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    棺(ひつぎ)

    @__qpidus

    原作者及び公式関係者、様々な媒体での自作を宣伝の為の書き込みやURLを貼り付ける行為は行っておりません。要件はコンタクトが取れる媒体でお願い致します。

    ラファラファ/ラファアル/アルラファ/フラシュミ/アンノヴァ/シモヨレ/フベラファ/Aラファ

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    棺(ひつぎ)

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    原作者及び公式関係者、様々な媒体での自作を宣伝の為の書き込みやURLを貼り付ける行為は行っておりません。

    新年二発目
    禁断のアンノヴァが続いてしまいました
    「蕾」の続編ではありませんので単体で読めます
    ノヴァクさんが身体を貫かれる行為はありませんが、雰囲気的にセンシティブなので、一応R-18にしております

    アントニさんが酷い男です

    BGM
    Castrato

    #アンノヴァ

    アンノヴァ/CastratoCastrato
    さぁ
    最後の警告だ
    私の声を聞け
    二度も言わぬ
    選択肢は肯定
    ただそれだけ

    「一体、貴方はC教をどこまで穢すおつもりで?」
    「な、何の事でしょうか…?」
    シモンとレフはアントニに指示された通りにヨレンタを拷問室から出して牢獄室へと移動させた。愛する愛娘をアントニの手にかかる前に安全な場所へ避難させようとした矢先に都合よくシモン達を引き連れての登場とはよく出来た展開だとノヴァクは思った。
    「とぼけても無駄ですよ?異端者二人と行動を共にしていたという事実は否定出来ない真実だ。現に六日前も食事をしていたというではないか。しかも…」
    アントニはノヴァクの耳元で「とても親しげに」と囁かれて背筋が凍った。愛娘が天文に興味を示した事は幼少の頃から知っていた。敢えてそれを遠ざけずに支えながら、分からない程度で遠ざける様に助言をしていたつもりだ。ある場所で働きたいという申し出にも否定しなかった。妻が死んだ後の身内は俺だけだからだ。俺の全ての言動を信じなくても良い、最低限の女性としても振る舞いを守ってくれれば。勤勉なのは妻とそっくりだから、冷たい手を僅かでも温かくなるように手袋を買ってやった。子どもの成長は著しく早い。洋服と同じで手袋もすぐに新しいものに変えなくてはならなくなって、大きくなるのが嬉しくて堪らなかった。このまま安全な場所で仕事をこなして、いつか結婚するのだろう、子どもを産んで夫となる人物と恙無(つつがな)く暮らしてほしい。それだけが愛娘に対する希望。なのに、どうした?これは。
    「ヨ、ヨレンタが異、端…?」
    「そうだ」
    「はっ、まさか…冗談でしょう?私の娘に限って。そもそも男二人の異端は既に処刑された。あの子には用はないはず」
    はぁ、と溜息を漏らすアントニにノヴァクは嫌な予感がした。やばい。機嫌を損ねたかも、と。想定通りに眉間に皺を寄せたアントニは耳元から離れずに続ける。
    「魔女」
    「っ」
    「そう」
    この呪われた単語はおぞましい効果がある。愛しの家族が異端として扱わるなど。
    何と恐ろしい事か。
    「そんな…訳、ないでしょう」
    「いいや、確かに魔女だ」
    何を根拠に?と問うと過去に裁いてきた女性の何人かが勉学に勤しんでいるのだと。確信的な証拠がある訳でもなく、可能性という段階で裁くのがアントニの手段。規定に沿う事が全て正しいとは限らない。特に女性の場合は厄介で男を惑わす。そうして本当の罪から逃れた挙句に惑わした男を殺すのだ。我がC教から魔女を逃した者を出す訳にはいかない。だから可能性の芽は摘まなければならない。花が開く前に。少女が女性となる前に。
    「心から愛している娘が魔女なのは、さぞかし混乱しているだろう?だが悪魔に見初められてしまったら最後。神から救いの手を差し伸べる事はないのだ」
    ノヴァクは身体の力が抜けたのか床に尻もちをつく形で足から崩れてゆく。右手はアントニの左肩から腕、指先へと下がる。触れた手が離れる瞬間に掴まれて、ふと見上げた。天井の円を描く様に並べられた蝋燭の光に反射して眼前の男の顔がよく見えない。冷や汗で滲む掌が吸い込まれるかの様に離れないでいる。視線は重なっているのだろうか?それすらも分からない。
    「おいおい、大丈夫か?審問官が、たかが身内の罪に落胆しないで頂きたい。貴方は家族のいる者にも拷問を行っている身でしょう?」
    嫌な所をつつき、妻と子どもを持っている者が聖職者など認めないアントニ。父親である司教も同じく、公に公表していないだけで妻と子どもをこさえているからノヴァクを毛嫌いしている。司教のお気に入りという点も気に食わない。だからノヴァクの威厳を潰したい。優れた自身よりも他人である彼を贔屓にして許せない。
    「 」
    「え?」
    アントニは何かをノヴァクに伝える。掴まれていた手を引かれて、そのまま壁に押し付けられた。力の抜けた身体は簡単に促されてしまう。
    「可哀想に」
    大切な人を奪われるなんて。きっと彼は己の死が迫っていても娘を第一に考えるだろう。ヘラヘラとしているが、父親としての役割はこんなにもしっかりとしている。誰かとは大違いだ。私が生まれたのも父親が規定を守らずに母となる女性を孕ませたから。聖職者として穢れている。きっと悪魔が母を唆して父を手にいれたのだ。でなければ、私の存在価値は失われる。両親のどちらからも愛されずに育てられ、言われるがままに聖職者とされ。ならば、この状況を己に有利となるように働かせれば良い。出自すら差し出して周囲の協力を得る。何かを成す為には協力者が重要。だから父親の様になるまいと必死に足掻く。私は妻を持たない。子どももこさえない。ただ純粋にノヴァクの様な者は我が教会に必要無いと感じる。悪意なき信仰は、悪意という獣を放し飼いにしてしまう。信仰とは個人個人にとって受け取り方が様々な事は知っているが理解不要。納得さえも許さない。教えは絶対なのだ。規律を歪めてはならない。
