カメラ付きメガネで潜入!
「1個ずつしかないんだから 壊すなよ!」
エコノモスがハーコートに渡して、アデバヨとクリスと経由してやっと俺の手元に届いたそれはメガネだった。
黒縁で頑丈そうな奴。俺はもう、自分専用の、17の時から使ってるのを持ってるから不思議だった。
「このメガネはカメラがついてる 警察のボディカムより高画質だ 」
たしかに、目を凝らしてよく見ると縁にレンズがついてる。
「音も入るのか?」
「音は入らないしいらないでしょ、無線で会話できる。」
「じゃゴミだな セックスの時使えると思ったのに」
「黙って持っておいて。会場内に入ったらつけて、」
今回の任務は、なんかかなり「俺たちじゃなくてもいい」みたいで、Pと一緒にジェームズボンドごっこができるから有頂天になってる俺以外、みんな面倒くさそうだった。 みんなが話してる時、来週エコノモスと二人でファーゴ見る予定が楽しみでなんも聞いてなかったから、なんでみんなこんな気落ちしてんのかよくわかんない、マフィアをやるらしい。俺は悪いやつならなんでもいいんだけど。
「俺もうメガネかけてるからつけらんないよ ハーコートが付けたら?」
「あんたがそのメガネ取ればいいだけでしょ てか取って。」
「二重につければいいじゃん、」
にやっとしてクリスが言う
そっか!さすが!
「いやダメだろ!何考えてんだ!
ほらもうだから言っただろ?いくら人手不足でもこいつを潜入に連れてっちゃダメだって!」 目を見開いたエコノモスが、俺以外のみんなに向かって言う。
「じゃああんたがスナイパーやる?
敵に近づいて5秒で銃にサイレンサー付けられる能力があるならビジランテと代わって。」珍しくアデバヨが擁護してくれた。疲れてて早く話を終わらせたいって感じの擁護でも、俺は嬉しい!
「そうだよ!俺スナイパーなんだから。」
手をピストルの形にして、ピュウ、とエコノモスの腕を撃つと、珍しくアデバヨも真似して反対側の腕をつついた。クリスは俺たちを見てにやにやした後、我慢できずにガガガガ!とか言いながらライフルでエコノモスを蜂の巣にするジェスチャーをしていて、あまりにも面白くて膝を叩いて笑った。
「俺にそんな事…ああもういい わかったって、お前らホントウザいな!いつも俺ばっか!」
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「ピースメイカー、みえてるからな。ビジランテもよく聞け クリスが標的の顔を割るまで潜伏してろ。目立つな。それっぽい相手に近づいても俺かクリスがいいって言うまで撃つなよ 」
「わかった」
結局俺はいつものメガネで、クリスがメガネ(初めて見た!)をかけることになった。
「クリス顔を掻くな、レンズが塞がる」
「えっ今見えてんの?これすごいな!全部録画されてるのか?!おいビジランテ、ジョンに挨拶しろ!」
嬉しそうなPの顔に乗ったメガネに、めいっぱい顔を近づける
「アハハ!エコノモス俺の顔見えるー?」
「見えてるよ集中しろ!」
「あとお前気をつけろよ、俺に言うことは全部ジョンにも筒抜けになるんだから」 クリスが俺に言う
潜伏して、指示を待って、集中して、目立たないで、気をつける? どれかひとつは守らないとな、、、なるべく頑張るよ!とクリス越しにエコノモスに伝えると クリスがうるさそうに顔を顰めた。
俺らはしばらくパーティ会場の人気の少ないバルコニーで、人が集まるのを待っていた。マフィアは遅れて来るのが定番らしい。初めて聞いた。
なんか思ったよりも人が来ない。風はちょっと冷たいし、これこのまま誰も来なかったら殺しはお預け?やだなあ この後みんなでお泊まり会とかしないと割に合わない。明日バイト休みだし。クリスの方に目をやると いつもなら横から見える鋭い目が メガネの太い縁で隠れていた、パーティに馴染む為に綺麗なスーツを着ていて、英国紳士か秘書みたいだった。それもめっちゃ強いやつ。、ヘルメットもスーツも着てないPが正当な理由で人殺してんのが見れるなんてラッキー!
「何見てる」
縁で隠れてて俺の視線は視界にないはずなのに、クリスはなんでもお見通しだ。かっこいい!
「メガネかけたお前かっこいい!」
そうか?
俺のメガネの反射越しに自分の顔をチェックするクリスにぎょっとした 不意打ちだ。
「お前の仲間みたい 」
クリスがいたずらに、俺をバカにするみたいに笑った くすぐったくなる
「? お前は俺の仲間だろ?」
「そうだけど、お前と集まってカードゲームしてそうな仲間。ダサいヤツら。居ただろ」
俺と向かい合ってるクリスが、そう言った。
「覚えてんの!?!?」
「なにが?」
「おお俺がカードゲームとかしてた時のこと」
「覚えてるけど、?」
「言っとくけどあのとき俺22だったんだぞ 覚えてるに決まってるだろ 、来たぞ。」
静かにターゲットの男の方に向かうクリスは、メガネで全部録画する為にこっちを見ることもせず 手で静かに向こうに行くようにジェスチャーして来た。
クリスのメガネ越しに自分を確認し損ねた俺は手探りで髪を整えた。
クリスは何でも覚えててすごいな
俺もあいつの事は何でも覚えてるから当然なのかな?だとしたら照れくさいな。
言われたとおりに 会場に着くとなるべく人の群れに紛れるよう、周りの人の歩き方を真似したりして、ウロウロした。右前方にいる男の手が、歩くのと同じように左右に揺れるのを見る あーあいつマフィアの指輪してる。 あいつかな。殺そうかな 間違いでもバレなきゃ怒られないよね、
「ビジランテ、標的の顔がわかった 今クリスから送られた写真を共有する ここに映ってる3人だ。わかったか?、」
俺の良くない想像をぶった斬るみたいにエコノモスの早口が俺の耳の中で鳴った。こいつじゃなかったみたい。
了解、スマホを出してエコノモスから転送された画像を確認すると、VIPルームか何かで男が3人、ソファに腰かけていた。俺は1人ずつ見ていった。
奥の男は葉巻を切っていて、横顔だけど髭が印象的だったから、すぐ見つけられそうだ。殺す?任せてよ。
真ん中の男も、歯の数が足りないティモシーシャラメみたいな顔してる こいつも殺すのね、了解!
問題は1番手前の男だった。俺にとってすごく個人的な問題だけど。
「ジョン、こいつクリスに色目使ってない?」
「ん?、あぁ、そうも見える」
こいつクリスの太腿に手を置いてる。
しかもめっちゃニヤついた顔で。
ありえない。何? ファーストコンタクトで俺に殺す理由を2つ以上与えるなんてすごいよ、俺って今サイレンサーと銃のほかに、接近戦で使える武器を7個持ってるんだ、わかる?