宿屋『こもれび』の雑な会話【意外と、顔が好き?】
(イーハイ(リーダー)×ルッツ(参謀))
「イーハイって、意外と私の顔が好きだったりします?」
「………え? はい?」
就寝前の眠そうなぼんやりとした顔でそんなことを聞いてきた己の妻──妻と言っても、同性婚をしたので形式上のものではあるが──ルッツの言葉にイーハイは苦笑いで面食らった。
「突然どうしたんだよ、そんなこと聞いて」
「いえ、なんとなく」
「えぇ……」
なんと答えていいかわからず、イーハイは曖昧に笑うしかなかった。
そんなイーハイを見ながら、ルッツは小首を傾げる。
「だって、貴方は元々女性の方に興味があったのではないですか?」
「……えーと、うん、まあ、そう……かな?」
「何故曖昧なのです?」
「………えーーと………」
考えたことないなぁ、なんて呟きながらイーハイは己の頭を掻いた。
「………そりゃあ、俺は風俗に通ってたときは女の子にしか相手してもらってないけど……うーん」
「………けど?」
「…………いや、うん、女の子……というより、相手に興味とかあったのかなぁ、って思ってさ」
「まぁ、風俗の女性は特定の興味を持ってほしいと思ってはいないでしょうね。お客として、なら別でしょうが」
「それもあるし……。……そう思うと、俺って特段周りの子にどうこう思うことはなかったかなって。まぁ、可愛い子だなー、とか……綺麗な子だなー、くらいは思うかもしれないけど」
「罪作りですね」
「なんでさ。俺、『向こう(元の世界)』じゃ全然モテなかったんだぞ?」
「どうでしょう? イーハイがそう思っていただけでは?」
「………えぇ?」
「なんというか、貴方がどちらかといえば無関心なのは分かりました」
「それは、………そうかも」
「………それで、私は?」
「えっ?」
「私に興味はあるんですか? イーハイ」
「………………………」
イーハイは答える代わりに、態度で示すのだった。
【悪魔は基本、暇である。】
(イーハイ(リーダー)+おーなー(悪魔))
「あー、暇だなぁー。めっちゃ暇ー。」
コロコロと己の小さな体をテーブルに転がしながら、おーなーがそれほど感情の籠もっていない声で何かを言っていた。
明らかにそれを見つつ放置していたイーハイに聞こえるように言ったその声に、そのイーハイは仕方なく応えることにした。
「暇なら、自分で依頼でも受けたらどうだ?」
「地下水路のドブさらいを手伝ってくれるって言うなら受けるよ」
「やだよ。君は殆ど戦力にならないだろ」
「そう。つまり、どうやってもワイは暇になるってこと。ドブ水塗れのイーハイ見るのも面白いけどねー」
「俺は想像したくないな」
「現実になるだけなんだけどね」
「なお悪いだろ」
「えー」
「えー、じゃない」
「じゃあ、なんか暇つぶし考えてよー」
「君なぁ、そういうのは自分で考えろよ」
「やだよー。悪魔ってのは面白いことはその場でやり尽くしたい奴が多いの。ワイもその例に漏れないのー。」
「………で? その君の面白いことってのはどういうことが該当するんだ?」
「えー? なんかこう、ドミノ式にいろんな人間が小さな不幸に見舞われて、こう……疑心暗鬼渦巻く何かになるみたいな」
「悪魔みたいなこと言うなよ」
「悪魔ですぅー。悪魔そのものですー。」
「じゃあ祓うか」
「ぷー!!」
「冗談だよ」
「だよね」
「自信満々に言うな。」
「ぷー。」
(気が向いたら増やす。)