はつゆめ「さくらぎ」
ミッチーが俺を呼んでいる。いつもの煩い声じゃなくて、砂糖菓子のような甘ったるい声で。
「さくらぎ、なぁ、こっち来て」
誘われるままに手を伸ばすのに触れられない。触れたくて仕方がないのに、近づいた分だけ離れて行ってしまう。
「さくらぎ、すきだよ」
目を細めて柔らかく笑うミッチーは今まで見た事もない表情で――
「み、ミッチー!!!!」
もう少しで手が届く。捕まえられる。というところで目が覚めた。天井に向かって伸ばした手は当然空を切っていて何も捕まえられていない。心臓がバクバクと脈打っている。
「どうした〜?花道」
俺の大声で目を覚ましたらしい洋平が欠伸をしながら声をかけてきた。昨夜は俺の家にみんなで集まって年越しをしたんだ。周りを見回せば忠も高宮も大楠もそこら辺に転がっている。
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