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    umei3588

    @umei3588

    らくがきとSSと、時々小説の創作アイデア元ネタコラム(予定)。
    SSは今後発表していく小説の土台に使うことも多いです。

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    umei3588

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    5月4日の25時台に上げました!!(大馬鹿野郎)
    糖度の高いヴァルエン。冒頭に色々書いてます。
    皆様、よいGWを〜☀️

    Angel Ladderこのままだと未完成だけど、これだけでも読めるとっても短いはずだったのになぜか六千字あるヴァルエンです。(大馬鹿野郎)
    糖度調節をミスっているのでは? と思われそう。楽しいGW期間中なので今はこれで良いんです。わーい。
    つまり、世にも珍しい平和で甘いヴァルエンです(当社比)。
    時間軸的にはハズビン本編より少し前。エンジェルくんのメンタルはグラグラ。ヴァレンティノ氏への感情は⚪︎⚪︎⚪︎(今は秘密)。
    解釈違いの胸焼けを起こしてしまわれる方もいらっしゃるかもしれません。実はこれ、今後出す予定のヴァルエンのちょい見せ的なモノでして。この話だけ読んだ後の読後感と、未来でお出しする作品の中に組み込まれた時の読後感の違いを楽しんでもらえたら嬉しいなぁと思って公開します。
    すみません……こういう遊び心が好きなもんで。お付き合いいただけたら幸いです〜。














    Angel Ladder













     
    「明日のアタシのショーが終わるまで、エンジェルにアザの一つでも付けてみなさい。あんたの腹のスリットをかがり縫いで縫い付けて、二度とチンポがお外に出れないようにしてやるからね、坊や。わかった?」
    「はぁ? なんだよそれ、ダリィな。じゃあ…………噛むのは?」
    「絶対ダメ。口も縫い付けられたいの? 別に毎晩色んなのとヤッてるんだから、今日だって他のと遊びなさいよ」
    「そりゃそうだけどなぁ」
    「そうなら良いでしょ? それに、明日の仕事さえ終わったら返してあげんだから、その後はアザでもタンコブでも歯型でも好きなだけつけな」
     ヴェルヴェットとこんな感じの会話をした気がする。ほんの数時間前の記憶をぼんやりと思い出しながら、ヴァレンティノは新築独特の建材のにおいが強く残る廊下を歩いていた。ここは、ヴェルヴェットがプロヂュースした、オープン前のラブホテルだ。
     そもそもヴァレンティノ達にとって「ラブホテル」という存在自体聞き馴染みがなかった。どうやらアジアのオタクの聖地みたいな国では、ヤリ部屋として借りる安モーテルの装飾やら家具やらに工夫を凝らして付加価値を加え、提供する宿があるらしい。それがラブホテル。
     ヤる為だけの部屋なんてベッドとバスルームさえあれば良いだろうとヴァレンティノは思っていた。しかし、ヴァルヴェットに見せてもらった資料には回転するベッドやら、壁どころか天井まで鏡で囲まれた部屋やら、何故かウォータースライダー付きのプールがある部屋やら、実に馬鹿馬鹿しくて一周回ってもはや愉快に思えてくる内装が山ほど載っていた。
     しみったれた地獄に暮らす悪魔たちは皆娯楽に飢えている。そこにつけ込んで、文字通りハリボテのトンチキな内装の安宿で、ごっこ遊びの延長のようなファックに満足する下級悪魔から金を巻き上げる。実にVEESらしいビジネスモデルだ。やはり、ヴェルヴェットはそこらのビッチとは別格だとヴァレンティノがヴォックスと二人で頷き合ったのは数ヶ月前のことだった。
     Vタワーの外でも中でも、スマホの操作一つでいくらでも取り巻きが集まるヴァレンティノが、わざわざこのオープン前のホテルまで出向いた理由。それはもちろん、彼が作ったスベスベのイケメンこと、エンジェルダストに会う為だった。

