Happy Cooking「ちよちゃん…準備はいい?」
「いいよ…!!おねいちゃん…!!」
ピンポーン、とインターホンを押して少し待つと、ドアが開いた。
「はーい」
「「ぼーくーらーがー、きたー!!」」
「わぁ!!…お姉さんとちよちゃん!?それにつなぐくんたちも!?どうしたの?」
「こんにちは」
「突然済まないね」
驚くあいるちゃんの前に、後ろ手に隠していたビニール袋を掲げる。
「あいるちゃん、お誕生日おめでとー!」
「プレゼント、と言っていいのかアレだけど……ケーキ作らない?三人で。前に一緒に料理しようって言ってたし…どうかな?」
「なにそれ楽しそう!!やろうやろう!!」
「あいる、どうした…おや、お客様がこんなに」
「つなぐくん!!あのね、みんながお祝いしに来てくれたの!!」
「こんにちは!」
「こんにちは、あいるちゃんの維さん。…台所とあいるちゃんお借りしても?」
「こんにちは。来てくれてありがとう。どうぞ自由に使ってくれ」
どうぞ上がって、と促され、部屋にお邪魔する。…おお……これが…ジニあいの愛の巣…。なんか……ここで二人がイチャイチャしたりイチャイチャ(意味深)したりしてると思うと……ドキドキするな…。ど、どんなことしてるんだろう…。
「……朧」
「やましいこと考えてないですごめんなさい」
「考えてたんだな。このバカ犬」
「クゥン…」
「…人の家でプレイするのやめてくれるか?」
「プレイ?何のことだ?これがデフォルトだが」
待って待ってあいるちゃんの維さんとちよちゃんの維さん、そんな『うわぁ…マジか…』みたいな目で見ないでください興奮する……じゃなくて、居た堪れない。
「またぷれい?ぷれいってなに?」
「おねいちゃんわんちゃん!お手…しちゃダメなんだった…」
「ああ…二人の純粋な眼差しが煩悩まみれの僕の心に刺さる……。…………いい…!!」
「おい、何とかしろ」
「ちぃの教育に悪いんだが?」
「……朧、それ以外盛ったら君の嫌なヤツするぞ?」
「!?…ご、ごめんなさい……!もう盛りません…!」
…お、怒られた…。いかんいかん…気をつけないと…。
「…手を洗って、始めようか」
「「はーい!」」
「…なぁ、嫌なヤツって…?」
「全装着目隠し放置だな。朧はアレが大嫌いなんだ」
「なぜだ?彼女なら喜びそうな内容だが」
「私を感じない行為は嫌だそうだ。…可愛いだろう?」
「「はいはい」」(呆)
朧「……はい、じゃあ今日はケーキを作ります」
あ・ち「「はーい!」」
朧「今日作るケーキはガトーショコラ。レシピはシェフをしてるあいるちゃんのお兄様とショコラティエをしてるお兄様から提供いただきました。『全員の腕前がどんぐらいかわかんねぇけど、まぁ多分できるんじゃね?』…とのことです。ありがとうございます」
ち「ありがとうございます」
あ「お兄ちゃん…投げやりな…」
維(あ)「あの人たちらしい…」
維(ち)「何かあったら言いなさい。手伝うから」
維(朧)「三人とも、頑張ってな」
朧「維さんたちもありがとうございます。とりあえずソファでゆっくりしてて下さい。…じゃあ、まずは…」
【1、型にクッキングシートを敷く。薄力粉を振るう。バターとチョコを一緒に入れて湯煎にかけて溶かす】
朧「…だって」
あ「型……これかな?」
ち「それだね。じゃああいるちゃん、シート敷いて?僕、湯煎で溶かすから!」
朧「料理関係の時のちよちゃん頼もしいなぁ…。じゃあ僕は粉を振るおう」
ち「おねいちゃんって料理するの?」
朧「するよ?そんなに上手くないけど」
維(朧)「いや、朧は上手いぞ?毎日食べれるのが幸せだ。いつもありがとう」
朧「どういたしまして。僕としては維さんの料理の方が美味しいんですけどねぇ…」
維(朧)「嬉しいことを言ってくれる…。また作るよ」
朧「わーい!ありがとうございます」
維(あ)「人の家でイチャイチャするのやめてくれるか?」
あ「まぁまぁつなぐくん…。お姉さん、次は?」
朧「次はね…」
【2、卵黄と卵白を分ける。卵黄に半分だけ砂糖を入れて白っぽくなるまですり混ぜる。白っぽくなったら牛乳とラムエッセンスを入れて混ぜる】
あ「はーい!」
朧「…ところであいるちゃんもちよちゃんも料理するの?」
ち「するよー!しゃけ大根とか作れる!」
維(ち)「ちぃのご飯は美味しいんだ。…作ってくれてありがとう」
ち「えへへ…」
維(あ)「どいつもこいつも…。私のあいるのご飯も美味しい。作ってくれた時は涙が出そうなくらい嬉しいよ…ありがとうな」
