アダルシの話「やあそこの君、ちょっといいかな?」
いつものように、適当な男へと声を掛ける。
ふらりと立ち寄った盛り場で、半ば自暴自棄なこの行為は 週に一度ほどの頻度で既にお決まりのルーティーンと化していた。
自分が密かに心に熱を燻ぶらせている相手とまた仕様もない理由で口喧嘩となり、
これ以上話が拗れる前にと外へと飛び出す。それもまた毎度の事だった。
素直に自分の気持ちを伝えられたなら、どんなに楽だったことか。
それを拒んでいるのは今までの複雑に拗れ切った蟠りの所為で、
最早腐れ縁とも呼べないほどの幾千年もの冷え切った関係性の所為でもあった。
その上 自分を傲慢の王へと成り上げたプライドが、
憎まれ口と罵倒ばかりを吐き出した挙句、毎度毎度アダムへの好意を口から出す前に喉を塞ぎ閊えるように蓋をしてしまうのだ。
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