そらのいろ「むらさきもお化粧したいの?」
側に来て身支度を整える様子をじっと見つめていた妹になんとなく問いかけてみるとこくん、と頷きがひとつ返ってきた。けれども自分でするにもまだ不慣れで、力加減がうまく調整できていない。それなら、と少しだけ悩んでデスクの引き出しから小さな包みを取り出した。
「じゃあこれ。進水のお祝いにあげるつもりだったんだけど、ちょっと前倒しね」
そう言いながらひとまわり小さい妹の手に乗せ、包みを止めてあるリボンを引いて現れるのはコロンとしたネイルのボトル。青みがかった紫、夜明けの空の色だ。どう? 塗ってみる? 軽く不安をにじませて聞くと力強くこくこく、と返ってきてほっと胸を撫で下ろした。
淡く彩られた爪を見ては嬉しそうに笑う妹を先に送り出し、手早く残りの身支度を終えて追いかける。朝焼けの色を伴って。