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    105@海自艦擬人化

    @sanpomichi105

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    105@海自艦擬人化

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    かもめ(新幹線)とやはぎ(艦)。セルフクロスオーバーみたいなものです。

    #擬人化
    Humanization
    #お遊び
    amusement

    新米の冒険 駅から続く電車通りから外れて海沿いの遊歩道を軽く駆け抜け、公園の端まで来るとそこから人々が憩う様子をふわふわと潮風を浴びながら眺める。この景色は元々は海から見る予定であったけれども、あいにく天候の折り合いが悪くて叶わなかった。それ自体はいまも残念に思っているものの、こうして別の機会にでも自ら赴けるあたり、人の身に意識を宿したことのありがたさを感じる。まだ慣れていないのもあってしばしばバランスを崩してしまうけれど。本体の性質のせいかこの身体でも走るのは好きだ。でもたまにはゆっくり歩くのも良いな、と遊ぶ幼い子供の笑い声や木々のざわめきを耳にしつつ元来た道を戻るべく振り返る。
    「こんにちは!」
     いつからいたのか、視界の手を伸ばせば触れられる距離に子供が立っていて、思わずびくっと身体が跳ねた。やや緊張した面持ちで声を掛けてきた子供は背格好からしてまだ小児料金が適用される年頃に見える。驚いて真っ白になった頭でもそれだけは真っ先に過ってちょっと可笑しくなった。落ち着いて思考を巡らせる。確か出掛ける前に先輩からは「人からは見えないのだから、もし迷ったら呼びなさいね」と言って携帯を持たせてくれたのだけれど。中には見える人もいる、ということなのでしょうか。こんなことなら対策を聞いておくんだったと内心はあたふたとしながら何を言うべきかを考える。
    「あ。えっと、はろー?」
     こちらが逡巡している間に日本語が通じていないと判断したのか、覚えたての様なたどたどしい英語を口にしつつ不安そうな表情を覗かせる。
    「ごめんなさい。ちょっとびっくりしてしまって。あなたはお一人?」
    「……うん! 今日はみんないそがしいからひとりで来ててね、お姉ちゃんがすっごくはやく走っていくのが見えたからお話したくて」
     にこにこと笑う顔に頭を抱えそうになる。ごめんなさい先輩。早々に人間の振りを失敗したみたいです。もうすぐ開業なのに半人前の後輩を叱ってください……。落ち込む内心を知らないままの子供は嬉しそうに言葉を続けている。
    「お姉ちゃんのおうちはどこにあるの? あとね、お名前聞いてもいい? そうだ、さきにじぶんのなまえ言わなきゃ。わたしはね、やはぎ! おうちはそこ」
     質問と自己紹介を聞き流しそうになって、ん? と引っ掛かりを覚える。そこ、と言って指差したのは対岸の住宅地……ではなく造船所の方だ。
    「もう一度、お名前聞いてもいい?」
    「やはぎ。わたしは5ばん。お姉ちゃんもおふねさん?」
     そういうことか、とほっと息を吐く。見た目どおりの人の子であれば危うく妙な噂が立つところだった。気持ちを切り替え、猛特訓で鍛えられた笑みを添えて名乗る。
    「違うの。私はJR九州の新幹線、N700S。もうすぐ受け継ぐかもめの名前なら聞いたことがあるかな。お家は大村にあります。私自身は駅にいることもあるから、もしまた見掛けたらよろしくね」
     どうやら想定外の存在だったようで、ろくまるさんという誰かの名前? らしきものや感嘆の声を漏らしながら目をぱちくりとさせて驚いている。思いがけず異文化交流をすることになった。戻ったら報告することが山盛りになりそうで、先輩がどんな顔で聞くか想像するとなんだか楽しい。
     
     似たような存在といっても再び姿を見ることが叶うとは限らない。一期一会を大切に。
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    105@海自艦擬人化

    DOODLEかもめ(新幹線)とやはぎ(艦)。セルフクロスオーバーみたいなものです。
    新米の冒険 駅から続く電車通りから外れて海沿いの遊歩道を軽く駆け抜け、公園の端まで来るとそこから人々が憩う様子をふわふわと潮風を浴びながら眺める。この景色は元々は海から見る予定であったけれども、あいにく天候の折り合いが悪くて叶わなかった。それ自体はいまも残念に思っているものの、こうして別の機会にでも自ら赴けるあたり、人の身に意識を宿したことのありがたさを感じる。まだ慣れていないのもあってしばしばバランスを崩してしまうけれど。本体の性質のせいかこの身体でも走るのは好きだ。でもたまにはゆっくり歩くのも良いな、と遊ぶ幼い子供の笑い声や木々のざわめきを耳にしつつ元来た道を戻るべく振り返る。
    「こんにちは!」
     いつからいたのか、視界の手を伸ばせば触れられる距離に子供が立っていて、思わずびくっと身体が跳ねた。やや緊張した面持ちで声を掛けてきた子供は背格好からしてまだ小児料金が適用される年頃に見える。驚いて真っ白になった頭でもそれだけは真っ先に過ってちょっと可笑しくなった。落ち着いて思考を巡らせる。確か出掛ける前に先輩からは「人からは見えないのだから、もし迷ったら呼びなさいね」と言って携帯を持たせてくれたのだけれど。中には見える人もいる、ということなのでしょうか。こんなことなら対策を聞いておくんだったと内心はあたふたとしながら何を言うべきかを考える。
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    105@海自艦擬人化

    DONE祝・118進水日!10周年おめでとう~!
    雨上がりの記憶 不意に目を覚ます。直前まで夢でもみていたのか一瞬、ここはどこだっけと頭をよぎった。薄暗い中で視線を巡らせて、艦の馴染んだベッドであることを確認する。枕元に置いているデジタルの腕時計を手探りで掴み、顔の前でかざすと時刻は〇五二九を示していた。付近のベッドではまだぐっすりと眠っている者が大半のらしく、機械の作動音が低く響いているのを除けばしんと静まっている。
     もう一〇年前、か。
     寝起きの少しぼんやりした頭で今日だなぁと思い出す。時刻と並んで表示されていた日付は八月二二日。かつて海へと滑り降りた日だ。当日朝は普段と違う様子に緊張していたのか、単に暑くて寝苦しかったか、もしくは夢見でも悪かったのか。起きてしばらくの間ぐずぐずと泣いて、立ち会いのしらゆきさんを困らせたような記憶が朧気に残っている。ただ、さすがのベテランと言うべきか、彼の気性ゆえか、あれこれと世話を焼かれている内にすっかり機嫌が治っていだから不思議なものだ。僕では同じように出来ないだろうと思う。艤装中に〝ふゆづき〟の舞鶴配備を知ってからは生まれ故郷とのことでしばらくご無沙汰だけど、と注を入れながらも馴染みの店をいくつか教えてくれたりもした。就役後に訪れると既に閉めているところも多くあったけれど、続いているところの中には自分も気に入って、通っているところもある。出港中ですぐには叶わないけれど帰ったら久しぶりに買いに行くのを楽しみにしていようと思う。
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