未来の自分の背を押して 「あれっ、成宮出かけるのか?」
「えっ、はい…まあ」
「やっぱり!?なんかいつもよりめかし込んでるな〜って思ったんだ」
そう言って笑う赤羽さんにバレてしまうものなのか…と内心驚いてしまう。
「ってことは誰かと待ち合わせ?」
「はい。そうなんです」
そうしてチラリと腕時計に視線を向けた時だった。
「ごっ、ごめんごめんごめん!成宮くん、ほんっっっと、ごめん!」
ばたばたと慌ただしい様子で現れた待ち人の朝日奈先輩。そんな様子で来てくれただけで嬉しいのにその格好にまた俺は子供みたいに喜んでしまう。
甘めの花柄のワンピース。
丈も膝丈ほどで、その上からGジャンを羽織っている。
朝日奈先輩らしさを醸し出している赤いラインの入ったスニーカー。
髪はいつもと違い編み込みを入れていて、下の位置にツインテールができている。
全体的に甘めな印象のファッションが普段のカジュアルな様子の先輩からかけ離れていて、でも先輩には似合うだろうなとずっと思っていただけに衝撃だった。
「……せんぱい、」
「な、何?成宮くん」
「その…格好、」
「あ、ああ…どう?変じゃない?せっかく成宮くんとのデートなんだからって思って香坂先輩に手伝ってもらったの」
「…俺のため、ですか?」
「?うん」
その言葉にどきりと心臓が跳ねる。
「成宮くんに喜んで欲しかったから、普段は着ない服も着てみたんだけど…似合ってる?」
「…すごく、すごく、似合ってます。先輩」
「本当!?よかったぁ…」
ほっと胸を撫で下ろす先輩だったがその仕草、表情ひとつが俺の心を掻き乱していく。
(香坂先輩チョイスは置いておくとしても可愛すぎる…いやほんと、似合いすぎると言う次元じゃないって言うか先輩に合わない服なんてないと思ってたけどこれは想像以上って言うか…上目遣いも正直やばいっていうか、あぁ…もう…どうしよう、可愛すぎる…)
「成宮くん?」
「はっ、はい!」
「大丈夫?ぼーっとしてたから」
「あはは、すいません。先輩に見惚れてました」
「また調子いいこと言って…」
「本当に見惚れてたんですよ、俺は。」
そう言って出来るだけ嫌がられないようにと優しく先輩の小さな手に俺の手を絡めてみると先輩は驚いたような顔をした後へらりと笑った。
「先輩、デート、いきましょうか」
「うん!」
この手が振り解かれないことに安堵しつつ、俺とのデートを楽しんでくれているとことに喜びを感じつつ俺は先輩の隣を歩いた。
帰る時までにはこの関係が少しでも変えられたらいいのに、と未来の自分にほんの少しだけ期待を乗せながらーー。
-Fin-