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    105@海自艦擬人化

    @sanpomichi105

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    105@海自艦擬人化

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    117+109。中秋の名月(遅刻)

    #擬人化
    Humanization
    ##本編

    つきあかり まだまだ暑い内、とはいえ日中であっても日差しは和らいで来ていて秋らしくなっている。日没後の甲板にひとり佇むなか、肌を撫でていく風は涼しくて心地がいい。ぼんやりできるのもしばらくお預けかと思えば、早々に艦内へ戻るのも名残惜しく夜空に浮かぶ満月をしばらく眺めることにした。ふと、さわさわとした風の音に乗って自分の名を呼ぶ声が聞こえることに気付く。
    「なにやってるんですか」
     声のする岸壁の側へ、視線を向けるとありあけがちょいちょいと手招きをしている。外出帰りなのかやけに荷物が多い。
    「あー。つき見、ってとこか? 覗いてたら顔が見えたからさ、時間あるならこっち来いよ」
     団子もあるぞーと提げた袋のひとつをごそごそと探りパッケージを掲げてくる。苦笑ひとつを返事代わりに舷門へ足を向けた。
     
     降りると早々に、〝我らがつきへのお供え〟と称して両腕いっぱいの菓子を渡されることになるとは思わなかったが。荷物に入らなかったら置いてっていいからなと付け加えられた言葉に本来の目的を知る。長い付き合いなだけあって好みはしっかりと把握されているしそれに、幸いまだ買い出し前だった。
    「ありがとうございます。……いってきます」
     ん、気を付けてなと柔らかな笑みとともにぽんぽんと背を叩かれる。立ちっぱなしもなんだしちょっと場所変えるか、と呟き据え付けられたベンチへ向かう背を追う。歩きながらまだ少し早い見送りに少しだけ寂しさが滲む。そんな感傷を知ってか知らずか、腰掛けるなりベリベリと団子のパッケージを開けその内の一本を自分で咥え、残りを差し出している。隣に腰掛けいただきますと受け取れば満足そうに頷く。
    「買いすぎたから遠慮なく食え。まだ若いんだからいけるだろ」
     夕飯後の胃にはいささか多い量をふたりで平らげ揃って引き上げるまで、月明かりが見守るようにそっと照らし続けていた。
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    105@海自艦擬人化

    DOODLEかもめ(新幹線)とやはぎ(艦)。セルフクロスオーバーみたいなものです。
    新米の冒険 駅から続く電車通りから外れて海沿いの遊歩道を軽く駆け抜け、公園の端まで来るとそこから人々が憩う様子をふわふわと潮風を浴びながら眺める。この景色は元々は海から見る予定であったけれども、あいにく天候の折り合いが悪くて叶わなかった。それ自体はいまも残念に思っているものの、こうして別の機会にでも自ら赴けるあたり、人の身に意識を宿したことのありがたさを感じる。まだ慣れていないのもあってしばしばバランスを崩してしまうけれど。本体の性質のせいかこの身体でも走るのは好きだ。でもたまにはゆっくり歩くのも良いな、と遊ぶ幼い子供の笑い声や木々のざわめきを耳にしつつ元来た道を戻るべく振り返る。
    「こんにちは!」
     いつからいたのか、視界の手を伸ばせば触れられる距離に子供が立っていて、思わずびくっと身体が跳ねた。やや緊張した面持ちで声を掛けてきた子供は背格好からしてまだ小児料金が適用される年頃に見える。驚いて真っ白になった頭でもそれだけは真っ先に過ってちょっと可笑しくなった。落ち着いて思考を巡らせる。確か出掛ける前に先輩からは「人からは見えないのだから、もし迷ったら呼びなさいね」と言って携帯を持たせてくれたのだけれど。中には見える人もいる、ということなのでしょうか。こんなことなら対策を聞いておくんだったと内心はあたふたとしながら何を言うべきかを考える。
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    105@海自艦擬人化

    DONE祝・118進水日!10周年おめでとう~!
    雨上がりの記憶 不意に目を覚ます。直前まで夢でもみていたのか一瞬、ここはどこだっけと頭をよぎった。薄暗い中で視線を巡らせて、艦の馴染んだベッドであることを確認する。枕元に置いているデジタルの腕時計を手探りで掴み、顔の前でかざすと時刻は〇五二九を示していた。付近のベッドではまだぐっすりと眠っている者が大半のらしく、機械の作動音が低く響いているのを除けばしんと静まっている。
     もう一〇年前、か。
     寝起きの少しぼんやりした頭で今日だなぁと思い出す。時刻と並んで表示されていた日付は八月二二日。かつて海へと滑り降りた日だ。当日朝は普段と違う様子に緊張していたのか、単に暑くて寝苦しかったか、もしくは夢見でも悪かったのか。起きてしばらくの間ぐずぐずと泣いて、立ち会いのしらゆきさんを困らせたような記憶が朧気に残っている。ただ、さすがのベテランと言うべきか、彼の気性ゆえか、あれこれと世話を焼かれている内にすっかり機嫌が治っていだから不思議なものだ。僕では同じように出来ないだろうと思う。艤装中に〝ふゆづき〟の舞鶴配備を知ってからは生まれ故郷とのことでしばらくご無沙汰だけど、と注を入れながらも馴染みの店をいくつか教えてくれたりもした。就役後に訪れると既に閉めているところも多くあったけれど、続いているところの中には自分も気に入って、通っているところもある。出港中ですぐには叶わないけれど帰ったら久しぶりに買いに行くのを楽しみにしていようと思う。
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