成宮智治添い寝CD妄想脚本そっち、狭くないですか?
……もっとくっつけばいい? ふふ、そうですね。さっきまでは、もっとずっとくっついてましたもんね?
あはは、赤くなってる。かわいいなぁ。ふふっ、わかってますよ。今夜はもう、何もしませんから。…今夜は、ね。
はい、どうぞ。ほら、もうすこしお布団ちゃんとかけてください。
俺は大丈夫ですって。どうせはみ出しますから、そのぶん先輩にくっついて暖をとりますから。
…ああ、嬉しいなぁ、先輩と朝まで一緒にいられるなんて。夢みたいですね。朝まで眠りたくないな。寝顔を眺めていてもいいですか?
……え、ちゃんと寝ろ? ふふ、そうですよね。明日デートですもんね。楽しみだな。はい、先輩が行きたがっていたカフェに予約もしましたし、映画のチケットもとってありますよ。
……はは、そうですね。映画の最中に寝ちゃったら、先輩に怒られちゃいますよね。
誕生日にしてくれた約束、叶えてくれてありがとうございます。
……え、なんのことかって? 誕生日の夜、俺の願いごとをひとつ、叶えてくれるって約束してくれたでしょう? じつはあのとき、願っていたんです。朝まで先輩と一緒にいたいって。叶わないのは分かってたんですけど、誕生日が終わるまでの最後の数時間で、夜中に偶然、ラウンジであなたに会えたのが嬉しくて、離れたくなくて…。そんな思い、あの日はさすがに口にできませんでしたけど。
先輩が、『こんな偶然じゃなくて、成宮くんの願いごとは、私がちゃんとひとつ叶えてあげる』って言ってくれて、最初に思いついたのはそれでした。朝まであなたと一緒にいたい。あなたを独り占めしたいって。
もちろん、そんなこと言えるはずもなくて、俺が口にしたのは、差し障りのない願いごとでしたけどね。でも先輩は、それにも全力で応えてくれて。…そんな律儀で優しくて真面目な先輩が、大好きなんです。
あれ? 先輩、もう寝ちゃいました?
……ふふっ、もごもご言ってる。かわいいなぁ、もう言葉になってないですよ?
わっ、叩かないで。はは、すみません、ほっぺ突っついちゃって。ついかわいくて、…今夜が終わるのがもったいなくて…
だって、先輩の部屋で、先輩を抱きしめて、朝まで一緒に離れず側にいられるなんて。俺がどんなに幸福か、きっと先輩にはわからないだろうな。
ねえ、先輩。俺、やっぱりまだ眠れそうにありません。もうすこし、こうして俺の腕の中にいる先輩を眺めていたいんです。
あなたが俺を選んでくれたこと、まだときどき、夢みたいで。こうしていられる時間を噛み締めていたいんです。
だから、気にしないで。先輩はゆっくり眠ってください。ね? 俺に全部、たっぷり見せてください。俺の隣で、安心しきって眠るあなたの姿を。
……えっ、だめですか? 寝かしつける? 先輩が、俺を? ははっ、やだなぁ。そんな子どもじゃないですよ。
……以前『もうすこし子どもだったら眠れないって甘えられるのに』って俺が言ってた?
…まいったな、覚えてたんですか。あの日は、どうしても先輩を引き留めたかったんです。ああいえば、あなたが俺を心配して、そばにいてくれるんじゃないかって。
……え、なにがあったのかって? 『本当に落ち込んでたはず』…?
バレてたんですね、はずかしいな。でも、その話はまた今度にさせてください。いまは先輩との幸せな夜を堪能したいので。ね?
先輩の家は寝かしつけって、どうやってましたか? 俺はあまり、された記憶になくてレパートリーがないんです。赤ん坊のころから、子どもはひとりで寝かせる教育方針の家だったので。
まあ教育方針というか、おもに親とベビーシッターの都合ですけどね。親は忙しくてほとんど家にいませんでしたし、ベビーシッターさんたちも帰宅時間がありますからね。べつに寂しくはなかったですよ、そういうものだと思ってましたから。
…ただ、そうだな。うまく寝つけない夜は、ベッドの中で目が冴えて困ってましたね。眠れないからって電気を点けて、誰かに気づかれたら、シッターさんたちが呼び戻されて残業させることになりますから。することがなくても、布団をかぶってじっと眠ったふりをしていました。
変わったのは、四歳ぐらいになったころかな? 懐中電灯と絵本をベッドに持ち込むことを覚えたんです。それからは、すこし楽だったな。眠れなくても、気を紛らわせる方法があると思えるようになったから。
わ、なんですか。ふふっ、こうやって頭を抱きかかえられると、なんだか本当に子どもになったみたいですね。…あたたかいな。
先輩、やっぱりさっきの、撤回してもいいですか? 今夜は子どものころ、あなたがされた方法で、俺を、寝かしつけてください。そうしたら、今度あなたに眠れない夜が来たら、俺があなたを眠らせてあげられるでしょう?
これから、ずっともっとたくさんの夜を、あなたと過ごしていきたいんです。俺はそのつもりですよ。先輩も同じ気持ちなら、嬉しいな。
……ふふ、よかった。……え、約束の指切り、してくれるんですか?
はは、嬉しいな。……はい、約束ですよ。これからも、俺と一緒にいてくださいね、先輩。