    「失意の目をしても無駄だ。私は君に魅入られてしまったのだから」
    今、何と言った?魅入られた?誰が?誰に?
    「え、は?」
    「男が男を惑わす悪魔もいるのだな。流石、魔女の父親といったところか」
    神の流血が滴る。天井の蝋燭揺らめく空間が一気に冷え込んだ気がした。神は天国に導いてくれる。温かい存在なのに、穢れを受けてしまったの様に薄暗い室内が何かに濡れてゆく。
    「ならば祓わねば。裁かねばならぬ」
    「………」
    言葉を失うノヴァクに対して流暢な口ぶりなアントニは掴んだ手を唇に寄せた。
    「一つ問う。ノヴァク審問官は悪魔の使者ですか?」
    「……いいえ」
    「一つ問う。ノヴァク審問官の愛娘は魔女ですか?」
    「……いいえ」
    「一つ問う。己はこの場を脱出する事が可能だと?」
    「……はい」
    五指を一本ずつ舐められながら尋問という名の拷問だ。痛みを伴わないが精神的に追い詰められる手法。決定権を質問者に委ね、肯定と否定で答える。その中に事実、真実は意味を成さない。必要なのはノヴァクの心がアントニへと向かう事。ただそれだけ。何を信仰していようが関係ない。C教の脅威とならなければ。いや、脅威と呼ばれる前に娘同様に摘んでしまおう。だから私は悪魔と契約した。罪の一つとされる男色を求めて。毛嫌いしている彼の落胆した顔が見たい。遭遇すると一瞬、目を背けられる態度を直させたい。職務怠慢と見える姿勢を矯正したい。
    「最後の問いには「はい」なのか。どの様にして脱出しようと?」
    「私に浮上した罪は全てシロだ。ヨレンタも、あの異端二人とは無関係」
    「それはどうかな?理由もなく、身分の異なる男二人がノヴァク審問官の娘に近付くと思いますか?思わないでしょう。きっと理由がある。知られては困る真実が」
    「事実だの真実だの、アントニ副助祭様は勤勉でいらっしゃる」
    「そうやって逃げようとしているな」
    手を振り切り距離を取ったが、出口はアントニの背後にある。
    「さて、どの様な罰を与えましょうか?」
    本気の目をしていると感じ、全身から冷や汗が脱がれてくる感覚に陥る。室内を見渡すと拷問器具は先程、シモンとレフが持ち去っており何も残されていない。あるとすれば、天井の蝋燭くらいだ。しかし、それを取るには至難。拷問器具の一つとしての可能性は消えた。
    「同業者を拷問だなんて、教会の教えに背くのでは?」
    「心配ありません。私と君が黙認すれば、今から行われる拷問は誰にも知られる事はない」
    解放されたら誰かに密告される可能性もある。しかし、肉体的精神的に陵辱してしまえば第三者に詳細を伝える事を躊躇うだろう。男が男に犯されました、などと世間が知れば大問題だ。アントニはノヴァクが失脚する事を望んでいる。顔を近付けて唇を重ねる。乾燥した唇がいじらしい。
    「私の警告は聞こえていますか?二度は言いません」
    「……はぁ。確かにヨレンタは天文学に興味を示してピャスト伯邸の敷地内の図書館で働いています。しかし、教会が認めた範囲内での学びですよ」
    諦めた口調でた答えるが、指を舐める舌は止まらない。まだ、まだ吐く事があると言わんばかりに。
    「で?それを聞いて納得するとでも?」
    そんな事は上辺だけの言い訳に過ぎない。ノヴァクは確かに愛娘とオクジー、バデー二と共に酒屋で楽しそうにしていたのを目撃している。確認がてら酒を酌み交わして確信を得た。だから隠す必要がある。誰にも知られてはならない秘密だ。
    「いやぁ、納得して頂かないと困ります…無実を事実に変えられては」
    「神の判断が間違っているとでも?」
    そこで神を用いるか。どこかで軽んじている本人が言うとわざとらしく聞こえる。神と言う単語を引用すれば吐くと思っている所が鼻につく。私も尋問する時に同じく引用するが、あれとこれでは訳が違う。これは私の力を削ぐ為の策略だ。ヨレンタを人質に取れば簡単に負けると。
    「いいえ、これは神のご判断ではなくアントニ副助祭様個人のご判断では?ヨレンタを疑い、罰を与えれば天文学を学ぶ事や、この先の人生に支障が出る。加えて私の地位も落ちて一石二鳥。そう言った方が正しいかと思われますが…」
    「ふ、そうですね。素直に申せばこんな事をしなくて済んだ。悪いのは君だ」
    突然、視界が周り天井を見上げていた。背中に走る痛み。足を弾かれてバランスを崩したのかと理解した時には呼吸を遮られていた。
    「ん、」
    遮った相手は、さぞ喜ばしいだろう。私を組み敷けているのだから。これから何が起こるのか、何が始まるのか。
    「愛娘を守る為に私に従うか、君の保身の為に愛娘を私の命を私に委ねるか。人間は一つしか選択出来ない。さぁ、お選び下さい。ノヴァク審問官様」
    わざとノヴァクに様と付けてくる所が白々しい。この行為にヨレンタが天秤に掛けられていては、答えは前者以外にない。もしも、後者を選んだのなら薄情な父親だと罵るだろう。己の命が惜しいのだと思われても仕方がない。私は異端者達が命を賭してまで証明せんとした地動説とやらが気になる。しかし、前者でもヨレンタは無事(軽い尋問で済む、処刑無し)、私の身体が汚されるだけならば簡単な選択だ。数秒考えた後に答えを出した。
    「アントニ副助祭様に従います。どうか、娘ヨレンタをお救い下さい」
    「賢明な判断だ。これで神も君をお見捨てにはならないだでしょう。案ずる事はありません。愛娘の安否は保証されましたから。本題は貴方がどこまで私に従えるか」
    その言葉を軽率に受け取ってはならない。ヨレンタの安全が保証された今、私の身体と心は眼前の悪魔に捧げられてしまったのだ。苦痛の拷問か快楽の拷問か。先程の態度からすると快楽の方が正しいかもしれない。現に、この拷問室には痛めつける為の器具が見当たらない。衣服に隠されていなければの話だが。
    「少し…身体を解しましょうか。そうすれば、自ずと心も開かれる。さぁ」

