目は暗く、表情が読めない。
    男の目的がわからない事が怖い――。無意識に手を握り締めると、漸く口を開いた。
    「撫でて欲しいんですよね」
    「は?」
    予想していなかった言葉に、素っ頓狂な声が出た。
    「だから、俺の頭撫でてください。出来れば褒めながら」
    「へ?」
    一体何を言っているのだろう。全然意味が分からない。
    これでもか! というくらい目を開きながらイルカはカカシを見つめた。からかっている様子はない。後頭部をかきながら、バツが悪そうに低く唸っている。
    生徒の頭を撫でる事は日常だが、上忍を、しかも里の誉と呼ばれる男の頭を撫でるなんて命知らずな事、出来るはずがない。あまりのことに指一本動かせずにいると、カカシは不貞腐れたように続ける。
    「この前は撫でてくれたじゃない。アイツらと一緒に」
    「え?」

    言われてぼんやり思い出す。あれは先週か。任務報告にきた七班の三人を褒めた。
    中忍試験での成長が嬉しくて、もう立派な忍だと言っておきながら、感情のままに頭を撫でてしまったのだ。その勢いで近くにいた銀色の頭まで撫で回してしまったのだけれど……。
    「その件につきましては、大変申し訳なく……」
    あの時も謝罪したが、それでは足りないという意味だろうか。再度頭を下げるイルカの上で、制止する声が聞こえた。
    「謝ってほしい訳じゃないよ。撫でて欲しいの」
    「なんで?!」
    全然意味が分からない。
    「ダメ?」
    「ダメでは、ないんですけど、その……」
    畳に手をついて上半身を近づけてくる男から逃げるよう、イルカも仰け反った。
    果たして撫でるだけで済むのだろうか。そのまま制裁でも加える気か。カカシが何故そんな事を言うのか分からなくて、良くない想像が膨らんでいく。

    ふと、青灰色の瞳が間近で緩んだ。
    「ああいう風に、誰かに褒められたことってほとんどなくて……。何だかこの辺が温かい気持ちになったんです」
    カカシは左胸を片手で押さえる。顔はほとんど隠れているが、どこか嬉しそうにも見えた。
    はたけカカシは忍の才に恵まれてた男だ。六歳でアカデミーを卒業し、上忍になったのも十二才の時だったと聞く。その分、子供でいられた時間は短かったのだろう。
    イルカよりも四つ年上で、ビンゴブックにも載る里の看板忍者。どんなに強い人だって、誰かに褒められたくなる時くらいあるだろう。そう思うと、胸の奥がぎゅっと掴まれたように痛くなった。
    それを自分に求めてくると言うのはよく分からないが、事故とはいえ、きっかけを作ってしまったのだから仕方ない。

    「……わかりました」
    俺なんかでよければ。小さく呟けば、途端にカカシの表情は明るくなる。その分かりやすさはまるでアカデミ―生のようだ。
    「失礼します」
    一言断ってから手を伸ばす。
    ほうきのようだと思っていた銀色は、予想に反して柔らかい。まるで毛の長い犬を撫でているような感覚だ。気持ちよさそうに目を閉じるカカシを見つめていると、唐突に視線が絡んだ。
    「褒めてよ」
    「何をですか」
    「この前みたいに」
    そう言われても、この前の事を覚えていない。急かすようなカカシの視線に、冷や汗が浮かんでくる。
    「遅くまで頑張っていますね!」
    取ってつけたような言葉。だが、カカシは満足したらしい。
    「ん、ありがとう」
    いつも何を考えているか分からないと思っていた男が、恥ずかしそうに目を細めていた。そんな表情は初めて見るから、うっかり見入ってしまった。その間にカカシは立ち上がり、振り返ることなく窓から出て行ってしまう。
    「なんなんだ」
    窓を覗き込むが、男の姿はどこにもない。さすがの速さだ。
    濃紺の空には星が輝いていた。

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