出られない部屋の清光視点 どうして、よりによってなんでこんなことに。
目が覚めたら床も壁も何もかも真っ白な部屋にいた。家具の類は皆無。窓はおろか扉さえも見当たらず、生気というものをまるで感じない。それでいて照明がなくても昼間のように明るいという、何とも清廉で不気味な部屋である。
そんな殺風景な空間にただ一通だけ落ちていた手紙に書かれていたのは、目を疑いたくなるような文章だった。
『キスをしないと出られない部屋です。四十分以内に実行してください』
「驚きだぜ……」
俺の隣で手紙を覗き込む鶴丸さんが呆れたように呟いた。
「うそでしょ……この手のやつって本当に存在するんだ……」
政府から課せられる任務で、いきなり謎の空間に閉じ込められて無理難題を押し付けてくるタイプのものがあるという噂は聞いていた。それを達成したら報酬がたんまり貰えるとも。ただ、それが我が身に降りかかることになろうとは予想だにせず。
2705