なぜこんな時期にと続かなかったのは、横から一べつが飛んだからだろう。しばらく休暇を取る。伝えた途端に深くなった、ガープの眉間のシワは、事前にアスモデウスに任せていた。
魔皇軍は今、侵攻の真っ只中にある。大将の不在によって、ようやく点いた火が弱まるという、彼の懸念はもっともだ。
「そのための貴様たちではないか」
こうして言外に賞賛を滲ませれば、合いの手と共にシワは消える。自負しているからこそ、追及が無いことも分かっていた。
「それで……どちらまで?」
「こもるだけだ。少々考えたいことがあってな」
――独りで征くのかどうか。
土産でも欲しかったか。冗談とともに笑いながら、まだ形にならないままの言葉は呑み込んだ。
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