    さぁ
    最後の警告だ
    私の声を聞け
    二度も言わぬ
    選択肢は肯定
    ただそれだけ

    2024/01/01

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    禁断のアンノヴァが続いてしまいました
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    ノヴァクさんが身体を貫かれる行為はありませんが、雰囲気的にセンシティブなので、一応R-18にしております

    アントニさんが酷い男です

    BGM
    Castrato
    アンノヴァ/CastratoCastrato
    さぁ
    最後の警告だ
    私の声を聞け
    二度も言わぬ
    選択肢は肯定
    ただそれだけ

    「一体、貴方はC教をどこまで穢すおつもりで?」
    「な、何の事でしょうか…?」
    シモンとレフはアントニに指示された通りにヨレンタを拷問室から出して牢獄室へと移動させた。愛する愛娘をアントニの手にかかる前に安全な場所へ避難させようとした矢先に都合よくシモン達を引き連れての登場とはよく出来た展開だとノヴァクは思った。
    「とぼけても無駄ですよ?異端者二人と行動を共にしていたという事実は否定出来ない真実だ。現に六日前も食事をしていたというではないか。しかも…」
    アントニはノヴァクの耳元で「とても親しげに」と囁かれて背筋が凍った。愛娘が天文に興味を示した事は幼少の頃から知っていた。敢えてそれを遠ざけずに支えながら、分からない程度で遠ざける様に助言をしていたつもりだ。ある場所で働きたいという申し出にも否定しなかった。妻が死んだ後の身内は俺だけだからだ。俺の全ての言動を信じなくても良い、最低限の女性としても振る舞いを守ってくれれば。勤勉なのは妻とそっくりだから、冷たい手を僅かでも温かくなるように手袋を買ってやった。子どもの成長は著しく早い。洋服と同じで手袋もすぐに新しいものに変えなくてはならなくなって、大きくなるのが嬉しくて堪らなかった。このまま安全な場所で仕事をこなして、いつか結婚するのだろう、子どもを産んで夫となる人物と恙無(つつがな)く暮らしてほしい。それだけが愛娘に対する希望。なのに、どうした?これは。
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