首輪首輪
博士夢
〔⚠️夢主≠プレイヤー、夢主クセ強め個性、固定設定有りです。閲覧は自己責任でお願い致しますそれでも良いならGO↓〕
「博士〜来ましたよ、どうしたの?珍しいね仕事のこと以外の用事だなんて...」
ある日、用があると言われて博士がいる研究室に足を運んだ。部屋の中で博士の姿が見えて、私がいつものように軽い口調でそう言いながら近づいていくと、ふと博士の手に何かが握られていることに気づき、足を止める。
「来たか」
博士はそう言うと、ゆっくりとこちらを向いた。いつもと変わらない、テレビでできた頭に表情の読めない一つの目が映っている。
「...何をするのか知りませんが、手短に終わらせましょ〜よ、博士。私これでも少しは忙しいんですよ〜?誰かさんのせいで。」
「忙しいかなど私の知った事では無い、それよりも...お前に渡す物がある。」
そう言うと、さっきまで握っていた手をゆっくりと開き、それを自らの指にかけ、こちらに見せてきた。
「ええ...?首輪?」
それはシンプルなデザインで、一目で首輪だと分かった。が、その中心、真ん中辺りに何かが埋め込まれているように見えた。
「...これもしかしてGPSとか付けてます?」
「ああ。分かるか。」
あっさりと認めた。良いのか、それで。多少警戒感を強める。博士はそれを気にすることなく淡々と話を進め始めた。
「君の予想通り、これはGPS付きの首輪になっている。私の計画のためにも、君の行動については監視する必要があると感じたからだ。お前の頭脳は使えるが、その軽率な態度と考えのみで行動されてしまえば、私の計画に問題が生じる恐れがある。お前の動きを把握するには、これが合理的だ。」
「え〜?監視なんて大袈裟だなぁ、私そんなに悪いことしそうに見えます?」
茶化して返しつつも、内心少しまずいかなと思う。確かに博士の言っていることは間違いない。
今、喜びの時間が過ぎた後もなお、私が博士や他の敵に殺されていないのは、私が博士の「役に立つ存在」であるからである。だが、それを逆手に取ると「行動次第では邪魔となる厄介な存在」なのだ。まぁなので...こんなことしようとするのは分からなくは無い。
「そんな邪魔なんてしませんよ〜!流石に私もそれぐらいの身の程はわきまえているつもりですし、何もそんなことしなくても大丈夫じゃ」
「駄目だ。」
軽く抵抗はしてみたものの、最後まで聞かれることは無く私の言葉は遮られてしまった。
「無駄口を叩くのはやめろ。...私の計画の中で、お前の自分勝手な行動を取られれば、私の計画に支障が出る。そのリスクを排除するためだ。君は私に言われた仕事だけをこなしてれば良い。分かったら観念して諦めるんだな。」
「あ〜ハイハイ分かりましたよ...」
...これ以上嫌だと言ったとしても、博士の考えは変えることはできないだろう。そう感じて、渋々首輪をすることを認めることにした。
「でも付けるとしたら条件がありますよ〜」
「...お前の要件など聞き入れる気はないが?」
「いえいえ、簡単な事ですよ」
そう、簡単な事だ。
「博士が自分で私に付けてくださいね、それ。」
「...」
私の発言に、博士は微かに不満そうな表情をした気がした。
「自分で付ければいいではないか。」
「いや〜?だって付け方よくわかんないし、博士が付けてくれた方がしっかりできそうだし、あと...」
ニコニコしながら言葉を続ける。
「私が自分で付けたら、簡単に"外し方"も分かっちゃいますよ?」
「...そうかもしれないが、これは私が作った特注品だ。いくらお前でも簡単には外せない。」
「分かってないなぁ、博士。」
...どうせ付けるハメになるのだ、少しだけ、物を言わせて頂こう。
「言うことを中々聞かない忠犬の世話をするのも、それを躾けて制御できるようにするのも、主人の役目、でしょう?」
「...お前という奴は、本当に無駄口を叩くのが上手いのだな。」
「ふふっ、ありがとうございます。あぁでも博士の忠犬はヤーナビーちゃんか」
「褒めてなどいない。全く...」
ため息混じりに、そして心底呆れながらそう言うと、私に近づいて来た。
「...動くなよ」
そう言うと博士は、私の首に淡々と首輪を付け始めた。冷たい機械の手。機械のくせに、とても繊細で細かい動きが出来ている。カチッ、と乾いた音がした後、博士は私の首に付けられたそれを軽く引っ張った。取れないかどうか確認しているようだ。少し首が締まる。顔を動かす。それを気にすることなく、首輪が取れないことを確認できると、博士は私から離れた。
「これで満足か?」
「うわ、異物感がすごい。もうちょっと軽く出来なかったんですか?」
「重くなるのは当たり前だ。文句を言うな。」
「は〜い」
思っていたよりも、首に付けられたそれは重く、そしてとても冷たかった。これは慣れるまで首が痛くなりそうだ。
「...さて、これで用事は済みましたよね?そろそろ私は仕事に戻らさせてもらいますよ〜」
「ああ、構わない。」
そう言われて、少しホッとした。今日は、これ以上首輪についての話はしたくない。私が部屋の出口まで移動し、ドアに手をかけた時、博士が言った。
「___本当は、"君が自分で首輪を付けること"が気に入らないから、であろう?」
「......バレてましたかぁ」
...私が自分で首輪を付けるということは、博士の制限を「自分で」受け入れるという意味になるだろう。気に入らなかった。何より私はそんな面倒くさいことで縛られたくは無い。
一歩もその上も上手だなぁ、博士は。
「そういうこと、思っても言わないでくださいよー」
「ハッ、図星か。まぁ理由が何であろうと、私には関係無いがな。」
博士は私を嘲笑うかのようにして少し目を細めた。そのまま話を続ける。
「しかし何にしろ、これで君の行動は全て私の監視の元...掌控下にあることになる。...この意味が分かるのなら、その態度も、軽率な行動も、少しは考えるようにするのだな。」
博士が、博士自身の首元に指を差しながらそう言った。
「...そうですね。でも私は別に変わりませんよ。もちろん、仕事は今まで通りしますし、この態度も変える気はありません。だって私は昔からこうやって___捻くれているから。」
別に、怒ってるわけではない。が、なんとなく少し...ムカついた。
「たかが首輪一つで、私を制御できるだなんて思わないで下さいね。」
いつもの表情は崩さず、笑顔でそう言った私に対して、博士は私の発言を遮る事なく最後まで聞いていた。
「...面白い。これは確かに、主人がする世話や躾が大変そうだな?」
皮肉っぽくそう言うと、博士はまた目を細めた。さっさとは違う感情が混ざった、不気味な表情をしているような気がした。
「お前のその態度、一体いつまで続くかな?」
「...そう簡単にいかないと思いますよ〜?でもまぁ!これからもお互いに頑張りましょうね〜博士!」
やっぱり、こういうやりとりは楽しいと思ってしまった。これから自分がどうなるかなんて分かったものでは無いが、この人と過ごす日々は、退屈しなくて済みそうだ。そんな事を思いながら、私はいつもの仕事に戻っていった。
〔ご清覧いただきありがとうございました〕