     エンジェルは今期、ヴェルヴェットの新作ラインのアンバサダーを頼まれた。明日にはその就任披露を兼ねた重要なファッションショーを控えている。
     そして、なんとしてもショーを無事に成功させたいヴェルヴェットは、ヴァレンティノとの会話の流れでなんとなく先のことが予想できたのか、撮影後のエンジェルの首根っこを引っ掴むと、ヴァレンティノが気付く間もなくこのホテルの一室に匿ってしまった。
     インフルエンサーに相応しい危機察知能力ではあったが、そのスマートな対応が逆にヴァレンティノの癇癪玉に火を付けた。
    「小賢しい真似しやがって! 俺が一日も我慢できねぇって言いたいのか!」
    「実際キレてんだから我慢できてないでしょ! 黙りな坊や!さっさと別のビッチのとこに行くか、ここでプリンスと乳繰り合ってな!」
    「うるせえ! 言われなくてもそのつもりだぜクソビッチ!」
     ヴァレンティノなりの気遣いにより、ヴォックスの私室でヴェルヴェットと散々吠え合った後。宣言通りヴァレンティノはお利口さんにセックスクラブで羽目を外し、放蕩三昧。実に愉快な夜を過ごし、非常に満足して――結局エンジェルに会いたくなった。
     別に毎晩エンジェルのことを恋しがったりするわけではない。だが、今日に限って、どうしてもエンジェルの気分なのだから仕方ない。
     今日はタコスと決めていた腹に、ハンバーガーを何個入れても満たされないのと同じようなものだ。ヴァレンティノはそう思っている。
     
     ヴェルヴェットはもちろんエンジェルの居場所について教えてくれなかったが、聞かずともなんとなく察しはついていた。何より、エンジェル本人に聞けば一発でわかる。
     エンジェルも最初はヴァレンティノからの連絡を無視しろとヴェルヴェットに釘を刺されていたようだった。しかし、百五十回目の着信と二百件のメールというヴァレンティノの(本人曰く)献身的で丁寧な呼びかけと、最後にダメ押しのフリをして送った
    『困らせてごめんよベイビー。せめて、おやすみ前の君の顔が見たいんだ。ベッドに寝転んで、添い寝してるみたいに写真を撮って送ってくれないか』
    というボイスメッセージにまんまと引っかかり、目が痛むほど真っ白なシーツに寝転んだ、困り顔の可愛らしい自撮りを送ってきた。
     ヴァレンティノには、それだけで十分だった。
     このホテルの内装は一部屋ごとに異なっている。つい先日VEES三人で内覧したばかりなので、ヴァレンティノの記憶にもまだ新しい。その中でも、地獄に似つかわしくない眩い白を基調とした部屋はヴァレンティノにとっては異質なものとして印象に残っていた。
     ホテルの最上階、エレベーターから一番遠い奥の部屋。部屋の名前は――。

     ホテルはすでにオープン間近で、インフラも整っているし市営業を兼ねてチラホラと悪魔の出入りがある。ヴァレンティノはホテルに入ったとことから今に至るまで誰も自分を妨害しないことを不審に思った。だが、よく考えれば先ほどまでそれはもう派手に遊んでいたのだ。ヴェルヴェットもヴォックスも、まさかヴァレンティノがこの上エンジェルの下にまでいくとは流石に思いつかなかったのだろう。VEESの三人とも、今はそれぞれのビジネスに大きな転機を迎えているので、互いを信じて背中を預け合うように仕事に打ち込んでいる……といえば聞こえはいいが、要は日頃ほど丁寧にヴァレンティノに構っているだけの余裕が他の二人にないのだ。

