お兄ちゃんごめんなさい。忍者「……」
鬼「……朧サン、もういっぺん言うてくれる?」
忍者の兄様と鬼の兄様にお願いがあって、あいるちゃん経由で連絡を取った。で、さっきお願いを言ったんだけど…僕…変なこと言ったかな……?
「え、えっと……お二人に芸者になるための指南を受けたいのですが…」
もう一度言うと、二人は大きなため息をついた。なぜ…?
忍者「…一応聞くが、なぜだ?」
「え、いや、仕事で…」
鬼「はぁ……」
ま、またため息を…。
鬼「……兄弟、」
忍者「ああ。……朧サン、その仕事は俺がする」
「で、でも、僕の仕事…」
忍者「俺がする。その方が早い」
鬼「そうそう。朧サンがそんなんせんでええって」
「し、仕事…」
鬼・忍者「「ええから(いいから)」」
「……はい」
こ、怖い…お二人が怖い…。僕何か失礼なことしてしまったのかな…。うぅ…泣きそう…。
「お姉さんいらっしゃ…お、お姉さん?どうしたの?」
「あいるちゃん…僕………お兄様方を怒らせちゃったかもしれない……」
「えっえっ?何があったの?お兄ちゃん何したの?」
忍者「い、いや、何も…」
鬼「あー…朧サン?僕ら別に怒ってるわけちゃうで?……あ、いや、怒ってる、かも?」
忍者「………朧サンがあまりにも自分を大切にしないので、つい」
「……えっ?」
鬼「朧サン、自己犠牲がすぎるんや。あいるの大事なお友達やし、僕らも朧サン気に入ってるさかい、もっと自分を大切にして欲しいんよ」
忍者「というか芸者に扮するということはハニトラだよな?そんな仕事して…朧サンの維くんの気持ちを考えたことあるか?」
「えっ…えっ…?」
「……ごめんお姉さん、私もそう思う…」
「えぇ……?」
唯一の味方と思っていたあいるちゃんもお兄様方に賛同していた。……維さんの気持ち、か…。考えてたつもりなんだけど、僕、知らない間に傷つけてたのかな…。
警「お、朧サン来てた、の、か…。……何だこの葬式みたいな空気は」
忍者「いいところに来たな兄弟。実は…」
警「…ほぉ?公安は彼氏のいるお嬢さんにそんな仕事をさせるのか。……指導が必要だな?」
「ち、ちが…!」
忍者「ぜひそうしてくれ。後は朧サンに無理な仕事を振ってないかも調べて欲しい」
鬼「無理な労働させてへんかも調査せな。…朧サンの自己犠牲の原因かも知れへんしな」
「ま、まって…!」
「お姉さん大丈夫だよ!お兄ちゃんたちに任せて!」
「違うばい!!!!今回ん仕事も僕が自分からやるって言うたんばい!!!!上は関係なかとです!!!!やけん指導はしぇんでよか!!!!むしろ止めてくれん!!!!!!」
ぜー、ぜー、と肩で息をする僕を四人はぽかーんと見つめている。
警「……と、いうことは」
忍者「……朧サンの自己犠牲の強さは朧サンが原因、と…」
鬼「…そやなぁ、ほな………朧サンの指導が必要やなぁ…」
「………………………はい?」
僕の、指導…?…………何だろう。すごく嫌な予感がする…。…これは逃げるが勝ちなのでは?
「……あの僕今日はこれで失礼しま 警「あいる、朧サンの膝の上乗れ」
「う、うん!お姉さんごめんね!」
あいるちゃんは僕の膝の上に座った。み、身動き取れるけど…逃げれない…!というか逃げたくない…!せっかくあいるちゃんが膝の上に乗ってるのに…!!
警「さて…指導だな、朧サン」
忍者「大丈夫だ。痛いことはしない」
鬼「そうそう。ちょい……説教するだけや」
「………ひぇ、」
(…お姉さんの維くんに、連絡しておこうかな…)
「…お邪魔します。あいるさんに言われて朧を迎えに来たのだが…」
「お姉さん、維くん来たよ?…まだ涙出る?タオルいる?」
「朧…!?何があった?」
「…つ、つな……つなぐさ、ご、ごめんなさいぃ…」
「………本当に、何があったんだ?」
警「…悪い、朧サンの維くん…」
忍者「その……朧サンの自己犠牲が過ぎるので我々で説教をしたら…」
鬼「…朧サン泣き出してもうて…」
「なぜ泣く…」
「つ、つなぐ、さんが、僕のこと、愛してくれてる、のに、僕………僕、維さんが、悲しむような、こと、たくさん、して………っごめんなさいぃ…」
うぇぇぇん、と泣き喚く朧を抱きしめて、背中をトントン叩く。……うん、よくわからないな。
「……朧が反省してるなら、それで…」
忍者「……ハニトラの仕事しようとしても許すのか?」
「ハニトラ…それは、許せないな」
「うわぁぁぁぁぁんごめんなさいぃぃぃぃ…!!」
子供のように泣きじゃくる朧を抱っこして、顔を見合わせる。彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。…こんな顔の朧も可愛いなぁ…。
「朧…家でじっっっくり聞かせてもらおうか?」
「うっ…ひっく……ひっく…」
「…返事は?」
「………ひっく………ぁい…」
「よろしい。……朧がご迷惑をおかけしました」
鬼「いやいやこちらこそ。彼女はんを泣かしてもうて申し訳あらへんなぁ…」
警「怖がらせて悪かったな、朧サン」
朧は私の肩に顔を埋めて、ふるふると横に振った。……多分、
「怖がってはないと思います。……恐らく、たくさん心配されて嬉しいのが半分、本気で反省しているのが半面だと思います」
忍者「…泣いている訳は?」
「…心配かけてしまった自分が情けなくて泣いているのかと。……朧はあいるさんや皆さんと遊んだことをとても楽しそうに話してくれます。初めての友達が余程嬉しいのでしょう。………これからも、彼女をよろしくお願いします」
「こちらこそ!よろしくお願いします!!」
頭を下げると、あいるさんも同じように頭を下げた。…この子、本当にいい子だな。
「…では、これで失礼します」
警「…嬉しい半分、反省半分、だってよ」
忍者「反省はわかるが、嬉しいというのがよくわからんな」
鬼「そやねぇ…」
「………お姉さんが『お姉ちゃん』だから、とか?」
警「ん?どういうことだ?」
「『お姉ちゃんだからしっかりしないと』って思ってたんじゃないかなぁ…?それでお兄ちゃんたちに心配されて嬉しい、とか?」
忍者「……『妹』扱いされて嬉しい、ということか?」
鬼「何やそれ。可愛らしなぁ…」