「主、あーるじー!」
「うわぁっ!?」
とたとた、と廊下を駆ける軽い足音に、やって来たのが短刀だと思ったのがいけなかった。なんなら俺に追いついて止まり、落ち着いて話をしてくれるものだと思っていたのもいけない。振り向く間もなく飛びつかれ、なんとか転ばずに受け止めた辺りで──俺はようやく、声の主の正体を悟った。
「なんだ、大慶かあ……びっくりしたなあ。それでどうしたの、遊んでほしいとか?」
「むぎゅー! ちがーう!」
「違うの? なに、俺と話したかった?」
「せいかーい! とゆーわけでー、主の部屋まで連れてってー!」
うーん、声が大きい。廊下で話すのは周りの邪魔になるとか、そういう意図があって言っているのだろうが……時と場合によってはあらぬ誤解を招きそうだ。
1919