     ようやく辿り着いた目当ての部屋の前に立ち、ドアノブに手をかける。ヴァレンティノ予想通り、鍵は開けてあった。素直に開くドアに、ヴァレンティノの口角は三日月よりも深く持ち上がる。
     下手に鍵を掛けていたら、ヴァレンティノなら簡単に蹴破るか、銃で撃って壊す。オープン直前のホテルでそんなことをヴァレンティノにさせようものなら、どんなペナルティが課されるか。エンジェルは経験に学んでいる。だからこそ、来るか来ないかわからないヴァレンティノの為にドアは開けてあるのだ。日頃の教育の賜物だと思うと、ヴァレンティノには非常に好ましく思えた。
     部屋に足を踏み入れる。するとたちまち、暗い廊下を歩いてきた目には、サングラス越しでも刺されるような刺激を感じる真白い空間が広まった。ヴァレンティノは思わず舌打ちする。夜目は悪くないが、もともとそこまで光に強くないヴァレンティノの目には、この部屋の内装は大変不快だった。潔癖さを感じる、影も家具も寝具も汚れを知らないような白で埋められた部屋。
     病人の部屋と罵ってやりたいが、そうもいかないのは、経費削減の為に素材は安っぽいが「それっぽさ」を演出する程度には金をかけている内装のセンスの良さのせいだった。
     天井からいくつも吊るされた白い布は、天井の照明を遮ったり、絞ったりと計算し尽くされた絶妙な配置をされている。部屋全体が明るい中、寝台にだけ、人間だった頃見た覚えのある、雲の狭間から差し込む筋のような特にまばゆい光が差していた。常にどんよりとした空の下で生きる地獄の住人には眩しすぎる場所。確か、この部屋のコンセプトは――「天国」。
     
     生前の罪だかなんだかで地獄に落とされたとて、ヴァレンティノや彼の仲間たちのように、己の力でのしあがって楽しく暮らしている者はいくらでもいる。その一方で、詐欺も盗みも殺しも咎める者がいない地獄で、這い上がることもできず惨めに底辺を這い回る大勢の者たち。そんな輩には現実逃避の手段が必要なのだ。
     それはクスリだったり、こういう、空想の中での天国のような、ハリボテの中で束の間の夢を見たりだとか。本質にこだわることを知らない連中には、こういう「それっぽさ」がちょうどいい。

     とにかく。ヴァレンティノはついに、今宵焦がれていた、底辺を這い回る弱者代表からシンデレラよろしく成り上がったご自慢のスベスベちゃんとご対面した。真っ白な寝台に溶け込むような雪より白い体毛に、愛らしく存在を主張するピンクの模様。入り口に背を向けて寝転んでいるので、後頭部のハートマークがいじらしくヴァレンティノを出迎えてくれている。
    「Buenas noches エンジェル♡ ……おい、俺がきてやったのに寝てんのか?」
     そもそも最後は自撮りを送れと言っただけで今から行くなどとは一言も伝えていないが、そんなことはヴァレンティノの知った話ではない。仕方なく、どんな阿呆面を晒して寝こけてるのか拝んでやってから怒鳴りつけて起こしてやろうと、ヴァレンティノは勿体つけて寝台から距離を取りつつ、ゆっくりと寝台の反対側に回り込んだ。
     寝台に落ちる光の筋が煩わしく、できるだけ下を向いて歩いていたが、ふと顔を上げた時、ヴァレンティノは目の前の光景に固まった。

     ヴァレンティノの目の前には、真っ白なシーツに寝転んで、白い光の筋を浴びて、雪より白い胸を寝息と共に微かに上下させ、安らかな寝顔で眠っているエンジェルがいる。ただそれだけのことなのに、普段感じない胸のざわつきを覚え、ヴァレンティノは顔を顰めた。エンジェルを目の前にする時、度々同じような錯覚が起こる。
     エンジェルは生前も今も薬に溺れ、性にまみれ、積極的に殺戮と暴力の波に飛び込むような悪魔だ。それなのに、時々、今のように周囲を騙す。まるで、自分は地獄(此処)ではない、もっと上の、空より、さらに上の世界の住人であるような雰囲気を醸し出すのだ。本人には一切の自覚なく。

     ヴァレンティノはギリギリ残された理性の片隅で少し悩んだ。こういうエンジェルを目の当たりにした時、ヴァレンティノは、いつもより手酷くエンジェルを抱くのがお決まりになっている。なぜか、そうしなければならないと強く思うから。
     だが、今日はヴェルヴェットからの言いつけがある。そこらのモデルなら替え玉はいくらでも用意できるが、ヴァレンティノが作り上げ、磨き上げたエンジェルダストは唯一無二なのだ。ヴァレンティノの望む通りの抱き方をしてしまえば、明日は確実にショーなんかに出せなくなる。