あ「どういたしまして…///」
朧(この空間、尊いわぁ…ジニちよにジニあいに…最高かよ…)
ち「おねいちゃん、溶けたよー」
朧「はいはーい、次はー…」
【3、湯煎しておいたバターとチョコを入れて混ぜる】
ち「あいるちゃん入れるねー!」
あ「はーい!お願いしまーす!」
朧「尊…涙出そう……」
維(あ)「……なぁ、前から思ってたんだが…お前の彼女、情緒大丈夫か?」
維(ち)「済まない、私も思ってた。…安全に見えて時々危険な雰囲気を感じるんだが。主に性的な面で」
維(あ)「…あいるを襲ったら、いくら彼女でもぶっ殺すぞ?」
維(朧)「は?やってみろ。その前に私がお前を殺す」
朧「ちょっと何喧嘩してるんですか。おめでたい日に」
あ「つなぐくんめっ!」
ち「めっ!」
維(ち)「ちぃ可愛い…」(カシャ)
維(朧)「だってコイツが…」
維(あ)「元はお前の彼女がヤバいからだろう?」
朧「僕がヤバい?………あぁ、アッチの意味で?」
維(ち)(自覚あるのか…)
朧「警戒しなくてもいいですよ?『信用を裏切ったら腹切ります』って約束したので。あいるちゃんのお兄様と」
維(あ)「彼らと?……じゃあ、信用してやろう」
ち「なんかこわい話してる…?」
朧「してないよー?さて次…」
【4、卵白を泡立てる。泡だったら残りの砂糖を入れてさらに泡立てる】
朧「これは僕がやるねー」
あ「…あ!思い出した!お姉ちゃん!お兄ちゃんと変な約束したでしょ!!お兄ちゃんが『朧サンが約束破ったら腹切るってwwwヤバくね?ww』って言ってた!!」
朧「お兄様…軽いなぁ…」
ち「やっぱりこわい話してる!」
あ「ダメだよそんな約束しちゃ!!第一お姉ちゃんのつなぐくんが可哀想でしょ!?」
朧「あー………維さーん」
維(朧)「何だ?」
朧「一緒に心中してくれます?」
維(朧)「いいぞ」
四人「「「「軽っ!!」」」」
朧「…この間読んだ小説にこんなセリフありましたねぇ…『我が輩は猫である前に男である。共に死んでくれるか?』」
維(朧)「『猫屋敷心中事件』だな。あの少女は『やです』と言ったが、私はするぞ?死んでも一緒だ、朧」
朧「もー維さんのそういうところ好き。愛してます」
維(朧)「私も愛してるよ」
維(あ)「コイツら…歪んでるな…」
維(ち)「どちらも手遅れだな…」
あ「お、お姉さん…」
ち「ひぇ…」
朧「なーんて仰々しいこと言っちゃいましたけど、あいるちゃんとちよちゃんは大事な大事な初めてのお友達なので、絶対傷つけませんよ。お約束します。…はいメレンゲでーきた」
あ「い、いつの間に…」
朧「鍛えてるからねーこれぐらいは余裕だよ?次は…」
【5、卵黄の入った生地の方にメレンゲを少しずつ入れながら混ぜる。泡を潰さないようにムラがなくなるまで混ぜる】
朧「誰が混ぜる?」
あ「じゃあ私が…」
ち「疲れたら変わるね!」
あ「ありがとうちよちゃん!お姉さんお願いします!」
朧「じゃあ入れるね」
ち「…おねいちゃんってどれくらい鍛えてるの?」
朧「どれくらい…どれくらいだろ……」
維(朧)「この間、ミルコと腕相撲して勝ったろう」
維(ち)「ミルコに勝ったのか!?」
あ「すごい!!ミルコさんに!?」
ち「おねいちゃんすごーい!たくさん鍛えてるんだ!……お腹、触ってみていい?」(ソワソワ)
朧「いいよー好きなだけどうぞ?」
ち「……ふぉぉ…カチカチ…」
あ「お、お姉さん……私も…!」
朧「んふふふwwどうぞどうぞw僕混ぜるからw」
あ「し、失礼します……わぁぁ…すごい…」
朧「wwwww」
維(三人)(((…何だこの光景…)))
ち「すごいねぇ…」
あ「うん…すごい…」
朧「体が資本だからねぇ。ちゃんと鍛えない、とぉっ!?」
ち「……おねいちゃん」
あ「……ここ、くすぐったい?」
朧「…………二人とも、目が怖いよ?ほら生地混ぜないと」
ち「つなぐくん!」
あ「生地混ぜて!!」
維(あ)「わかった」
維(ち)「ちぃ、程々にな」
朧「…つ、維さん……」
維(朧)「朧………お友達と遊んでおいで」
朧「嘘でしょ!?ちょっと待っ、てぇっ!!待って、待って待って待って待って!!!!くすぐったいくすぐったいぃぃぃ!!!!ダメダメ本当にダメ待ってぇぇぇぇぇっ!!!!!!」
維(あ)「二人ともイキイキしてるな」
維(ち)「朧さんの見たことない姿見れて嬉しいんだろう。微笑ましいな」
