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    めいな@mellnomee

    @mellnomee

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    isrnうぇぶおんりー開催記念
    以前ツイッターにアップした(と思う)同棲isrnネタその1

    可愛いのはお前その言葉を聞いた俺は固まった。
    え、今なんて?隣ですーすー寝息を立てる恋人を眺める深夜0時。俺は凍り付いていた。
    先に布団に入った凛を追いかけて隣に潜る。さっきまで一緒に見ていたホラー映画のワンシーンが頭から離れなくて、目が冴えてしまった。凛は慣れっこなのか鈍感なのか、眠れなくなるなんてことは無いらしい。自分の繊細さが今は少しだけ悔しい。
    どうしよう、こういう時に焦って寝ようとすればするほど眠れなくなるのは良くある話だ。それならばと羊を数え初め225匹目が柵を飛び越えた所で、その言葉が聞こえた。
    「……可愛いな……」
    それは確かに俺の隣から聞こえた。え?凛?寝言?そっと隣を盗み見れば、確かに凛は目を瞑っていた。狸寝入りじゃない限り本当に寝ているのだろうけれど、先ほどのそれはやけにはっきりと俺の耳に届いていた。
    気のせいかと思い、羊を再開する。あ、何匹だっけ。イマジナリー羊飼いである俺はまぁいいや、と200匹目をもう一度数え始める。
    「……可愛い……ふわふわ……」
    うんうん、羊はふわふわで可愛いよな……201匹目の羊の代わりに柵を飛び越えて行ったのは凛だった。って、違う。今なんて言った?
    「……凛?寝言?」
    思わず聞いた俺に返ってくる言葉はなく、規則正しい寝息。やっぱ寝言か、だけれど普段の凛から聞く類の言葉ではない。少なくとも俺は聞いたことが無かった。しかも、すごく優しい声。隣の俺が嫉妬する程の。
    (何?凛に可愛い&ふわふわって言われる存在って何?!)
    どうしても気になってしまった俺は、羊を数えるのを中断し、この世のあらゆる可愛い&ふわふわについて考え始めた。


    「おはよ、凛」
    「……はよ」

    先に起きていた凛がテレビを眺めていた。丁度、ペット特集。いろんな家庭の犬が入れ替わり立ち代わり画面に現れる。それを横目で見ながら俺は洗面台へと向かう。
    水を流しながらバシャバシャと顔に冷たい水をかければやっと意識が覚醒した。昨日結局どの位で寝つけたんだっけ、そう考えた所でふと思い出し、リビングの凛に向かってひょっこりと顔を出す。
    「……そういえば、凛、昨日寝言言ってたよ」
    「言わねぇよ」
    「いや言ってたんだって。『可愛い』って。あとなんだっけ……『ふわふわ』も言ってた」
    何の事言ってたんだよ?と笑う俺に、怪訝な顔でこちらを見つめていた凛がハッとしたように視線を逸らす。え、今の何。
    「お前の聞き間違いだろ」
    「凛の言葉を俺が聞き間違えると思う?」
    「耳クソ詰まってんじゃねーの」
    「じゃぁ今日凛に耳かきしてもらおーっと」
    ねぇ、どんな夢見てたの?と食い下がる俺に、何故か凛は知らねえよ!と声を荒げる。反抗期か。
    「当ててみるからさ、思い出してよ。俺丁度羊数えてたんだよねー、眠れなくて。なんか可愛い動物の夢見てたんじゃない?わんこ?」
    「……違ぇし」
    「うーん、じゃぁマシュマロとかパンケーキとか?」
    「んなわけねぇだろ」
    「だよね。綿菓子?」
    「食べ物から離れろ」
    「……って事は覚えてるんだな」
    ハメられた、という顔で凛が俺を睨む。あのな凛、何年付き合ってると思ってんだよ。お前の扱いはもうお手の物なんだよ。流石に夢の中の事までは分からないけれど。
    「えーじゃぁ……雪、とか」
    「雪にふわふわしたイメージはねぇ」
    「だよね、凛は特にね……雲?」
    「そうだな、夢の中なら楽しいかもな」
    もう雲で良い、と話を切り上げ、凛はソファーから立ち上がる。テレビはペット特集を終えて天気の話を始めた。俺は凛を追いかけてキッチンへ向かう。
    「コーヒー?」
    「ん」
    「卵あったっけ」
    「丁度2個」
    「じゃぁ目玉焼きだな。任せた」
    凛が無言でフライパンを火にかける。俺は昨日近所のパン屋で買ったふわふわの食パンを取り出した。バターを塗ってトースターに放り込む。
    「食べ物じゃないんだよな~」
    「まだ言ってんのか」
    「だって、気になるじゃん。まさか、誰か人じゃないよね?」
    凛が割った二個目の卵の黄身が崩れて涙目になった。あ、図星。
    「まじか~、浮気かよ……」
    凹んでみせる俺を無視して、片目が涙目の卵2個を焼き始める凛。
    「グダグダ言うな」
    「相手によっては俺嫉妬するんだけど」
    「暇でいいな」
    「り~ん~、そろそろ教えてよ、俺の精神の安定のために!」
    だって、夢の中に出てくる位凛の潜在意識に刷り込まれているなんて。しかも、俺ですら聞いたことがない位にあんなに優しい声色で。凛の扱いに慣れている俺でも、凛の交友関係にふわふわな人がいるなんて思い当たらない。それが一番悔しい。
    頬を膨らませた俺を凛は無言で見つめていた。そしてフライパンに視線を戻す。さっと塩コショウを振り、水を加えて蓋をした。パチパチと水分がフライパンの中で跳ねる。俺はトースト用の皿を用意した。
    「そんなの、一人しかいねぇだろ」
    「何?かわいくてふわふわ?」
    「ついでに面倒くさくて鈍感で、あと面倒」
    「何それ凛の事?」
    「一緒に暮らしていると性格が似てくるって言うよな」
     いや鈍感なのはホラー見た後にすぐ寝られる凛だろ、と返そうとして気づく。いくら鈍感な俺でも、ここまで言われたらやっと分かった。
    「……もしかしてそれって、潔世一って人?」

    ———チン、とトーストが焼きあがった軽い音がした。

    俺の手からトースト用の皿を奪って、全然俺の事分かってねぇな、と凛は笑った。
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