    「…………ヴァル?」

     珍しく理性と本能を真面目に戦い合わせ、立ち尽くしていたヴァレンティノの触覚が、エンジェルの掠れた呼び声に反応してピクリと動いた。
     エンジェルはほとんど夢の中なのだろう。瞼はピクピクと動いているがほとんど持ち上がらず、寝言と判断がつかないぼやけた甘い声でヴァレンティノのことを呼んだ。まるで睦言でも囁くかのように。
     その姿を見て、ようやくヴァレンティノの中で方針が決まった。
    「俺を呼んだかい? エンジェルケーキ」 
     努めて優しい声を出しながら、戸惑うことなく寝台に乗り上げ、ヴァレンティノはエンジェルに覆い被さった。そのまま首筋に顔を埋め、チュウと音を立てて吸い付くと、寝ぼけていながらもヴェルヴェットの怒りを恐れてか、エンジェルがかすかな抵抗を見せる。
    「んッ、ゔぁる、ダメ……」
    「アザも歯型もタンコブもつけなきゃいいんだろ? 俺を誰だと思ってる? 加減くらいできるぜ、ホラ」
     そう言いながら、ヴァレンティノはエンジェルの手を取り、掌にまた音を立てて吸い付いた。暫くして唇を離すと、口をつけていたあたりのエンジェルのスベスベな体毛を指で掻き分け、地肌を露出させる。そこには、体毛で隠せてしまえるほど慎ましやかな、淡い花弁のような痕が残っている。
    「これならヴェルも文句言わねえだろ。今夜は全身にキスしてやるよ、ベイビー」
    「…………? ぅん……?」
     なんとか瞼をこじ開け、つけられた痕が明日には支障がなさそうだと安心したらしいエンジェルは、ふにゃりとした顔で嬉しそうに微笑んだ。それきり、心地良さそうにヴァレンティノに身を委ね、また安らかな寝息を立て始めてしまった。
     ヴァレンティノはそんなことは気にも留めず、いつになく慎重に、隙もないほど丁寧にエンジェルの身体にキスを落とし、微かに、しかし確実に痕を残していく。
     知らぬ者が見れば慈しみ深い行為だが、その実態はそんな美しいだけの感情からくる行為ではなかった。

     もし、ヴァレンティノの胸のざわつきの通り、何かの間違いによってエンジェルが天国に引っ張り上げられてしまうようなことがあったら。情欲の痕跡をはっきりと見える形で残しておけば、そもそもそんな心配なんてする必要もないだろう。そう思って、手酷く抱いた夜は何度もあった。
     しかし、先ほど天井から注ぐ光に照らされたエンジェルの姿を見た時、より面白い方法を思いついた。 
     首筋から肩にかけて、丹念に跡をつけ、時々エンジェルの体毛を指でなぞって己のつけた痕跡を確かめる。気取った天使どもなんて、見ているようでどうせ地獄のことなど全く見えていない。
     今この瞬間の、今までの愚行の数々の一切を感じさせない清廉な雰囲気だけは纏っているエンジェルダストなら。下っ端くらいは誤魔化して、天国の中にまで潜り込めてしまえるのではないか。とはいえ所詮ハリボテなので、そのうち上位のものに体毛の下に仕込んだ、天国なんてお綺麗な場所にはそぐわない情欲の痕を暴かれるのだろう。そして咎められ、失望され、結局また地獄に落とされる。
     そんなことが起こったら、自分が作り上げ、磨き上げてきたこの美しい悪魔はどんな反応をして、ヴァレンティノを楽しませてくれるのか。
     そう考えると胸に満ちる感情はなんなのか。ヴァレンティノにとってはどうでも良かったが、何知らぬ者から見たその姿は、■■■■■■■■■■■■■■■。

    (終……?)


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