維(朧)「朧がお友達と遊んで…!」(目が潤む)
維(あ)「子供の成長を喜ぶ親か、お前は」
維(ち)「わかる。わかるぞその気持ち…!!」(頷く)
ち「つなぐくーん…」
維(ち)「ん?どうした、ちぃ」
ち「やりすぎちゃった…」
維(三人)「「「は?」」」
朧「はっ…はぁ………も、もう…無理……」(涙目でやや衣服が乱れている)
あ「あわわわわ…///」
ち「やりすぎて…おねいちゃんがえっちくなっちゃった…」
維(朧)「……朧、大丈夫か?」(抱き上げる)
朧「だ、大丈夫じゃないです……死ぬかと思った…」
あ「お姉さんごめんなさい!!」
ち「ごめんなさい!!」
維(あ)「…私からも、済まなかった」
維(ち)「申し訳ない…」
朧「ぼ、僕…ちょっと休憩させて…」
あ「休んで!!本当にごめん!!」
ち「おねいちゃんごめんね…」
維(朧)「…生地は混ざったな。次は…」
【6、薄力粉を加えてさっくり混ぜる】
維(あ)「…私たちがやろうか」
維(ち)「そうだな。…二人とも動揺し過ぎてひっくり返しそうだし」
維(朧)「……そうだな」
(ソファで横になってる朧)
あ「お姉さん…」
ち「ごめんなさい…」
朧「はは…大丈夫大丈夫……くすぐられるの初めてだったから、びっくりしただけで…」
ち「初めてだったの…!?」
あ「い、意外…!」
朧「初めてだよ?初めてくすぐられたし、初めてお友達の家に行ったし、初めてお友達と料理したし、初めてお友達の誕生日お祝いしたし…今日は初めてのことばっかりだ。……楽しいなぁ」
あ「ほ、ほんと?」
ち「おねいちゃん楽しい?」
朧「楽しいよ。すっごい楽しい。……ふふ、またやろうね?」
あ「うん!」
ち「やろうやろう!!たくさん初めてのことやろう!!」
維(朧)「朧……っよかったなぁ…!」(号泣)
維(ち)「よかったな…!!よかったな、私…!!」(目頭を抑えて頷く)
維(あ)「よかったな…。…本当に、よかった」(ちょっと涙目)
維(朧)「…ありがとう、彼女たちのおかげだ…。彼女たちのおかげで、朧は毎日楽しそうで…!!今日が早く来ないかソワソワしてて…!!」
維(ち)(うんうんと頷く)
維(朧)「三人乗りできるようにバイクのサイドカー買ったり…!!今日何着て行こうかとか悩んでたり…!!……っ仕事と私ひと筋だった彼女が…こんなに…こんなに…!!………っありがとう…朧と出会ってくれて…!…っ本当に、ありがとう…!!」
維(あ)「……ティッシュいるか?」
維(朧)「いる…!!」(涙を拭く)
維(あ)「…あいるも、とても楽しそうに二人の話をしてくれる。本当に二人のことが大好きなんだろう。…ありがとう、あいると友達になってくれて」
維(ち)「こちらこそ、だ。ちぃも楽しそうに絵を描いたりしててな…。『今度みんなでお料理するんだ〜』とワクワクしてて…。ありがとう、ちぃと遊んでくれて」
維(朧)「…っお前ら私の涙腺を崩壊させようとしてるか…!?」
維(あ)「そういう訳ではないが……おい、混ざったぞ?次は?」
維(朧)「(ぐすっ)次は…」
【7、型に流し込んで、180度で25分、160度で10分焼く。焼けたら冷まして、完全に冷めてから型から取り出して完成。お疲れさん】
維(ち)「もうできるのか」
維(あ)「まぁ殆ど彼女たちがやってたからな」
朧「あ、あの…」
維(朧)「朧?」
朧「…ちよちゃんとあいるちゃんが僕の上で寝ちゃったんですけど、どうしたら…」
維(あ)「そのままでちょっと待ってろカメラ取ってくる」
維(ち)「シャッターチャンス…!!」
朧「…揺るがねぇなぁ…維さんって…」
維(朧)「私だからな。……彼女が大好きに決まってるだろ?」
朧「…そうですね…///」
ち「寝ちゃってた…」
あ「ごめんねお姉さん…重かった?」
朧「全然。むしろ軽くて不安になった。ちゃんと食べてる?」
ち「おねいちゃんに言われたくない…」
朧「さ、最近は食べてるもん…!……それより、ケーキ冷めました?」
維(ち)「冷めたよ。食べようか」
維(あ)「切り分けよう」
朧「……あいるちゃんも」
ち「……一緒に切ったら?」
あ「え?なんで?」
ち・朧「「ケーキ入刀」」
ち「ふぁっ!?//////」
朧「んふふww顔真っ赤www」
ち「かわいー!」
あ「も、もー!!///」
維(三人)(((尊い…!!)))
朧「コホン。……では改めて、」
「「「「「あいる(ちゃん)(さん)誕生日おめでとう!!」」」」」
あ「みんなありがとう!!」