つきあかり まだまだ暑い内、とはいえ日中であっても日差しは和らいで来ていて秋らしくなっている。日没後の甲板にひとり佇むなか、肌を撫でていく風は涼しくて心地がいい。ぼんやりできるのもしばらくお預けかと思えば、早々に艦内へ戻るのも名残惜しく夜空に浮かぶ満月をしばらく眺めることにした。ふと、さわさわとした風の音に乗って自分の名を呼ぶ声が聞こえることに気付く。
「なにやってるんですか」
声のする岸壁の側へ、視線を向けるとありあけがちょいちょいと手招きをしている。外出帰りなのかやけに荷物が多い。
「あー。つき見、ってとこか? 覗いてたら顔が見えたからさ、時間あるならこっち来いよ」
団子もあるぞーと提げた袋のひとつをごそごそと探りパッケージを掲げてくる。苦笑ひとつを返事代わりに舷門へ足を向けた。
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